ファストファッション 安さの陰で犠牲となった悲劇とは?

投稿日: 2016年01月21日 06:00 JST

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先日、『ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償~』というドキュメンタリー映画を観ました。ファストファッションとは、急速に変化する流行に合わせて、低価格の服を短いサイクルで生産・流通・販売させる業態を指します。速くて安いファストフードになぞらえて、そう呼ばれるようになりました。

2000年代中盤にヨーロッパから始まったこの業態は、高い回転率で在庫負担を減らすことができるとして、採用する企業が急増していきました。通常のファッション業界では商品企画から販売まで早くて9カ月ほど時間かかるそうですが、ファストファッションはたったの19日で完了してしまうとのこと。変化する流行にもタイムリーに対処できるため、消費者はトレンド感のある服を安く購入できるようになりました。

このように低廉な価格、迅速なトレンド反映、多様な商品展開で人気を得てきたファストファッションですが、ここにきて今まで我々が向き合ってこなかった“不都合な真実”も次々と明らかになってきました。それは生産過程における過度なエネルギー消費、廃棄された衣類の焼却時に発生する莫大な二酸化炭素、加工過程で使用する有害薬品と発生する大量の廃水、生産過程で生まれるゴミなどが、地球環境に深刻な被害をもたらしているというもの。加えて衝撃的だったのは、ファストファッションが脚光を浴びてきた主要な要因の1つである「価格競争力」が、原材料の安さからくるものではなく発展途上国の極めて安い労働力からきているという点です。

この映画が作られた直接的なきっかけになった事件があります。13年4月、ファストファッション関連企業が入ったバングラデシュの衣類工場が崩壊し、1,100名あまりの労働者が死亡する大惨事が起きたのです。犠牲になった人のほとんどは、国際的ファストファッション企業の下請け業界で働いていた女性労働者でした。後からわかったことですが、死亡した労働者の多くは時給24セント、月給40ドルにも満たない賃金で、1日11時間以上の長時間労働を、1カ月に25日も強いられていたそうです。

バングラデシュは中国・イタリアに次ぐ世界3位の衣類輸出国です。5000を超える衣類工場で360万人が勤務していますが、ほとんどがこうした過酷な労働環境や労働条件の下で働かされています。そしてこの安すぎるともいえる賃金体系に目をつけた国際的ファストファッション企業がバングラデシュへ次々と進出し、こうした悲劇を生みだしたのです。

すべてがそうだとはいいませんが、そんな過程を省みないファストファッション企業が環境に負担を与え、生産する途上国の労働者の人権を侵害する原因にもなっているということを、私たちは自覚しなければなりません。価格と品質という最終商品だけを見て購入していた消費者は、原料の生産段階から製品の生産、流通、販売、使用、再活用や廃棄に到るまでのいわゆる製品サイクル全体を意識する必要があるのです。

こうした中で浮上しているのが、スローファッション。これは親環境素材を利用し、親環境的な生産過程を追求し、労働者に公正な賃金を提供するという業態です。スローファッションへの消費者意識が高まれば、環境・人権・倫理を最優先価値とする倫理的ファッション企業も増えていくはず。安い商品の背後にある地球の悲鳴や、安い賃金で一生懸命に働いている労働者の涙までを考慮した、責任ある消費行動が我々には求められているのではないでしょうか。


ジョン・キム 吉本ばなな 「ジョンとばななの幸せって何ですか」(光文社刊・本体1,000円+税)

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吉本ばなな

1964年東京生まれ。’87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。’88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、’89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、’95年『アムリタ』で紫式部文学賞、’00年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞をそれぞれ受賞。海外でも多くの賞を受賞し、作品は30カ国以上で翻訳・出版されている。近著に『鳥たち』(集英社刊)、『ふなふな船橋』(朝日新聞出版社刊)など。

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ジョン・キム

'73年韓国・大邱生まれ。19歳で日本へ国費留学し、ハーバード大、慶應義塾大など世界の大学を渡り歩く。組織に縛られない「ノマドワーカー」の代表的存在として注目を集め、社会人版「キムゼミ」には多くの人が詰めかける。『媚びない人生』(ダイヤモンド社刊)、『来世でも読みたい恋愛論』(大和書房刊)など著書多数。
 

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