初めて息子と作ったクラブハウスサンド

投稿日: 2017年06月06日 17:00 JST

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土曜日のこと、息子が「パパ、一緒に料理をしたい」と言い出しました。この一言が私の心にどれだけ突き刺さったことか。思わず涙が溢れ出しそうになりましたが、ぐっとこらえて「いいよ。なに作る?」とすっとぼけましたところ、「ジェノバ風クラブハウスサンド」と生意気な言葉が返ってきました。「まず一緒に買い物に行こうよ」。どうやら頭の中ですでにレシピは出来上がっているようです。ジェノバ風、という単語が私の頭の中でぐるぐる回っております。ま、なんとかなるでしょう。で、とりあえず買い物に。途中、手書きのメモが手渡されました。材料が書いてあります。最近、息子は若いユーチューバーたちの料理番組に凝っています。出元はそこらへんだろうな、と察しました。でも、余計なことを言って出鼻をくじいちゃ元も子もない。すごいね、とおだてて、盛り上げておきました。で、いきなりですが、材料です。

 

材料1人分:鶏のもも肉1枚、食パン2枚、トマト3切れ、ロケット菜・にんじん少々、卵1個、バター・レモン少々、松の実75g、にんにく4分の1片、バジルの葉15g、オリーブオイル・パルメジャーノチーズ少々。塩・こしょう適量。

 

家にあるものも結構ありました。鶏肉と野菜は市場の専門店で買いまして、松の実はスーパーで探しました。

 

「で、どうするのシェフ!」。すると13歳のシェフは「まず、ジェノベーゼソースを作るよ」と言ったのです。おお、ジェノバ風というのはジェノベーゼを使うサンドのことだ、と今さらながらにやっと思い当たった父ちゃん(笑)。「パパ、あれある?ジェノベーゼを作る石のほら、つぶすやつ」「すり鉢とすりこ木のこと? あるよ。でも、ミキサーでやったら簡単だよ」すると息子は「石のすり鉢でやる方が美味しくできるし、作ったという満足感があるでしょ」と、呆れたという顔をしてみせます。「でも、うちには石のすり鉢はないな。木のやつならある」。見せると、息子は笑顔に。でも、これがちょっと小さくてやりにくいんです。なかなかすれません。そこで、日本のごますり鉢とすりこ木を取り出し、「シェフ。差し出がましいことを言うようですが、これでやってみたら?」と手渡しました。シェフは日本のすり鉢を使いました。「ああ、これは便利だ」。大成功のようです。松の実をまず潰し、にんにくを入れてさらに潰し、最後にみじん切りにしたバジルを入れて潰し、パルメジャーノチーズ、オリーブオイルで混ぜました。見た目は美味しそうなジェノベーゼソースが出来上がりました。「シェフ、いいんじゃないでしょうか?」「うん、いいですね」。シェフは出来上がりに満足したようです。

 

「じゃあ、次にコミ君(アシスタントのこと)、チキンをソテーしてください。塩・こしょうで味付けして」。え? パパがやるの? ということで父ちゃんが鶏もも肉をフライパンで焼きます。その間に、息子君は食パンをトーストし、トマトを薄切りにし、にんじんをスライサーでそぎ切りしました。

 

それから面白いことをやったのです。焼き上がった食パンの真ん中を3㎝四方にカットして窓を作りました。最後に目玉焼きを焼きました。お皿の上に食パンを置き、その上に食べやすいサイズにカットしたチキンを置いて、その上にジェノベーゼソースをたっぷりとのせ、その上にトマト、ロケット菜、にんじんを適当に置いて、レモンをちょっと搾りました。その上に目玉焼きをのせ、最後に窓のついた食パンを、ちょうど窓のところに黄身が顔を出すような感じでかぶせたのです。「完成だぁ!」。出来たら、いきなりかじりついておりました。やれやれ、まだパパのは出来てないじゃん!「うわ、めっちゃ美味しい!」。あはは、大成功のようです。お試しあれ!

 

ボナペティ!

 

 

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辻 仁成

作家。東京都生まれ。'89年「ピアニシモ」ですばる文学賞、'97年「海峡の光」で芥川賞、'99年「白仏」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。映画監督、演出家としても活躍。現在はシングルファザー、パリで息子と2人暮らし。
 
DESIGNSTORIES『JINSEI STORIES』
http://www.designstoriesinc.com/jinsei/

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