それぞれの2年目 #3「 牡蠣養殖の復活に懸ける」

投稿日: 2013年03月04日 21:00 JST

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それぞれの2年目 #3「 牡蠣養殖の復活に懸ける」:千葉正海(56)さん

■出会った漁師さんはラガーマンの先輩

image「スクラムで怪我をしたんだってな。がんばって、よくそこまで回復したなぁ!」

千葉正海(56)さんに、初めてお会いしたのは昨年4月。地震直後に沖に出て、命を懸けて守った船を修理しているところだった。油まみれのゴッツイ手で、会ってすぐに力強く握手をしてくれた。

「オレもな、高校の時にラグビーをやっていたんだよ。ラガーマンだから前に進むしかねぇんだ。家も財産も何もかも(津波に)持っていかれちまったけどな。うちは運良く、家族は持っていかれなかった」

千葉さんは、南三陸町歌津の伊里前地区で、牡蠣の養殖をする漁師。伊里前は、湾へ注ぎこむ伊里前川に10年ほど前、アザラシの子ども「ウタちゃん」が迷い込み、有名になった場所だ。千葉さんの自宅は、「ウタちゃん橋」と命名された汐見橋の近くにあった。

「よく来てくれた。ありがとう。こうやって仲間が助けにきてくれて、ボールを回して、前に進んでトライする。な、ラグビーと一緒だ」

千葉さんの言葉は、一つ一つが力強く飾りがない。まっすぐに私の心に届いた。

imageその夜、千葉さんの家族とボランティアに来ている仲間たちと、キャンプ場のテント内で杯を交わした。採れたての海の幸も並んでいる。これからの南三陸町を、日本を語った。被災者とボランティアの垣根などあっという間に越えてしまう、千葉さんにはそんな力が溢れていた。

■自分で行動しなければ、何も動がねぇ

元々、高齢化の問題を抱えていた伊里前地区の漁師たちは、震災後、牡蠣養殖の復活を断念するものがほとんどだった。この地区で復活の狼煙を上げたのは千葉さんだけ。その時の意気込みをこう語る。

「伊里前の牡蠣の伝統をオレの代で終わらせる訳にはいかねぇ。息子の拓(27)もいるしな。どうにか復活させる。それだけを思った」

しかし、牡蠣の養殖を再開させるには6000万円以上の資金が必要。すべてを失った千葉さんにとって絶望的な金額だった。 「それでも前へ進むんだ」、千葉さんの強い想いに全国から支援者が集まった。
そして2011年12月、「結っこ基金」が立ち上がった。「結っこ」とは、南三陸の方言で、お互いに助け合うこと。また、人と人を結びつけるという意味も込められている。

image先月3日、夏以来、久しぶりに千葉さんにお会いした。場所は、「お食事処 竜巳や」さん。店を流された若い夫婦が力を合わせ、 歌津に昨年12月にオープンした。寄せ鍋を囲みながらの宴となった。

ーすべてを奪った海。漁師にとって海とは?

「人の命を奪ったり、恐ろしいけれど、海ぐらい、人の心を和ませるものはない。春の海、冬の海、四季折々の海を見てごらん。海は、礼儀作法さえ正しく接していけば、最高の場所なんだよ」

ー震災から二年ですが、どう感じていますか?

「オレたちだけじゃなく、被災した福島、宮城、岩手の人間はみんな、来てくれたボランティアの仲間に、感謝してると思うんだ。今まで交友関係のなかった外部の人間たちを震災が呼び集めた。何をしていいかわからない、悩みながらも、とにかく現場に行こうと来てくれた。なんで来てくれたのか。それは、自分の気持ち一つだったんじゃないかな。見ないように、聞かないようにしていれば、自分の平穏な時間を守る事ができる。どう生きたらいいかと感じてくれたんだ。嬉しいね」

現在、千葉さんは、地域のリーダーとして、町づくりや高台移転の意見交換会を取りまとめ、全国の支援者たちとの交流し、そして本業の牡蠣の養殖を行っている。また、「うちの家族が、地域を引っ張る事ができるなら何でもするさ」と、新聞やテレビなどのメディア取材にもできる限り応じ、超多忙な日々を送っている。それでも私のように千葉さんを慕って会いにくる仲間には、両手を広げて歓迎してくれるのだ。

image千葉家には、今年に入り2つの嬉しいニュースがあった。
ひとつは、1月4日に、息子の拓さんに次女遥音(はるね)ちゃんが生まれ、家族が増えたこと。
そしてもうひとつは、念願の牡蠣が順調に育っていることだ。
4月末には支援者を集め、牡蠣の試食会があるという。 実は、運良くこの日、牡蠣を試食させて頂いた。
「プリップリでコクがあって、こんなに美味い牡蠣は生まれて初めて喰った!」というのが感想。(支援者の方々、先に食べてすみません…)千葉さんも「今年は最高の出来だ!」と相好を崩して喜んでいる。

震災前、千葉さんは牡蠣筏48台を所有し、年間10トンの水揚げをしていた。今年は、「結っこ基金」で全国から集まった資金1500万円を元に、牡蠣筏5台が海に浮かんだ。しかし、宮城県の場合は牡蠣の浄化洗浄施設がなければ、市場に出荷できないという難題も待ち受けている。それでも、千葉さんは、2年目に小さな一歩を踏み出すことができた一人だ。

「自分自身なんだよ。自分で行動しなければね。何も動がねぇ」

といった千葉さんの言葉が忘れられない。

自分の意志で踏み出した一歩なのだ。

写真・文 シギー吉田

【動画】http://youtu.be/Ii7gpIMYgAc

※結っこ基金…一口一万円で、半分が支援金。残りは、出荷可能になった後、支援者に牡蠣が送られてくる。他の地域と共同での浄化洗浄施設設置を目指し、2013年3月末に基金の募集は一旦、休止する。

http://www.maruta-takuyo.co.jp/

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