第117回 「私の多忙時健康法」

投稿日: 2017年03月21日 17:00 JST

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3月某日 北イタリア・パドヴァ

最近、対談やインタビューの折に返答に窮するのが「お忙しいヤマザキさんは、健康のために毎日どんな気を配っていますか?」という質問です。私も間もなく生まれて半世紀、イタリアと日本を頻繁に往復している時はとくに、10年前に比べて確実に自分の体力が落ちてきているのを感じさせられます。10年前といえば漫画の仕事がメインになり、家で座って作業ばかりするようになった頃。以来、自分の体力衰退は顕著に進み、30歳までは2.0だった視力も今では0.3、マッサージや鍼に行けば必ず「うわー、なんじゃこりゃあ」と声を漏らされる程身体はガチガチに固まり、ちょっとでも無理のある仕事の仕方をすればたちまち某かの病気になってしまう、もう明らかに健康的とは言い難いのが今の私の身体の現状と言えるでしょう。

 

『テルマエ・ロマエ』がヒットをした直後、仕事の量が膨大に増える中、当時ポルトガルに暮らしていた私と子供は夫の仕事先であるシカゴに引っ越しました。大好きだったポルトガルを離れたことや、仕事量増大によるストレスに加えて、高層ビル暮らし、寒い気候が身体に合わなかった事も重なり、それだけが原因ではないのでしょうけども知らない間にやっかいな病気になってしまったことが判った時には、さすがの私も自分の健康管理をそれ以上蔑ろにはできないという自覚を持ちました。

 

旦那がマンションのゴミ捨て場で見つけてきた自転車型の健康器具を毎日必死で漕いだり、家の近所のミシガン湖の歩道をジョギングする人たちに混じって何キロもウォーキングをしたりもしました。しかし、毎日同じルーティーンで同じ運動をするというのは私の飽き易い性格には合わず、結局気がつけば自転車健康器具は再びゴミ置き場に、そして50階にあった部屋の窓から凍てつくシカゴの街を見下ろすばかりの暮らしに戻ってしまっていたのです。

 

子供の頃はそれでも私は自他ともに認める運動神経抜群な少女でした。外で虫を追いかけたり、木登りをしたり、自転車で20キロ往復したり、川で泳いでばかりいたからなのでしょうけれど、小学校時代はリレー競技ではつねにアンカーでしたし、短距離と走り幅跳びが得意だったので地域の選手権みたいなものに出された事もあります。高学年になると身長がぐっと伸びた事もあり(今現在の身長はあの時から変わらない)、バスケットボールの選手に選ばれました。ご近所の人々にとってもヤマザキマリちゃんといえば「ああ、あの色黒でいつも短パン姿の」という印象を持たれていたくらい、私は体育会系だったと言えるでしょう。

 

それなのに、中学生になって文科系関心事の比重率がぐっと高くなり、時間さえあれば部屋で音楽を聴いたり本を読んでばかりいるようになってしまい、体育を面白いと思えなくなったこともあって、成績もたちまち下がってしまいました。

 

数年後に留学を始めたサッカー王国のイタリアでも自分が出会うのは「運動なんてくだらん!」と思うような偏った考え方の超文化人ばかり。11年一緒に暮らした詩人でさえも「いい歳をした男どもが何人も必死になってタマを追いかけるサッカーなんて、つくづくアホみたいだと俺は思う」みたいな思想を持っている人であり、私の運動に対するシンパシーは心身ともに萎えていってしまったのでした。イタリアに暮らしイタリアの家族に囲まれて暮らす今現在も、私の周りにはサッカー好きなイタリア人は、実はひとりも居ません。イタリアだけではなく、欧州における、このような文化系と運動系の差異はかなり決定的なものと言えるでしょう。

 

とはいえ、私は決して彼らのように運動を卑下していたわけでもありません。むしろ古代ギリシャやローマの人々が提唱していたように、人間の精神性の健康を保つには適度の運動が必要である、という意識も持っていました。ただ、意識的に運動をするのが嫌いというだけで、何かに夢中になっている間に必然的に体力を使えるのであれば、それが自分的には理想のかたちだったのです。

