白血病で賠償請求の元原発作業員が呆れる東電の無責任教育

投稿日: 2016年12月12日 17:00 JST

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「3.11の事故までは、原発で働いたことは一度もありません。津波で人や家が流される映像を見て、何か東北の役に立ちたいと思ったんです。そんなとき、社長から『原発の仕事があるから福島に行ってくれないか』と頼まれて。家族には反対されましたけど、引き受けました」

 

そう話すのは原発事故後、東京電力福島第一原子力発電所などで働き、白血病を発症したとして、厚生労働省から労災認定を受けた北九州市の元原発作業員の男性A氏(42)だ。A氏は去る11月22日、「白血病にかかったのは、原発で働いたことによる被ばくが原因」だとして、東京電力や九州電力に約5,900万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。本誌がA氏に単独取材したところ、東電の驚くべき無責任体質が改めて浮き彫りになった。

 

■デタラメな被ばく管理

 

A氏は、2011年10月中旬から2013年末まで約500日間、福島第一原発と福島第二原発、さらに九州の玄海原発などで原発内の溶接作業に従事。この間、A氏は記録が残っているだけでも計約20ミリシーベルトの外部被ばくをしている。これは、白血病の労災認定基準である5ミリシーベルトの4倍にあたる高い被ばく量だ。

 

ただし、「記録されていない被ばくがもっとある」とA氏は言う。というのは原発内での作業中に線量計を持たされなかったり、持っていてもきちんと記録されていないことが度々あったからだ。

 

「私がはじめに派遣されたのは、福島第二原発でした。(風邪用の)サージカルマスクだけつけて、建屋を補強する溶接などをしていたんです。最初はAPD(外部被ばく線量を管理する警報付きポケット線量計)を1人1つずつ持たせてもらえなくて、一次下請けのグループ長だけが持っていました。しかもグループ長は、持っているAPDが被ばく線量限度を知らせるピーピーという警報音を発していても『大丈夫、大丈夫』と言ってアラームを解除して作業を続けていました」(A氏)

 

さらにA氏が携帯していたガラスバッジ(個人積算線量計)を確認したところ、被ばく線量が“ゼロ”のままだったこともあったという。こうしたずさんな管理の結果、A氏が福島第二原発で作業していた2011年10月中旬から12年1月中旬までの外部被ばく線量の記録は、“なかったこと”とされ、残されていない。

 

■ウランは、夢のエネルギー

 

さらに驚くべきは、東電の作業員のための“教育”だった。A氏がもっとも放射線量が高い福島第一原発内で作業を行ったのは、2012年10月から13年12月末までの約14カ月間。4号機の燃料プールに残された燃料棒を取り除くために、天井クレーンを支えるカバーを設置するなどの作業にあたった。その作業に従事する前の2日間、A氏は仲間とともに東電の教科書を使って講習を受けた。

 

「ウランのペレット用燃料ひとつに対して、熱換算量はドラム缶200本分もある。だからウランは未来の夢のエネルギーだ、なんていう話を聞かされるんです。被ばくのリスクは一切教えられません。ただ放射線管理者の言うことは必ず聞くこと、勝手な作業はするな、とそれだけです」

 

A氏は大事故を起こした福島第一原発に入る作業員に対して、「ウランは夢のエネルギー」という教育をする東電の無責任体質にあきれかえったという。

 

■内部被ばくは“なかった”ことに

 

この間、記録されているA氏の外部被ばく線量は、約16ミリシーベルト。途中、九州電力の玄海原発で働いていたときの線量と合わせると、約20ミリシーベルトになる。だがA氏の弁護をしている海渡雄一氏は、こう指摘する。

 

「体の外側から浴びた外部被ばくは20ミリシーベルトでも、体の中に吸い込んだ内部被ばくは“ない”ということになっているんです。これが問題です」

 

というのもA氏は原発内で働いている間、内部被ばくを測るホールボディカウンター測定を受けたが、内部被ばくは“ゼロ”という結果になっているというのだ。作業中、半面マスクがずれて外気を吸い込んだこともあったため、内部被ばくがゼロはあり得ないとA氏は言う。

 

「東電では、2ミリシーベルトに満たない内部被ばくは“影響がない”として記録されないことになっているんです。もちろん、放射線管理手帳にも記録されていません。しかし白血病の労災認定基準が5ミリシーベルトであることを考えると、2ミリシーベルト以下の内部被ばくが重なれば、健康被害につながる可能性は十分あります。2ミリシーベルトに満たないからといって、内部被ばくを“なかった”ことにするのは、明らかにおかしい」(海渡氏)

 

■泣き寝入りしている作業員が後に続けるように

 

A氏は12年の年末に福島第一原発での仕事が終わったころから体がだるいなどの症状が出たため、13年の年が明けてすぐに病院で検査を受けたところ、白血病の診断が下った。

 

「はじめは、原発で働いたせいで白血病になったのだとは思っていませんでした。でも、元請けの鹿島建設の担当者が、労災申請するように強く勧めてくれたんです」

 

だがA氏のように、労災認定を受けられるケースはまれだ。原発事故後ですら、白血病で労災認定されたのはA氏1人。労災申請するだけでも、ハードルが高いという。

 

「私はまだ、労災認定が下りただけでも幸せです。自分と同じように白血病で苦しんでいる仲間もいますが、元請けが労災申請させるのを渋って泣き寝入りしている人も多い。今回、訴訟を起こすのは、そうした作業員に道を開きたいというのもあるんです」(A氏)

 

被ばくと白血病の因果関係を証明することは不可能に近いが、A氏の証言だけでも記録以上の被ばくがあったことは想像できる。長い廃炉作業を支える作業員のためにも、しっかりとした被ばく管理と、補償の道が開かれるべきだ。

 

(取材・文/和田秀子)

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