『クレヨンしんちゃん』に 幸福な家庭のにおいを嗅ぐ

投稿日: 2016年09月13日 17:00 JST

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息子の手のひらの大きさが私の手のサイズを超えました。不意の離婚騒動から2年、当時、彼は本当に小さな小学生でした。あれから月日が流れ、ぐんぐんと彼は逞しく成長を遂げたのです。足のサイズは父と一緒の25センチ!

 

もう、身長が抜かれるのは時間の問題です。先日、彼の友人たちが集まったのですが、息子が群を抜いていちばん背が高かったです。しかも、肩幅がすごくがっしりしています。バレーボール部に所属しているので、ジャンプ力を鍛えておりますからね、これは間違いなくもっと伸びるでしょう。大人に近づきつつも、同時に、彼は思春期、反抗期に突入しました。確かに難しい精神状態にあると思います。

 

母親の不在も彼なりにかなり割り切っています。この割り切り方が私にはちょっと怖いのです。何か現実を遮断するように、母親の不在理由を削除している感じがします。話題にもしませんし、自分から「ママ」の話をすることもない。なのにアニメ『クレヨンしんちゃん』は欠かさず登校前に見ています。しんちゃんの母のみさえさんのセリフが悲しく家の中で響き渡ります。父親としては複雑な気持ちになりますが、なぜ、『クレヨンしんちゃん』を見続けるのか、理由を聞くことは出来ません。でも、そこに幸福な家庭のにおいを嗅いでいるのでしょう。もう、どんなに頑張っても元の幸せな家族に戻れないということを理解したうえで、彼なりの心の安らぎをしんちゃん一家に求めているわけです。

 

先日、『クレヨンしんちゃん』を見ていた息子が不意に私に質問してきました。「パパは年をとったらどこで暮らすの?」。あまりに唐突な質問だったので、一瞬出かかった言葉が喉元で固まってしまいます。顔色を窺い、様子を見て、「近くにいるよ」と返しました。「どのくらい近くに?」「そうだな、ええと、道の反対側だよ」。自分にしてはなかなか上出来な答えでした。息子はニコッと笑って「ありがとう、じゃあ、学校に行ってくるよ」と言ったのです。身体が大きくなってもまだ12歳です。不安なんですね。私の役目はあいた穴ぼこを埋めるのではなく、その穴ぼこを一緒に息子と眺め続けることじゃないか、と思っています。

 

さて、フランスの家庭料理、ビストロの定番の付け合わせとしてフランスの国民的なじゃがいも料理、ポムドーフィンを今日は作りましょう。

 

材料:じゃがいも250g、水120g、バター30g、小麦粉60g、卵2個、ナツメグ少々、塩・こしょう、油、適宜。まず、じゃがいものピュレを作る。じゃがいもの皮をむき、適当な大きさに切り、茹でる。沸騰して15分くらい、竹串がすっと通るようになったらザルに上げ、ボウルに移してフォークやスプーンなどでピュレ状にしておく。続いて、シュー生地を作る。水、バター、塩・こしょう、ナツメグをフライパンに入れ、火にかける。バターが溶けたら小麦粉を加え、木べらで素早く混ぜ、1つにする。

 

そこに溶いた卵を少しずつ加えていく。はじめは分離したようになるが、卵を加えるごとに根気よく休まず混ぜ合わせていけばまもなく滑らかな生地になる。これ、けっこうな力仕事になります! シュー生地が出来上がったら、じゃがいもを混ぜ合わせ、ポムドーフィンの生地の出来上がり。スプーン2本を使って生地を丸めていき、180度くらいの油で5分くらい揚げる。キレイなきつね色になったら出来上がりです。

 

お子さんのおやつに最適、まるで揚げたてドーナツのようなおいしさです。日曜日にご家族みなさんで頬張りましょう。

 

ボナペティ!

 

エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!

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辻 仁成

作家。東京都生まれ。'89年「ピアニシモ」ですばる文学賞、'97年「海峡の光」で芥川賞、'99年「白仏」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。映画監督、演出家としても活躍。現在はシングルファザー、パリで息子と2人暮らし。
 
DESIGNSTORIES『JINSEI STORIES』
http://www.designstoriesinc.com/jinsei/

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