法律では限界――障害者に対する偏見と差別を社会から無くすための「最も強力な手段」

投稿日: 2014年11月18日 00:00 JST

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今回は「障害者差別解消法」について考えたいと思います。障害者差別解消法は昨年6月に成立したもので、障害のある人への不当な差別をなくし、共に生きる社会をつくることを目指す法律です。その政府基本方針の素案となるものが、10月21日に内閣府から示されました。この素案は予定通りにいけば今年12月に閣議決定され、16年4月から施行される予定となっています。

 

同法が制定されたのには、経緯があります。世界には06年に国連が採択した「障害者権利条約」というのがあり、現在まで約150カ国が批准しています。日本も07年に署名しましたが、障害者差別を禁止する法律がないことを国連に指摘され、条約批准には至りませんでした。わかりやすく言えば、日本の国内法が条約批准の資格を満たさなかったということ。そこで国内法を批准に要求される国際水準に近づけるため、昨年の通常国会で同法が制定されたわけです。

 

では、今回示された素案のコアとなる内容をみてみましょう。まず素案では、障害者に対する「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮をしないこと」を差別としています。ここでいう「不当な差別的取扱い」とは、アパートを借りるときに障害があることを理由に貸してくれなかったり、スポーツクラブなどで障害があることを理由に入会を断られたり、車いすという理由で入店を拒否されたりすることを指します。

 

覚えている方も多いかと思いますが、「五体不満足」などの著作で知られる乙武洋匡さんが昨年「車椅子のため入店、拒否された」と有名イタリアンレストランを名指しで批判し、インターネット上で議論を呼びました。今回の素案だと、それは「不当な差別的取扱い」に当たります。

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いっぽう「合理的配慮をしないこと」とは、聴覚障害のある人に声だけで話したり、視覚障害のある人に書類を渡すだけで読みあげなかったり、知的障害のある人にわかりやすく説明しなかったりすることを指します。障害のない人にはきちんと情報を伝えているのに、障害のある人には情報を伝える配慮をしない。つまり、役所や会社やお店などが、障害者の生活に制限をもたらす社会的な障壁を取り除くための配慮をしなかった場合に差別と見なすということです。

 

ところで、公共機関と民間事業者では「合理的配慮」における法的な扱いが異なります。ここがある意味、同法において最も意見が分かれるところかと思います。というのも、国の行政機関や地方公共団体に対しては合理的配慮を「必ずしなければいけない」と法的義務を課しているのに対し、会社やお店などの民間事業者に対しては、障害のある人が困らないように「できるだけ努めなければならない」と努力義務を課すことに留まっているのです。こうした努力義務に基づいた自主的な取り組みだけで差別解消における実効性が担保できるかどうか。これには、疑問が残ります。

 

差別というのは、元々は個人の意識から発せられるわけですから、法律だけでこの問題に対応するには限界があります。社会的弱者に十分に配慮した更なる法改正を今後も続けながらも、法律以前の問題として国民一人一人が意識を向上させること、その集合体としての社会的規範の確立が何よりも重要となります。

 

他者の弱さや寂しさや苦しみや悲しみを、言わなくても汲み取ってあげられる感受性。そして言葉だけではなく、さりげない行動で示すことのできる思いやりに満ちた優しさ。それこそが同法の目指す、障害者に対する偏見と差別をこの社会から無くしていくための最も強力な手段ではないでしょうか。


ジョン・キム 吉本ばなな 「ジョンとばななの幸せって何ですか」(光文社刊・本体1,000円+税)

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吉本ばなな

1964年東京生まれ。’87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。’88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、’89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、’95年『アムリタ』で紫式部文学賞、’00年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞をそれぞれ受賞。海外でも多くの賞を受賞し、作品は30カ国以上で翻訳・出版されている。近著に『鳥たち』(集英社刊)、『ふなふな船橋』(朝日新聞出版社刊)など。

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ジョン・キム

'73年韓国・大邱生まれ。19歳で日本へ国費留学し、ハーバード大、慶應義塾大など世界の大学を渡り歩く。組織に縛られない「ノマドワーカー」の代表的存在として注目を集め、社会人版「キムゼミ」には多くの人が詰めかける。『媚びない人生』(ダイヤモンド社刊)、『来世でも読みたい恋愛論』(大和書房刊)など著書多数。
 

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