第5回「6月は、さくらんぼの実るころ」~マダムミキのパリの食・デザイン365日

投稿日: 2016年06月07日 19:00 JST

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『Le temps des cerises(ル・タン・デ・スリーズ)』――邦題『さくらんぼの実る頃』は、フランスを代表するシャンソンのひとつ。さくらんぼの季節が短いように、恋だって幸せな時間は長続きしないという、はかなく切ない恋の歌で、これまで多くの歌手に歌いつがれてきました。日本では加藤登紀子さんがアニメ映画『紅の豚』の挿入歌として歌い、その素晴らしい歌声はフランスでも話題になりました。

そして、今がまさにその季節。旬を迎えたさくらんぼの濃厚な甘ずっぱさといったら! フランス人は、いちごに勝るとも劣らずさくらんぼ(la cerise =ラ スリーズ)が大好きで、マルシェや青果店で山積みにされた赤い実を、専用の大きなスコップを使ってバシャバシャと紙袋にすくい入れていきます。フランスでは、500g、1kg……といった単位で買うのが一般的。ちょっとだけ味見したいというときには「une poignee(ユヌ ポワニェ/ひとつかみ)」「deux poignees(ドゥー ポワニェ/ふたつかみ)」といった買い方もできます。

値段は1kgおよそ10~15ユーロ(1,500円前後)。無農薬のものとなると20ユーロ前後で、「最近のさくらんぼは高すぎる!」とフランス人は愚痴を言います。実際に、ここ数年でかなり高騰したようですが……日本の果物と比べると、まだまだフランスの果物はお手ごろですね。

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左:濃淡のあるワインレッドが美しい、フランス産のさくらんぼ。
右:青果店にて。山積みの箱からこぼれんばかりに。

旬になり、値段も少し下がってきたところで、さくらんぼのクラフティをつくります。クラフティづくりには、「さくらんぼの種をつけたまま焼くか? 取り除いから焼くか?」という議論がつきもの。フランスでは種をつけたまま焼くほうが伝統的だそうで、「種の香ばしいアーモンドのような風味が加わるから」とも言われていますが、この違いは、かなりの通でなければわかりません。私にはさっぱり……。

私は食べやすさを優先して、種は先に取り除くことにしています。「denoyauteur(デノヨター)」と呼ばれる、さくらんぼの種抜き器まで買ってしまいました。これだと、子供たちに種抜きのお手伝いを頼むこともできるので、今では 「クラフティづくり=種抜き」が季節のアクティビティになり、子供たちの楽しみにもなっています。

種抜き器がない場合は、つまようじ2本を輪ゴムでくっつけ、先端を少し開いたような状態にして種のまわりに差し込み、くるっと回転させれば取り出せます。

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左:さくらんぼの種ぬき器。ふたの部分に種を押し出すための棒がついている。さくらんぼを置き、ふたを閉めると種が下に落ちる仕組み。
右:さくらんぼのクラフティ。簡単でおいしいフランスの定番焼菓子。

それでは、フランス伝統の「さくらんぼのクラフティ」のレシピをご紹介しましょう。

【材料とつくり方】
牛乳(できれば全乳)400mlの中にバニラビーンズ1本を割いて加え、軽く温めておく。ボウルに卵4個、砂糖150g、塩ひとつまみを入れ、卵が白っぽくなるまでよく混ぜ、ふるった小麦粉100gを少しずつ混ぜ合わせる。そこに牛乳を少しずつ加え、バニラビーンズのさやを取り出したら生地の完成。これをバターを塗った型に流し込み、さくらんぼ400g(種を取るか取らないかはお好みで!)を並べたら、180度に予熱したオーブンで30~40分焼く。生地が真ん中までかたまり、焼き色がついていたらできあがり。

さて、フランス語には「la cerise sur le gateau 」という表現があります。英語の「the cherry on the cake」からきた表現で、直訳すると「お菓子の上のさくらんぼ」。「最後のひと押し」や「思わぬおまけ(幸運)がついてきた」という意味です。皮肉的に使われることもありますが、私はこのかわいらしい表現が好きで、焼きあがったクラフティの上には、必ずさくらんぼをおまけしてしまいます。

最後にもうひとつご紹介したいのが「Cerise a l'eau de vie(スリーズ・ア・ロー・ド・ヴィ)」。さくらんぼのアルコール漬け。フランスの家庭では、ごちそうを食べたあと、このアルコールがしみたさくらんぼをつまみながら、食後酒としてさくらんぼ風味のオー・ド・ヴィを飲む古い習慣があります。仕込みはもちろん、さくらんぼのおいしい季節に。2~3カ月待ち、肌寒くなってきたころ、スリーズ・ア・ロー・ド・ヴィは完成しています。

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左:スリーズ・ア・ロー・ド・ヴィには、茎を2cmほど残して切りそろえたさくらんぼを使う。
右:保存容器に入れ、2~3カ月たったら飲みごろ。

【材料とつくり方】
さくらんぼ500g、砂糖120g、アルコール40度以上のオー・ド・ヴィ(フルーツ酒またはブランデーなど)500ml、キルシュを用意する。消毒した容器に、茎を切りそろえたさくらんぼと砂糖を交互に入れ、オー・ド・ヴィをひたひたに注ぐ。キルシュを大さじ1ほど追加し、香りづけにグローブを加えてもよい。

さくらんぼの実るころ、この甘ずっぱい果実が街に顔を出したそのときから、はかなく消える日を惜しむように、フランス人たちはあの手この手でさくらんぼを味わい、楽しむのです。

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マダム ミキ(モーリヤック・ミキ)

大阪からパリに移り住み14年。大学で美術史を専攻、パリのCHRISTIE’Sで勉強後、主婦になり、ママになり……今に至る。コーディネート、通訳など、気ままなフランス人を相手に奮闘しています。
 
Instagram:@madamemiki
 

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