ホットロードに憧れ…元ヤン女性語る「私が和希だったころ」

投稿日: 2014年08月24日 07:00 JST

「ホットロード」が『別冊マーガレット』(集英社刊)に連載されたのは’86〜’87年。大人たちはバブル景気に浮き足立ち、中学校では校内暴力の嵐が吹き荒れたあと、管理教育が厳しかったころ。主人公は、そんな時代の中学生と、バイクに命をかける暴走族の青年。

 

「主人公の和希のことを勝手に自分に投影してね。先輩の家にあった紡木たくの『ホットロード』は、ボロボロになるまで読みましたよ」

 

藤沢由美さん(38)は苦笑しながら肩をすくめた。10代の由美さんはまさに“和希”だった。川越拠点のレディースに所属。万引きやシンナー、喧嘩で補導を繰り返し、鑑別所まで入った経験がある。

 

中学生になったある日、学校から帰ると、父親の荷物がすべて片づけられていた。

 

「母は『離婚したから』というひと言だったし、父に至っては別れの言葉のひとつなく。『家族愛が薄い家だなぁ』と、子どもながらに冷めて見ていましたね。離婚なんて、どっちでもいいじゃんって思ってました。実際、父が出て行って、もう両親が喧嘩するところを見なくてすむと思ったくらい」

 

しだいに、似たような境遇の友人たちと過ごす時間が長くなった。学校をサボり、友人と朝まで遊ぶ。日中は家で眠り、夕方、また仲間たちのたまり場へ行く。一度、箍(たが)が外れると、非行はエスカレートする一方だった。先輩の誘いでレディースに入ると「喧嘩上等」が由美さんのポリシー。木刀で人を殴り、大けがをさせても罪悪感は皆無だった。

 

鑑別所を出てから、金色の髪を黒く染め、年齢をごまかさなくていい仕事を始めた。そのとき彼女は17歳。ほどなく3歳年上の先輩と同棲を始め、18歳で妊娠。しかし、息子が2歳になるころ、正式に離婚。実家に戻った。6年前、地元・川越市内でスナックをオープン。

 

「シングルマザーをやってわかったのは『母親だからって完璧ではない』ということ。それでも皆、頑張って生きている。当時の母も、離婚して仕事して、幼い弟を育てて……。大変だったと思います」

 

川越の“和希”はしっかりと地元に根を張って、自分の足で立っていた。

 

「見捨てるのかよ。上等だよ」と粋がった西脇理恵さん(39)は当時19歳。鑑別所送致が決まったとき、母に投げつけた言葉である。「弁護士なんてつけなくてかまいません。どうぞ鑑別所に入れてやってください」と言う気丈な母に、思わず出た悪態だった。

 

フランス人ハーフの父と日本人の母の間に生まれた理恵さん。3歳のとき両親が離婚し、2歳年下の妹とともに、新潟にある母の実家に転居した。

 

見かけが外国人っぽいからと、いじめられがちな妹を守るうちに、度胸がついた理恵さんは、小学校のころからクラスの姉御的存在。中学生になると、不良の先輩からも一目おかれ、かわいがられた。先輩の部屋は『ホットロード』そのままの世界だった。

 

他校のスケバンと1対1のタイマンで喧嘩をしたのも、そのころだ。何発かビンタをくらって心が折れ、ボコボコにされたが、爽快感が残った。

 

「喧嘩して、仲間になる尾崎豊の世界。体をぶつけてわかり合う世界に興奮しました」

 

高校はすぐに退学。レディース連合総長に任命され、バイクで暴走を繰り返す。ナンパな男女が許せず、ナンパ男の車をボコボコにし、喧嘩、シンナー、万引き、無免許運転の日々だった。

 

鑑別所で2週間ほど過ごしたとき、母親が面会に来た。厳しい母が、手錠と腰縄を付けて面会場に現れた娘を見て、言葉を失った。

 

「母はその場に立ちすくんで、両目からボタン、ボタンと大きな涙をこぼすんです。そのとき、ああ、もう潮時だと思いました。変わらなければ私はダメになるって」

 

新潟の“和希”は今、タレント、ラジオパーソナリティ、児童養護施設の子どもを支援するNPO代表理事と、いくつもの肩書を持ち、忙しく東京と新潟を行き来している。

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