西川美和監督 完全オリジナル志向を生んだ助監督経験

投稿日: 2016年10月07日 06:00 JST

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「ほかの方が書いたシナリオだと、私の解釈が違って、助監督時代と同じ失敗をするかもしれない。もしかしたら俳優さんの解釈が正解で、自分が正しいジャッジができなくなるかもしれない。だから、今に至るまで自分で話を書いて、自分で撮るスタイルになったんです」

 

そう語るのは、隔週連載『中山秀征の語り合いたい人』第69回のゲスト・映画監督の西川美和さん(42)。妻を亡くした男と、母を亡くした子どもたちの交流を通し、人を愛する素晴らしさと歯がゆさを描き切った映画『永い言い訳』(10月14日全国ロードショー)。原作小説も好評で、今作もオリジナル脚本を手掛けている。2人の初対談は、ゆっくりと進んでいきました。

 

中山「西川監督はもともと映画監督志望だったんですか?」

 

西川「いえ、実は全然なりたくなかったんです(笑)。学生時代に自主映画を撮った経験もありませんし、映画監督になろうとする発想さえなかった。映画が好きなので、とにかく映画にたずさわれればよかったんです。映画のエンドクレジットを見ていて、『これだけダラダラ流れてるんだから、どこかに身の置き場があるだろう』って(笑)」

 

中山「大学4年生のとき、是枝裕和監督と出会うんですよね」

 

西川「そうです。直属の部下になり、助監督のいちばん下に入って、カチンコを握らされるんです。当然周りの人には『監督になるんだ!』という強い意志を持って入ってきたんだろうと思われますよね。周囲の監督や先輩方から『20代のうちに監督になれよ』という叱咤激励を受けるのですが、『いやいや、私は……』なんて口が裂けても言えなくなってしまって」

 

中山「監督デビューは’02年製作の『蛇イチゴ』(主演・宮迫博之)。こちらも自作のシナリオですね」

 

西川「当初はシナリオだけ書いて渡すつもりだったんです。でも是枝監督に『誰かに撮らせて駄作になったら、脚本家としての道も途絶える。人のせいにするくらいなら、食わず嫌いをせずに、1本目だけでも自分で撮ってみたら?それで向かなかったら、諦めもつくし』と説得されまして」

 

中山「実際の監督業は、どうでした?」

 

西川「『二度と撮るか!』って思いましたね(笑)。2週間、周りの全員に気を使いまくって、なんとかしのぎました。それまで俳優さんと会話すらしたことがなかったのに、急に自分の言葉で演出をしないといけないのにも、くたびれ果てました」

 

中山「監督は、助監督とは全然違いました?」

 

西川「はい。助監督は自分のなかで正確に監督の意向を解釈して、俳優さんやスタッフに伝達するのが仕事。だから監督が言うことを理解できるときはいいけれど、何を言っているのかわからなかったときにうまく立ち回れず、おかしなことを伝えてしまい、現場が大混乱に。それに比べると監督はずいぶんシンプル。自分が作った話なので、自分がいちばんよくわかっている。それを伝えるだけだから、その意味においてのみ監督は助監督より100倍ラクでしたね」

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