カフェご飯の定番!本格クロックマダム(辻仁成「ムスコ飯」エッセイ)

投稿日: 2018年01月23日 17:00 JST

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フランスの男性はムッシュ。女性は未成年の時にはマドモアゼルと呼ばれますが、大人になるとマダムに変わります。近所の子たちは私を見かけると「こんにちは、ムッシュ〜」と声をかけてきます。ムッシュと言われることが男の子たちにとっては憧れであり、女の子たちは一日も早くマダムになりたがっています。フランス人はとっても早熟です。日本では大人になりたがらない若者が割と多いですが、フランスは逆でムッシュと言われたら一人前みたいな世界。在仏20年を超える知り合いの日本人はなかなかムッシュと呼んでもらえないと落ち込んでおりましたが、私はずっとムッシュでした(笑)。

 

フランスで差別を受けたこともありません。たまにフランスで差別を受けたと言って怒って帰る友人がいましたが、この国では差別を受けたと思った時点で負け。差別などさせないくらいの威厳とか毅然とした態度が大事なんです。おどおどしていたら、この国はちょっと馬鹿にされてしまいます。ムッシュと呼ばれれば大人として扱われたという証拠であり、うちの息子もたまにムッシュと言われて鼻を高くしております。そうやって紳士や淑女が形成されていくのです。友人のフランス人に「しかし、フランス人って世界一変わっているよね」と質問をしたことがあります。すると彼は「ムッシュ辻、それは違う。個性的と言ってよ。日本みたいにみんなが同じじゃないといじめられる社会ってどうなの? 我々は個性を尊重する。いいかい、自由という言葉はフランスで生まれたんだよ。君たちももっと個性を尊重すべきだ」と怒られてしまいました。

 

そういえば有名カフェで女優のカトリーヌ・ドヌーブがお茶をしていたのですが、日本だったら大騒ぎになっているところ。しかしそこにいたマダムたち「ふん、私の方がもっときれいよね」みたいな感じで誰一人彼女を見ようともしない! で、全員がつんと鼻を高くさせてお茶を飲んでいる。私はその時、素晴らしいな、と思いました。有名だから何? 私も生きているし、私だってたくさん恋をしてきたし、私の人生だって誇らしいのだからミーハーなことは出来ません、みたいな態度をとるのがフランス人なんです。でも、内心は「あ、カトリーヌ・ドヌーブがいるわ」とそわそわしているのですけど(笑)。なんとも可愛い国民じゃないですか。自分を中心に世界が回ってるという考え方、素敵です。何より楽しそうです。

 

さて、パリのカフェに行くと必ずあるのがクロックムッシュ。クロックは時計ではなく、「かりっとした」という意味のフランス語。1910年にパリのオペラ座近くのカフェではじまったとされるホットチーズトーストですね。ということで今日はフランスの紳士淑女を食べてみませんか? クロックムッシュに目玉焼きをのせたものがクロックマダムになります。このユーモアも最高ですね。

 

材料2人分:バター15g、小麦粉15g、牛乳150ml、食パン(薄切り)4枚、ハム2枚、とろけるチーズ80g、卵2個、サラダ油適量。

 

まず、オーブンを200度に予熱。小さなフライパンにバターを溶かし、小麦粉をふるい入れ、ふつふつとするまでよく混ぜ合わせる。牛乳を少しずつ4回くらいに分けて加え、中火でダマにならないようその都度よく混ぜ合わせていくと、ベシャメルソースの出来上がり。食パンにハムをのせ、その上に大さじ3〜4のベシャメルソースを塗り、食パンで閉じる。さらにチーズをのせてオーブンに入れ、10分ほど焼き、チーズに焼き色がついたら完成。そこに目玉焼きをのせればクロックマダムの完成! 味が薄ければお好みで塩・こしょう(分量外)をしてください。パリのカフェの味をご家庭でどうぞ。

 

ボナペティ!

 

 

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辻 仁成

作家。東京都生まれ。'89年「ピアニシモ」ですばる文学賞、'97年「海峡の光」で芥川賞、'99年「白仏」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。映画監督、演出家としても活躍。現在はシングルファザー、パリで息子と2人暮らし。
 
DESIGNSTORIES『JINSEI STORIES』
http://www.designstoriesinc.com/jinsei/

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