 

例えば学生時代に暮らしていたフィレンツェの部屋は階段しかないアパートの6階だったので、ミネラルウォーターなどの大きな買い物を持って部屋までの階段を登るのは相当の運動量でしたし、ボランティアで訪れていたキューバでは昼間のサトウキビ刈り、そして夜のホームステイ先における踊りのレッスンで相当身体を鍛えられました。ブラジルを最初に訪れた時も、この土地での楽しい事は長距離をおしゃべりしながら歩いたり、カーニバルで踊ったり、大体全て身体を動かす事ばかりだったので、ここでも無意識のうちに体力作りができていたと言えるでしょう。

 

それが、そういう国々に旅行をするゆとりも無くなってしまった昨今では、飛行機の機内販売で、装着するだけで自然に筋肉が鍛えられるという電化製品を調達しつつも、ほとんど使っていないような始末。情けないものです。

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医師からお墨付きの風呂の入り方

それでも、辛うじて自分の健康に気を配っている事があるとすれば、それは“入浴”かもしれません。少なくとも1日に2回、多い時なら4、5回も私はお風呂に入ることがありますが、これはこれでそれなりの健康効果をもたらすようなのです。

 

お風呂の漫画も描いているし、かつては地方テレビ局の温泉リポーターをやっていたこともあり、1日に何度もお風呂に入りますというと皆さんは「やっぱり」というリアクションをされますが、実は回数こそ多いけれどお湯に浸かっている時間が極めて短いのが私の入浴の特徴といえるかもしれません。毎度43度の熱めのお湯に長くても10分。それ以上は入りません。わっと入ってわっと出る。就寝前だけ身体の火照りを考慮してぬるめのお湯に少し長めに浸かる。先日対談でお会いした某病院の院長先生からは「それはとてもいいお風呂の入り方ですね」とお墨付きを頂きました。

 

入浴には(1)温熱作用(2)静水作用(3)浮力作用 というものがあるらしく、温熱作用は老廃物や疲労物質の排除、静水作用は心臓や肺の動きの活発化と血液やリンパ液の流れを促し、浮力作用は筋肉や関節を休ませる効果があるのだそうで、何もせずにお湯に浸かっているだけなのにそれなりの健康は促進されているらしいのです。

 

気分も爽快になれて、しかもそんな健康にありがたい効果も伴っているなんて、素晴らしいではありませんか。

 

ただ風呂に頻繁に入る習慣を持たないイタリア人家族から言わせてみれば「またマリが邪道なことを言っている」となるわけですが(例えばうちの旦那はガチンコ文科系ですが、毎朝自分の部屋で人知れず腹筋背筋運動を40分もしている)、確かにお風呂に依存してばかりもいられません。あと1カ月で50歳にもなるし、良い節目として、ここらでまたどこか楽しい事をしながら自然に体力を消耗するような土地に旅に出てみようかな、と呟くと「君は数年前にチベットの拉薩(ラサ)まで行って、到着するなりぶっ倒れて入院したことを忘れたのかい!?」と非難されてしまいました。

 

確かに楽しくてエキサイティングな旅をするにも、それに必要な体力が事前についていなければ話になりません。取りあえず飛行機で買った“装着しているだけで筋肉が鍛えられるといあの装置”を、タンスの肥やしにしてしまわないところから(旦那に見られないように)気長に始めたいと思います。

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ヤマザキマリ(漫画家・随筆家)

1967年東京都出身。17歳で絵画の勉強のためイタリアに渡り、国立フィレンツェ・アカデミア美術学院で、油絵と美術史を専攻。‘97年漫画家デビュー。『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。著書に『国境のない生き方』(小学館)、『男性論』(文春新書)『スティーブ・ジョブズ』(講談社)『プリニウス』(とり・みきと共作 新潮社)など多数。シリア、ポルトガル、米国を経て現在はイタリア在住。平成27年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。平成29年イタリア共和国星勲章「コメンダトーレ」綬章。
 
公式サイト
https://www.thermariromari.com/

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