第6回「女性の男性らしさ」「男性の女性らしさ」に惹かれる

投稿日: 2014年10月28日 00:00 JST

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どうも日本の政界というのは、たとえれば“出航を控えた船の中で生じている船員同士のごちゃごちゃしたくすぶりに収拾がつかず、いつまでたっても本来の目的である大洋への航海に踏み切れていない”という印象を、海外から傍観している私のような人間には思えてしまうところがあります。

 

とりあえず、船の中がせめて人様から見える範囲だけでもきれいさっぱり整備されていなけりゃ、出航は叶わない、というのは、何事においても不透明感を嫌う日本人の国民性が反映されているからなのかもしれません。

 

私が暮らしているイタリアだと、昨今では天下のベルルスコーニ爺のやらかしてきた、性的スキャンダルや汚職疑惑など数々の意表を突かれる展開などもありましたが“政界っていうのは内部が惨憺たる問題で飽和しているものであり、もともと混沌としていて当たり前”という見解が、イタリア国民の意識に浸透しているんですね。

 

それはイタリアだけでなく、政治というものに清らかな透明感なんて存在しない、そんなものとは無縁の世界、という認識が化石のように定着化している国々は決して少なくありません。

 

さかのぼれば古代の時代から地中海世界では一国をまとめていくのに、いかに上手く機能させようかとあれやこれや試行錯誤を繰り返してきました。それでもすっきりした統治なんてのはほぼ何処でも実現できていないわけですから、古代ローマ時代にはカエサルが『クレメンティア』(寛容)という言葉を硬貨に彫りつけて、人々にその精神の必然性を唱えた意味も深く理解できるというものです。

 

今では既に懐かしい、安倍改造内閣での女性閣僚選出時の報道もやたらと「今回初めて5名の女性閣僚が」という台詞を、日本に滞在していた私は耳にタコができるくらい聞きまくりましたが、もうその時点でカエサル式「クレメンティア」を発動させる必然性に迫られました。

 

もし、本当に男女のあり方に隔たりのなさを提唱したいのであれば「女性が」、「女性の」、「女性は」などと繰り返すこと自体ナンセンスではないかとも思ったのです(欧米では多分そんな報道の仕方をしたら、それが逆に問題視される可能性もありますから)。慣れないことのやり始めなのだから……と大らかに受け止めておくだけにとどめて、いちいち敏感に反応することでもなかったのかもしれませんけどね。

 

ジェンダーの解釈による軋轢は、日本に限らずいまだ世界のありとあらゆる場所にがっちりと、さまざまな形態で蔓延していることですから、今すぐに均一な平等が叶うことだとは思っていません。地球上の生物で、ここまで男女の差異をぎゃあぎゃあ言っているのはなんせ人間だけですから、将来への予測も容易ではないのです。猿も猫も犬も鳥も、性別とそれによる生理的機能の違いは当然のものと認識していながら、別段それに対して平等性を訴えたりしているわけでもなく、飄々と本能に対して従順に日々を生きていますからね。それを踏まえると人間の生きる厄介さっていうのは感慨深いものがあります。

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ヤマザキマリ

1967年東京都出身。1984年からフィレンツェに11年間在住、油彩、美術史等を学ぶ。1997年に漫画家としてデビュー。2010年『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。シリア、アメリカ、ポルトガルを経て現在はイタリア・パドヴァ市在住。最新作は『スティーブ・ジョブズ』『プリニウス』等。平成27年度文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。

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