第121回 「CAが横柄で荒みきった様子なのは…旅客機サービスはお国柄」

投稿日: 2017年04月18日 17:00 JST

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4月某日 北イタリア パドヴァ

 

皆さんは飛行機に乗るのは好きですか? 遠方に実家があったり、ご家族と離れて暮らしていたり、出張の多いビジネスマンや、旅行好きの人であれば恐らく年に何度か飛行機を利用されることでしょう。

 

私が一番最初に飛行機に乗ったのは生後6カ月。母の実家がある東京から彼女の勤めていたオーケストラがある札幌までの旅が初めてだったそうです。小学生になってからは1人で飛行機に乗って、住まいのある北海道から東京の祖父母に会いに行く事も多くなり、恐らくクラスの中では一番飛行機を利用していた子供だったはずです。

 

ちなみに、私は現在イタリアと日本を約1カ月おきに往復していますが、国際便は日系航空会社しか使わなくなりました。ヴェネチア空港から、ヨーロッパの主要都市にあるハブ空港まで移動し、そこからJALやANAなどの飛行機で東京へ向かうのがいつものパターンですが、機内サービスなどにはそれぞれのお国柄が染み出るもの。結論としてやはり、周りに気を使うことのできる日本人の乗客の多い日系の航空会社が一番落ち着いて過ごすことができるようです。

 

学生だった頃はお金があまりないので、安上がりに移動できればどの国のどの航空会社であろうと利用しました。一番最初にイタリアへ移動した時は、シンガポール航空で南回り、バンコック、バーレーンと経由して合計で30時間もの長旅だったのを覚えています。ただ、民族衣装風の制服を纏ったCAに美しい人が多かったのと、ごはんが美味しかったので、30時間はさして苦痛でもありませんでした。それぞれのトランジットでいろんな人種の乗客が乗り込んでくるのも面白かったのを記憶しています。

 

一番頻繁に利用していたのが、まだロシアがソビエト連邦だった時代のアエロフロートでした。その理由は単に航空運賃が安かっただけでなく、当時は日本からの便で唯一ソビエト上空を通過することができ、欧州との往復時間が短いというメリットがあったためでした。ソビエト連邦が崩壊してからはあらゆる飛行機がこのルートを使えるようになっていますが、以前はアンカレッジ経由か、先述のシンガポール、香港、バンコック経由でしか欧州へのルートはなかったのです。

 

ソビエトの飛行機ですから当然モスクワでトランジットをするのですが、たまに上手く乗り継げない時は空港の敷地内にあるホテルで一泊させられることがありました。空港からホテルまではバスで搬送されますが、銃を構えた軍人が入り口付近にずらりと並び、しかもベッドはさっきまで寝ていたと思しき人の窪みができており、鍵もかからない。ホテルを出発する2時間前には、貫禄のある女性が「起きろ!」とドアを開けて大声を張り上げます。冷戦下で徹底した監視をされているような気分になったものでした。

 

また、あるときは私の座っていた座席がボコッと根元から外れてしまったこともありました。通路の奥のCAを呼ぶと、その体格のいいオバさんは私を指差して「立ちゃだめ! すぐに座って!」と叫びながら突進してきました。「ここにじっと座ってるぶんには大丈夫だから」と言われ、私は飛行機に乗っている間、ずっとその椅子を自分の体重で床に押し付けていなければなりませんでした。

 

雨漏りはしょっちゅうでしたし、モスクワからイタリアへのフライトに乗り込んでくる乗客も騒々しく、寛ぐことはほぼ不可能でした。でも、アエロフロートを利用したことで縁ができた人たちもいましたし、なによりそんなサービスであっても、離着陸のテクニックが呆れるほど完璧でした。飛行機がスムーズに滑走路に着陸すると、乗客のイタリア人たちは、素晴らしいオペラでも鑑賞した後のように大拍手をしながら「ブラボー!」いう歓声を上げます。今思い出せば何となく微笑ましいフライトでもありました。

 

