五輪エンブレム問題から考える「創造性とは模倣とオリジナルと社会的認証の共作」

投稿日: 2015年09月29日 17:00 JST

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世間を騒がせた2020年東京五輪・パラリンピックの大会エンブレム問題が収束に向かっています。佐野研二郎氏がデザインの取り下げを申し出たことで、大会組織委員会も白紙撤回を表明したのです。まだ余波はみられるものの、そこは日本のこと。今回の出来事をバネにして、きっと良い方向に進んでいくものと信じています。それに関連して、今回は「オリジナリティとクリエイティビティ」について考えたいと思います。

 

まず「何がオリジナルか」ということは私に言わせればすごく簡単で、「真似しなかったものはすべてオリジナル」です。本人に真似する意識があったかどうか、それだけがオリジナルかを決める唯一の決め手なのです。もちろん法律的にそれをどう証明するかの問題はあるでしょうが、本質的には「本人の意識」だけが判断基準となります。たとえ2つの作品が完全に一致したとしても、作者に真似する意識がなかったのであれば、それはオリジナルな作品だと私は思います。そういう意味で言えば、オリジナルな作品を生み出すことはとても簡単。真似しなければよいのですから。

 

ただオリジナルであるだけでは、まわりから賛辞を受けることも、お金を稼ぐことも、名誉を得ることもできません。そのためにはクリエイティブ、すなわち「創造的であること」が必要なのです。では創造的であるというのは、どういうことでしょうか。それは結局のところ、「社会の多数決」によって決まるものだと私は思います。

 

たとえばゴッホの絵は生前、まったくと言っていいほど売れませんでした。彼の絵が評価され始めたのは没後。作品はとっくに誕生していたのに、創造性が認められたのは作者が亡くなったかなり後。それが今や世界を代表する絵画だという事実が意味するのは、「作品が創造的であるためには社会的な認証が必要不可欠」ということです。作品がどんなにオリジナルで素晴らしくても、その時代の社会が評価しなければ創造的にはなりえません。オリジナルであることは時代に左右されない普遍性がありますが、創造性というのは時代の風潮に左右される気まぐれなものなのです。

 

今回のエンブレム問題でも、創造性を語る人はいました。しかしそれを自分の言葉で定義できる人や自分の判断基準を提示できる人が、どれほどいるのでしょうか。きっと、ほとんどいないのが実情ではないでしょうか。にもかかわらずみんなが「自分はその定義や判断基準を持っていてそれは社会の多数と同じ」という暗黙の前提の上にこの問題を捉えている気がしてなりません。

 

創造性にあたかも普遍的な価値があるという幻想から抜け出すことです。ニュートンの言葉にもあるように、我々は所詮「巨人の肩の上に立つ小人」に過ぎない。我々が遠くを見ることができるのは、先人が築いてきた遺産という「巨人の肩」の上に立つからであり、我々が偉いからでも身長が高いからでもありません。その肩の上に小さな石を1つそっとのせる行為が「創造性」というものです。創造性において、模倣は大前提です。模倣は学びです。子供が成長するにも、大人が外国語を学ぶにも、画家になりたい人がデッサンを繰り返すにも、最初は模倣から入ります。そこに自分だけのオリジナルな小さな価値を加え、その価値を社会が認めたとき、模倣は創造性へと昇華されていきます。つまり、創造性は「模倣とオリジナルと社会的認証の共作」なのです。

 

オリジナルであることは簡単。クリエイティブであることは難しい。しかし、本当に難しいのは「オリジナルでありながらクリエイティブであること」ではないかと思います。


ジョン・キム 吉本ばなな 「ジョンとばななの幸せって何ですか」(光文社刊・本体1,000円+税)

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吉本ばなな

1964年東京生まれ。’87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。’88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、’89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、’95年『アムリタ』で紫式部文学賞、’00年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞をそれぞれ受賞。海外でも多くの賞を受賞し、作品は30カ国以上で翻訳・出版されている。近著に『鳥たち』(集英社刊)、『ふなふな船橋』(朝日新聞出版社刊)など。

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ジョン・キム

'73年韓国・大邱生まれ。19歳で日本へ国費留学し、ハーバード大、慶應義塾大など世界の大学を渡り歩く。組織に縛られない「ノマドワーカー」の代表的存在として注目を集め、社会人版「キムゼミ」には多くの人が詰めかける。『媚びない人生』(ダイヤモンド社刊)、『来世でも読みたい恋愛論』(大和書房刊)など著書多数。
 

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