第124回 「フランス新大統領に学ぶ『年上の妻を持てば男度も上がる!?』」

投稿日: 2017年05月16日 17:00 JST

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5月某日 北イタリア・パドヴァ

 

先日、フランス大統領選挙で勝利を果たしたエマニュエル・マクロン氏は、そのエリートとしての資質もさることながら年齢も39歳ということで、フランス史上最も若い大統領としても大きな話題になりましたが、もうひとつ世間を騒がせたのが彼の奥様が25歳年上であるということでした。

 

日本のメディアでは大統領選出後にこの“年上妻”について取りざたされていましたが、私が一番最初にマクロン氏の妻について知ったきっかけはもう数カ月前、うちの旦那から送られてきたフランスのニュースサイトの記事でした。

 

我々夫婦も私が夫より14歳年上ですが、この年齢差について私は正直今まで殆ど気にしたこともありませんでした。我々の場合、結婚の動機や主旨もその他大勢の方とはだいぶ違っていたこともあり、他者と比較するのはナンセンスだと最初から思っていたのですが、今回のネタについて旦那がやたらと拘るその様子からすると、どうやら彼は私以上に“自分が妻よりも大幅に年下である”ということを今までも意識していたらしいことが、何となくわかってきました。

 

マクロン氏の奥様であるブリジッドさんはマクロン氏の高校時代の教員で、彼が所属していた演劇部の指導担当だったそうです。しかも彼女の3人いるうちの娘さんの一人はマクロン氏と同級生。既婚者で高校生の子供までいるにもかかわらず、40歳のブリジッドさんに対する15歳のマクロン氏の思い入れは相当のものだったらしく、親にも呆れられて転校までさせられたのに、その後大学に入っても社会人になってもブリジッドさんを諦めきれなかったというのですから、尋常ではありません。それをドラマチックな情熱と捉える人もいるかもしれませんが、欧州の辛辣な批評家の言葉では“狂信的”であるとも捉えられ、自分がそうであってほしいと望んだ事はどんなに時間を掛けても絶対に実現させようとする、マクロン氏の執着心の強烈さが問題視されてもいました。

 

自分の母親と言ってもいいほど年上の女性を妻にしたがるのは、一種のマザーコンプレックスのあらわれではないかという見方もされていましたが、なぜかうちの旦那がマクロン氏に代わって激しくそれに反論。「彼はブリジッドさんを女性としてというより、人間として好きになったんだと思うよ」と。

 

でも、経験抱負で社会をある程度俯瞰で見ることのできる落ち着いた女性がいつも自分のそばにいることを、心強いだけでなく、何より頼りがいがあると感じる男性もいるのではないかと聞くと、自分は少なくとも違うと旦那。

 

「マリは年上だけど全く落ち着いてないし、いつもどこからかトラブルばかり背負ってきて、デルス(息子)よりも心配。自分ではしっかりしているつもりになっているようだけど、正直頼りがいはゼロ」ときっぱり言い返されました。

 

それは確かにそうかもしれないのですが、言及してみると、やはり若くて世の中のことを何も判っていない女性は一緒にいても楽しくない、頼られ過ぎるのも面倒臭い、一人でいろいろやってくれる人でなければ自由を拘束される、というのもあるようです。

 

ということはつまり、経済的にも精神的にも全面的に妻には頼られたいという考え方を持っている男の人は、おそらく自分と大きな年齢差のある年上女性と恋愛したり、妻にしたいと思う確率が低くなるのかもしれません。女性でも男性から頼られたり、男性の未熟さを見るのが嫌、という人もいるでしょう。経済力にしても男性のほうが優位であってほしいとか、自分より経験や知識が豊富であってほしい、守ってほしい、と考えている女性は世界中に沢山いるはずです。

 

私だってまさか自分が35歳の時に21歳の大学生と結婚するなんて、旦那と出会うまでは想像すらしていませんでした。私は基本的に作品の被写体を含めて若い男性に対してそれほど興味がありません。絵を描いていても若い人は描きにくい。描いていて楽しくない。恋愛の対象になるかどうかは別次元として、やはり、長く生きてきた男性のほうが俄然見ていても喋っていても面白いという思いは今も変わっていません。だから私の漫画の主人公は皆おっさんなわけですが……。

 

にもかかわらず我々の結婚が成立したのは「歴史や世界のことばかり喋っていられる、こんなへんな人がいつもそばにいたら、漫画やら絵やら書きものやら、とにかく生産性が高くなるだろうなあ」という思いがお互いにあったからだと言えるでしょう。

 

