モザンビークでHIVと闘う「元109のガングロ店員」

投稿日: 2015年02月23日 07:00 JST

アフリカ大陸南西部の海沿いの国、モザンビーク。人口約2,500万人、海峡の東にマダガスカル島が浮かぶ。その国の首都・マブトから陸路2,500km北へ行った内陸部ニアサ州で栗山さやかさん(34)は暮らしている。

 

「首都マブトといえども発展途上ですが、その首都の人たちでさえ、『未開の地』『最貧の国』と言うのがニアサです」

 

ほほ笑むさやかさんは、この地でひとり「協会アシャンテママ(ありがとう、みんなの意)」を立ち上げた。アフリカの現実は悲惨だ。教育がないから職を持てない。強盗や殺人も横行。衛生管理も悪く、下痢やコレラであっさり子どもがなくなっていく。「だから子どもたちには教育の機会を与えたい。親には公衆衛生を教えたい」と。

 

最初は、大人たちの意識改革からスタートした。お母さんが学校に行っていないから、勉強の大切さが理解できない。公衆衛生が悪い原因に、いまだ医療よりも、呪術が信じられている側面もある。

 

「彼らにとって病院は死ぬところ。病気は誰かが呪っているからだと信じていて、病人の体の一部を切り、傷に黒い粉を塗りこむんです」

 

だから、病院の患者の体は切り傷でいっぱいだ。飛び込みで村に行って、声をかけて話をする。はじめはよく思わなかった住民たちも、さやかさんの熱意にだんだんと理解を示すようになった。

 

そうした日々をブログなどで発信するうち、日本でも支援者が集まり、NGO法人に。ソニーデジタルに携帯配信してもらい、配信料として得た60万円を元手に、’09年10月貯金25万円で土地や備品を揃え、50〜60人の子どもが入れるわら小屋を造った。子供たちの勉強部屋だ。

 

患者の半数以上がHIV感染者という医療現場で、患者に寄り添い、国家資格の“医療技術師”を取得しようと決意したのは3年前。900人中、合格者40人弱という難関試験を突破し、軍隊並みに厳しい国立医療学校で2年半学んだ。昨年12月、成績トップで合格。主席合格者は、近代的な病院など、勤務先をえらべるが、「私は、ニアサ州の病院に勤めます」。この3月から正式に働き始める。

 

「医師数が絶対的に足りないため、医療技術師は地方の病院では医師代わりです」

 

朝7時半。どこの病院も受付けを待つ人でいっぱいだ。若い人が多いのは、短命だから。

 

「平均寿命は50歳を切ります。戸籍もなく、遺体を庭にうめて死亡届を出さない人もいますから、実際は平均寿命30代と見る医師もいます」

 

エイズ病棟は院内でもひときわ広いが、患者は薄暗いベッドの上でただただ死を待っている。さやかさんはその1人1人に穏やかな顔を向け、声をかけ、腐った肉と血がベッドににじむ包帯を換えてきた。「どうしてそんな優しくできるの?」と患者たちは不思議がった。

資格を取った彼女は、80万円で一軒家を購入。この地に骨を埋める覚悟だ。

 

さやかさんは’80年3月18日、静岡県御前崎市で生まれた。高校を卒業し、東京へ出た。

「都会の一人暮らしに憧れただけ」。少女は瞬く間に周囲の雰囲気に流された。同じ短大のお嬢さまが持つブランド物を買うためだけにバイトざんまいの日々。短大2年のとき、渋谷の「109」でバイトをはじめた。彼女は日焼けサロンに通い、つけまつげは2枚重ね。ガングロでド派手なメークのショップ店員は、夜な夜な渋谷の街に繰り出し、遊びまくった。

 

「でも、毎日、そこまでは楽しくなかった」

 

父が突然、会社を辞めたので、実家の家計を思い、短大の学費を返そうとバイトをかけもちしていたころ、母から連絡が入った。小・中・高とずっと一緒だった親友が入院していると。乳がんだった。親戚にも会おうとしなかった彼女が、さやかさんを自室に招き入れた。酸素マスクをつけ、意識は朦朧。それでも懸命に話しかけてくる。「独り暮らし、寂しくない?」「東京は寒くない?風邪ひいちゃダメだよ」。3日後、彼女は息を引き取った。それから真剣に考えた。

 

「なんで彼女が死んで、私は生きているんだろう。私は何のために生きてるんだろう」

 

親友の1周忌を終えたころ、世界を旅して見ようと思い立つ。両親に返すつもりの貯金は400万円あった。母は「自分のために使いなさい」と言ってくれた。特に目的はない。嫌になったら1カ月で帰ればいい。短大時代の友人と、タイ、インドなどバックパッカーお決まりのコースを歩いた。

 

「途上国で子どもたちが懸命に働く姿を見て、私、このままでいいの?と思ったんです」

 

インドのコルカタにある施設で2週間、ボランティアをしてみた。友人とはそこで別れ、1人で中東の国々をいく。歩いても歩いても、自分への答えは見つからなかった。その後、彼女はアフリカへ入る。いちばん困っている人のところへ行こうと、エチオピアの施設でボランティアをした。ようやく心を開いてくれた女性患者が息絶える。次々と……。

 

「私は心身ともに疲れていました。このときようやく、アフリカを離れよう、日本に帰ろうと思ったんです」。3週間の予定で入ったエチオピア滞在は、気がつけば7カ月。さやかさんはまだ26歳だった――。

 

エチオピアを後にして、さやかさんは、ふと、思った。「もうちょっとだけ、アフリカ大陸を回ってみようかな」と、モザンビークに入った。いきなり強盗に会い、バスでは所持金を盗まれたが、さやかさんはモザンビークにとどまり、「アシャンテママ」を立ち上げた。子どもたちは彼女のことを「マナ・サヤカ」と呼ぶ。“さやかお姉さん”という意味だ。

 

「医療技術師としては、もし、自分がこの患者さんだったらという気持ちを忘れずに働いていきたいと思っています」

 

マナ・サヤカは、その愛の翼で大きく羽ばたいていく――。

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