三浦雄一郎 80歳エベレスト登頂成功させた“年寄り半日仕事”の精神

投稿日: 2016年09月26日 06:00 JST

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「70歳、75歳でエベレストを登ることができましたが、80歳でも行こうと目標を決めたときに、大ケガをしたんです。76歳ですか、休暇で楽しんでいたスキーで、ジャンプに失敗して高いところから落ちたんです。左の大腿骨、右の骨盤、恥骨も含めて5カ所折れていました」

 

そう語るのは、隔週連載『中山秀征の語り合いたい人』第68回のゲスト・プロスキーヤーで登山家の三浦雄一郎さん(83)。3年前、80歳で3度目のエベレスト登頂。自身で世界最高齢記録を塗り替えた。現在も講演やトレーニングで忙しい毎日を送られているそうで、札幌から東京にやってきたその足で対談に。まったく疲れを感じない三浦さんに、中山はただただ驚くばかりでした。

 

中山「それは、半身不随になってもおかしくないくらいの大ケガですよね」

 

三浦「医者には『手の施しようがない』と言われてしまった。運がよければ車いす生活ができるでしょう、ということで」

 

中山「それじゃあ山登りなんていうのは……」

 

三浦「絶望的です。それどころか、80歳でエベレストへ行くことを家族は反対していたんですよ。家族会議で決めるからと言われて、うやむやにしていた最中のケガで」

 

中山「ご家族は諦めると思ったでしょうね」

 

三浦「ただ、僕は病院のベッドの中で、なんとかこれを治して『80歳でエベレストに行きたい』と、そのことばかり考えました。2カ月くらいたったら、主治医が首をかしげているんですよ。70歳以上で大腿骨を折ると10人中3人は寝たきりになる。それが僕の骨は、骨密度が20代だったんですよ。骨が丈夫でちゃんとぽきっと折れたのがよかった。複雑骨折だったら、治っていなかったでしょう。僕はエベレストという目標がなかったらとっくに諦めて、寝たきりになっていたと思いますよ」

 

中山「目標が劇的な完治につながるんですね」

 

三浦「そこから1年足らずで、ふつうに歩けるようになり、1キロずつ足に重りをつけて。最終的には片足5キロずつ、背中に25キロ。足腰の基本がやっとできて、6,000メートルの山に行ったんですよ。5,000メートルあたりで、高山病で動けなくなり、心臓の不整脈がひどくなったんですよ。75歳の前にも、心臓の手術を2回行っているんです。それでやっと心臓が復活したと思っていたのですが、また心臓の手術に。これが80歳の1月。そこからリハビリ兼トレーニングをして、エベレストへの出発は3月でした」

 

中山「そんな直前に大変なことですよ」

 

三浦「今度は失敗できないと。布団の中で天の声みたいに『年寄り半日仕事』という言葉を思い出したんですよ。若いうちは朝から晩まで頑張って、年寄りになったら無理しちゃいけない。午前中に仕事して午後にはゆっくり休んでみようと思ったんです。エベレストでも、朝から登り始めてお昼ごはんを食べて、昼寝をして、起きたら周辺を散歩してそこに泊まる。これを16日間繰り返して登頂しました」

 

中山「時間をかけて確実に登っていく」

 

三浦「ふつうより1週間多くかかりました。でも山頂に着いたら半日仕事のおかげで心臓のリハビリも全部終わっていたんですよ」

 

中山「三浦さんだからできることです」

 

三浦「そういうわけで、途中は失敗だらけなんですけど、なぜかエベレストだけはうまく。ベースキャンプに着いたときは、70歳、75歳のときよりも調子がいいんですよ。ゆっくり、無理していないから」

 

中山「三浦さんは常に万全の状態でいるわけではなくて、病気を抱えている。そんな中での登頂、チャレンジなんですね」

 

三浦「エベレストに登るよりも、病気やケガを治すほうが大変なんですよ(笑)」

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