夫のように寝ても覚めても本ばかり読んで、日常の暮らしにとって便宜性があるともいえない歴史や文学のことばかりあれやこれやと考えている、そんな男性と一緒になってもいいという女性は、正直のこの世の中では限られてきます。私は夫と出会った当時、大学で講師をしたり、テレビのレポーターをしながら子供を育てていましたが、本質的には絵や美術史だけをやって生きていたいと思っていた人間ですし、長きにわたるボヘミアン暮らしの経験もあります。なので、自分の表現欲を刺激する旦那の変人っぷりに惹かれたのは当然の成り行きだったとも言えます。

 

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当時70歳だった母もブラジル人から熱烈なアプローチを

マクロン氏も政治家として生きていくうえで、精神的にもブリジッドさんにはいろいろと支えられてきたようですが、彼はおそらく、自分がやっていることに関心を持ってくれたり意見してくれたりする知性面でのパートナーとしても、彼女にそばにいて欲しいと思うようになったのかもしれません。高校時代、同じ年齢の女学生よりもはるかに知性や教養があった教師である女性に恋い焦がれた、その動機の背景にはやはりマクロン氏のただならぬ自らへの志の強さを感じさせられます。

 

そういえば、『愛人 ラマン』という作品で一斉を風靡したフランスの女流作家のマルグリット・デュラスも66歳のときに、それまで何通もファンレターを送り続けてきた38歳年下の男性と一緒になり、マルグリットが亡くなるまでの16年間を一緒に暮らしました。この二人については後に映画にもなりましたが、ここも年下男性からマルグリットに対する猛烈な求愛があったとされています。

 

そういえばうちの旦那の場合も付き合う前には私に厚さ1センチ程の手紙を毎日送ってきましたが(内容はギリシャ・ローマ史の考察)、いざ結婚をした後は公の場で自分たちにそれだけの年齢差があるということは表に出しません。それは、自分たちの結婚の理由を「若い男好き」「年増女フェチ」などといった短絡的な次元で詮索されるのを嫌がっているからです。

 

しかしマクロン氏を見ていると、もうその堂々たる妻の存在のアプローチは、まさにそういう女性を選んだ自分という人間の品質のアプローチそのものにしか見えてきません。

 

そういえばオバマ元大統領も、ミシェル夫人とは年の差こそありませんでしたが、妻の素晴らしさを自らのクオリティの保証にしているような人でした。トランプ現大統領にはメラニア夫人に対して「彼女のおかげで今の自分がいる、妻リスペクト」的アプローチは全く感じられませんが、彼はともかく、欧米の男性には、妻の存在で自分の株を上げたがる人が結構いるように思われます。特に欧州は古代からの女神信仰が根付いている地域ですから、こんな立派な女性に好かれたオレって凄い、みたいな考え方が何気にあるのでしょう。うちの旦那の場合は先述したように、単に歴史オタク力をてらいなく発揮し合えるパートナーとして一緒になることを決めただけなのに、最近はマクロン氏の話題に便乗して、ふと「そうか、子供がいる年上の女性と結婚した自分って、実は凄かったのか!」などと今更になって感心したりしています。

 

マクロン氏とブリジッドさんの婚姻例が大きく取りざたされた影響をうけて、欧州では女性のほうが男性よりも大幅に年上、という結婚が今後当たり前になってくるという見方もあるようです。そういえばブラジルやキューバみたいな南米にも、ごく普通に妻がとても年上という男性の知人が何人かいます。多様な恋愛のかたちが普通に市民権を得ているあのような国々では、もはや年齢差など驚くに足る事ではないのです。

 

では日本でもそういうカップルが今後増える可能性はあるのでしょうか? さっそくネット上で日本男性の年上妻観のデータを見ると「最初は良かったが後で後悔」「他の人が若い妻を連れていると羨ましい」「上から目線がいやになる」「40代を越えるともうダメ」という声がかなりありました。日本を含むアジア圏における“若い女性志向”は根強いので、それはなんとなく予測された結果と言えます。なので年齢を重ねても素敵な出会いを求めている経験抱負な日本の女性は、欧州や南米へ目線を向けてみたらいいかもしれません。

 

色気もそっけも無いうちの母ですら、70歳の時に連れて行った南の島で、何が気に入ったのか、彼女より一回り以上若そうなブラジル人の男性から熱心にアプローチを受けているのを目撃したことがありますから、可能性は多いにアリです。

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ヤマザキマリ

1967年東京都出身。1984年からフィレンツェに11年間在住、油彩、美術史等を学ぶ。1997年に漫画家としてデビュー。2010年『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。シリア、アメリカ、ポルトガルを経て現在はイタリア・パドヴァ市在住。最新作は『スティーブ・ジョブズ』『プリニウス』等。平成27年度文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。

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