“原発に最も近い病院”の医師が焼死…次女が語る孤独な闘い

投稿日: 2017年01月22日 17:00 JST

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「院長も高齢で、昨年夏ごろから足腰が弱ってステンと転んだり、体調も思わしくなかったんです。だからいつかこんな日がくるだろうと後継者のことも考えていましたが、まさかこんな形で急に逝ってしまうとは……」

 

こう語るのは、福島第一原発から南に22km福島県双葉郡広野町にある高野病院理事長・高野己保さん(49)だ。高野病院は双葉郡8町村で唯一存続している民間病院で、稼働する病院としては原発に最も近い。常勤医師は震災後6年間、己保さんの父で院長だった故・高野英男さん(享年81)ただ一人だった。

 

ところが地域の医療を守ってきた高野院長が、昨年12月30日に病院敷地内の自宅で火事により焼死。発見された遺体は、DNA鑑定され身元が判明した。院長の死亡により現在、双葉郡は地域医療崩壊の窮地に陥っている――。

 

「人口約5千人だった広野町は福島原発事故後、避難指示区域に指定されましたが、院長が『避難することで命を落とす重症患者もいる』としてここに残ったのです」

 

高野院長は精神保健指定医、内科医、レントゲン技師、当直医、救急医のひとり5役をこなして震災後6年間休まず治療にあたってきた。高野病院の病床数は現在、118床(内科療養病棟65床・精神科病棟53床)。102人の入院患者を抱えるほか、外来には地域住民や、除染や廃炉作業員なども訪れる。近隣のいわき市からも、救急搬送を受け入れている。

 

「院長は『自分がやらなければ被災地の医療はなくなってしまう。それで困るのは地域の患者であり家族』と常々話していました。『今日は応援の先生が来てくださる日だから休んでください』と言っても『患者がいるだろう。臨床医とはそういうものなんだ』と一喝されて。結局出勤していました(笑)。体力が落ちていくなかで院長を動かしていたのは気力だけでした。これまで何度も『うちがつぶれたら双葉郡の医療は終わりですよ』と県に支援要請の陳情や要望を出していたんです。しかし『民間である高野病院だけ特別に扱うのは公平性の観点からも不都合』などという理由で、協力を得ることはできませんでした」

 

そんなときに己保さんが怒っても、高野院長は「まぁ仕方ない。ねばるしかない、ねばれ」「なにを言われても正しいと思ったことを続けよう。自分ができることを粛々とやればいいんだ」と言って、どっしり構えていたという。スタッフがこれまで崩れずにやってこられたのはそんな院長の姿勢が一貫していたからだったと、己保さんは言う。

 

しかし、高野院長のように5役をこなせるヒーローのような医師はなかなかいない。「そもそもたった一人で医療を守ることを美談にしてはいけない」と己保さんは語る。

 

「みなさんがお住まいの地域でも、同じことが起こってもおかしくありません。ひとりで頑張ってきた大先生がいなくなったらそれでおしまいではだめなんです。病院がなくなったら高齢者でも隣町まで1時間近くかけて病院に通うんです。べつに大きな病院を建てろと言っているのではありません。町の規模に見合った医療を継続できる仕組みをつくるのが行政の仕事ではないでしょうか」

 

そう訴える己保さんがふと父親とのこれまでを振り返り、こう語った。

 

「父としてはロクでもないですね。(笑)仕事しかしないんだから。でも、これが院長の人生なんだろうと。大人になってからですね、それがわかるようになったのは。でも私も、子どもに同じ思いを味わわせていないかな……」

 

己保さんには中学1年生の双子の娘がいる。震災は、小学2年生になる直前だった。

 

「事故から3年間はほとんど病院に詰めていましたから、その間、娘たちにはさみしい思いをさせてしまいました。原発事故によって失われた家族との時間は二度と戻りません。震災後4年目くらいからやっと休みがとれるようになっていたのに、院長が亡くなってまたふりだしに戻った感じですね(苦笑)」

 

己保さんには悲しみに暮れる間もない。病院を維持するために奔走する日々は続く。

 

「私は院長の人生を、医者としてまっとうさせてあげたかった。それはある意味、叶いました。あとは父が命がけで守ってきた“地域医療”の火を消さないこととスタッフの雇用を守ること。なにがなんでも、このふたつはやらなきゃいけないと思っています」

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