2度と乗りたくないのは米国系航空会社の飛行機です。アエロフロートと同じく、宇宙航空技術が進んでいるアメリカの飛行機の操縦もだいたい素晴らしいのですが、とにかく何が嫌かというと、CAが怖い。私がお客のはずなのに、態度は明らかにCAの方が上位で、とてもじゃないけど呼び出したり何かを気軽に頼んだりできる雰囲気ではありません。日系航空会社の礼儀正しく親切なCAに慣れている人には、この米国系航空機でよく見かける、横柄で荒みきった様子のCAにショックを覚えるかもしれません。

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他国に比べて現実離れしているくらい礼儀正しい日本のCA

先日、私たち家族がかつて暮らしていたシカゴの空港で、ユナイテッド航空機のオーバーブッキングによって定員オーバーが生じ、乗客の強制引きずり降ろし事件が起きました。この事件はイタリアではネットだけではなくテレビでのニュースにもなっていました。

 

シカゴからテキサスに向かうこの飛行機に、ユナイテッド航空の社員4人が急遽乗り込まなくてはならなくなり、既に着席していた乗客に好意で降機してくれる人を呼びかけるも志願者はおらず、最終的には抽選で選ばれた4人に強制的に降りてもらうことになりました。ところがその中に、翌日の勤務をどうしても休めないお医者さんがいました。降りたくない、降りられないと反発する彼を、シカゴ空港の警備員が無理矢理引きずり降ろしたのです。警備員と揉めた時にお医者さんは怪我をしてしまい、口から痛々しい血を流しながら呆然となっている。乗客がそんな様子を撮影した動画がネットでアップされていましたが、この事件を報道するサイトのコメント欄を見ると、この航空会社で体験した嫌な思い出を書込む人があまりに多くて、その内容を見て呆れてしまいました。

 

私はちなみにこの航空会社で味わった嫌な経験をエッセイ漫画のギャグネタに落とし込みましたが、同じような不服をつのらせていた人たちは、今回の事件に便乗して鬱憤を晴らしたのでしょう。なんとこの事件の及ぼした世間への影響でユナイテッド航空の株価が一時的に大下落。社長が慌ててコメントを出して咄嗟の取り繕いをしましたが、焼き付いてしまった悪印象はなかなか払拭できないはずです。

 

お金を払って搭乗したところで、心地のよいサービスが受けられないどころか、引きずり降ろされてしまう可能性もあるのだと思うと、たまったものではありません。

 

丁度この事件が起きる前に、アメリカではトランプが「シリアのアサド大統領が化学兵器使用した」とする疑惑に対しての制裁にミサイルを60発近く撃ったという報道があったばかりでした。航空会社というのはそれぞれの国の象徴的な意味も担っていますから、この2つの報道によって、世界中の人がアメリカに対する不信感や物騒な印象を抱いた事は間違いないでしょう。

 

経営破綻が危ぶまれているイタリアのアリタリア航空もアラブのエティハド航空の傘下となって既に数年経ちますが、以前1年だけ運行していたヴェネチア?成田直行便という有り難いルートを利用していたころ、ビジネスクラスの客が私1人、ということがありました。退屈だったのか、CAの女性が私に話しかけてきて、そのままずっと喋り込んだことがあります。食事も「ねえ、もうあなたしかいないわけだし、全種類盛るから食べてよね、ワインも全部試す?」と大盤振る舞いでしたが、そんなサービスもまた、やはりイタリアというお国柄感を感じずにはいられませんでした。

 

そう考えると日本の飛行機は本当に、なんていうか、日本人的礼儀正しさがそのままCAの振る舞いにもあらわれていて、感心してしまいます。爽やかな笑顔にてきぱきとした立ち振る舞いは、他国の飛行機の様子を知っている私にしてみれば現実離れしているように思えるくらいです。

 

やはり、誇りを持って自分たちの仕事をこなしているCAの姿というのは、長旅の疲れを負担に感じさせない、大事な要素です。どうかいつまでこのままハイクオリティなサービスが維持し続けますように。

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ヤマザキマリ

1967年東京都出身。1984年からフィレンツェに11年間在住、油彩、美術史等を学ぶ。1997年に漫画家としてデビュー。2010年『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。シリア、アメリカ、ポルトガルを経て現在はイタリア・パドヴァ市在住。最新作は『スティーブ・ジョブズ』『プリニウス』等。平成27年度文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。

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