第38回 「女性は男性が思っているほど、男性のことは眼中にない」

投稿日: 2015年07月07日 00:00 JST

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7月某日 北イタリア・パドヴァ

イタリアのわが家には週に2回、お掃除のために女性がやってきます。彼女はウクライナ出身のエレナという、推定年齢20代半ばのうら若き乙女ですが、ここのところ日中の気温が30度以上という状態が続いたせいか、彼女の服装の露出がどんどんきわどいものになりつつあります。

エレナはお尻の形がとても美しいので、冬でも比較的そのラインを強調したスリムフィットのパンツ姿で現れるのですが、真夏日が続くこのごろは、ほぼ毎回生尻がこぼれ落ちそうなジーンズ切りっぱなしの短パンに、溢れんばかりの胸を窮屈に詰め込んだピタピタのタンクトップ姿。長い金髪を後ろに束ねて、肌には汗の玉を浮かせながら懸命にモップがけをしています。

その姿をうっとりと見つめているだけで、私は一向にはかどらない仕事でささくれ立った気持ちから解放できますが、反対に旦那は落ち着きを失い始めます。

「あれが掃除しにくる服装なのか!? あんな恰好で人前でかがまれたり、さまよわれたら気が気じゃなくなって、仕事ができない!」と。

「でも、それはあくまでエレナの半ケツにあなたの男性的本能が勝手に揺さぶられているだけであって、エレナのせいではないと思う」と告げると返ってくるのは「世の中は狂っている!」と苦悩に満ちた反応。でも実際にエレナにはラブラブの彼氏もいるし、掃除に来ているときは一切おしゃべりもせず、黙々と真面目に仕事をこなすだけなのです。

服装はセクシーであっても、掃除のついでに異性も挑発! なんて思惑など、その表情や態度からも私には微塵も感じられません。要は勝手に旦那が『挑発されている』と悶絶しているだけです。それなのに「もうそんな恰好してこないでくれ」なんてことを口にすれば、エレナに対して〝旦那をたぶらかすふしだらな女〟だと言うようなもの。彼女は傷ついてしまい、もうお掃除に来てくれなくなるかもしれません。

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自分もかつてイタリアで留学生だったころ、真夏の暑い最中、普段よりも肌の露出度の高い服をアカデミアに着ていっただけで、助平爺さん教師から「おお、今日はセクシーじゃないか」とニヤリされて、それはそれは嫌な気持ちになったことがありました。イタリアに限らず、この世の男性は、南国の裸族や腰ミノで暮らしている種族以外、女性が露出度の高い服装を着ることを異性に向けた性的な〝アプローチ〟〝挑発〟と受け止めてしまう傾向があるわけです。

確かに、私のように単に暑いからという投げやりな理由で肌を露出するのではなく、男性のそういった反応を期待している女性たちも少なくはありません。

日本人でありながら顔立ちがクラウディア・カルディナーレとモニカ・ベルッチを足して2で割ったような私のお友達は、スタイルも峰不二子ばりの抜群さで、日本はおろか海外に行ってもその悩殺オーラで、ありとあらゆる殿方を振り向かせるパワーを持っていましたが、彼女は男性の視線を釘付けさせることに確かに至福感を得ていつつも、そんなことよりも彼女が強く意識しているのは、実は女性の視線のほうでした。

つまり彼女にとっては男性から「素敵ですね」と言われるよりも、男性の視線を余すことなく釘付けにしてしまう、そんな自分が女性から「かっこいい!」と憧れの対象となることが、何にも勝る満足感だったのです。そしてそれは、多くの女性に共通した心理なのかもしれません。

かつてアメリカに居た頃、大学の先生をしているロシア人の学者の友人が、世界のどんな国よりもハラスメント行為に敏感なこの国で、世界のどんな国よりもセクシーな服装とオーラを放ちまくる女子学生たちをどうにかしてほしい、と漏らしつつも、ある結論に達していました。

「美しさやセクシーさはつまり女性たちの武器なんだと思う。男は自分たちの意識を惹き付けるために女性はあんな服装をしていると思い込んでいる。でも実はあれは女性が同性に対して持っている対抗心や競争心のあらわれであって、決して男性に向けられたものではない。女性は男性が思っているほど、男性のことは眼中にない」と。

にもかかわらず、それに気づかない男たちは、まんまとセクシー女性が張り巡らせた蜘蛛の巣(つまり彼の言わんとしている武器)にひっかかり、セクハラだ、何だとその餌食になったりしていくのだと。独身男性である彼の、大学における苦悶に満ちた心情がストレートに伝わってくる解釈ですが、あながち的外れとは言い切れない、説得力を秘めた言葉だったように思います。

うちにお掃除に来ているエレナも、確かにその仕事内容や暑さを考慮した上で止むなくセクシーになっているという見方もできますが、屈んだときに臀部に覗くレースのTバックや、ばっちり施されたお化粧などから、露出の多さは暑さばかりを考慮したものではないようにも思えます。

私の憶測ですが、彼女はウクライナからの移民ですから、異国の地であるイタリアで暮らしていくのは容易ではありません。きっと心が折れそうになる事も幾度がある筈です。そんな彼女が際立ったセクシーさを強調するのは男性を誘惑するためではなく、男性からも女性からも興味を引きつける強さがあることを、自分自身が確認して自信につなげるためなのかもしれません。まんまと私も、週2回、エレナが来るのを楽しみにしてしまっているわけですから。

「女性は男性が思うほど、男性のことなど眼中にはない」

友人ロシア人学者が苦し気に吐露した言葉が、エレナのお尻を見る度に脳裡に蘇ってきます。

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ヤマザキマリ(漫画家・随筆家)

1967年東京都出身。17歳で絵画の勉強のためイタリアに渡り、国立フィレンツェ・アカデミア美術学院で、油絵と美術史を専攻。‘97年漫画家デビュー。『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。著書に『国境のない生き方』(小学館)、『男性論』(文春新書)『スティーブ・ジョブズ』(講談社)『プリニウス』(とり・みきと共作 新潮社)など多数。シリア、ポルトガル、米国を経て現在はイタリア在住。平成27年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。平成29年イタリア共和国星勲章「コメンダトーレ」綬章。
 
公式サイト
https://www.thermariromari.com/

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