「腹が減っては復興できない」原発20キロ圏内・小高で唯一の食堂

投稿日: 2015年02月27日 06:00 JST

出入りは自由にできるが、泊まることはできない区域。“あの日”から時間が止まったように見える街の一角に、盛んに人が集い、食事をして、憩うことのできる食堂がある。難題が山積みであっても、ここで生きていくと決めた住民たちは、笑顔を忘れない。腹が減ったら復興はできない。そう、おなかがすく、ごはんを食べるということは、生きていくことだ−−。

 

福島県南相馬市小高区は、福島第一原発から北に位置する、いわゆる「原発20キロ圏内」。同じ南相馬市でも30キロ圏内の原町区では、早い段階で屋内退避が解かれたが、原発に近い小高区は、いまだ住民が住むことはできない。

 

そんな小高区で昨年12月、地元のおばちゃん、渡辺静子さん(66)、鈴木弘子さん(64)、島抜典子さん(60)、八島智恵子さん(62)の4人が切り盛りする食堂『おだかのひるごはん』はオープンした。見渡せば、テーブル席も奥の小上がりも、定員約30人の店内は満員のにぎわいだ。

 

「当時、よく言われていたのが、『ここでお店を再開しないのは、お客さんがいないから』というセリフ。それは、再開しない理由を作っているように聞こえました。小高にはもともとおいしい店があって、別の町からも人が来てた。きっと店に魅力があれば人は集まると思ったんですね」(食堂オーナーの和田智行さん・以下同)

 

月・火・木・金曜の週4日営業で、営業時間は屋号にあるとおり、11時から14時までのランチのみ。メニューは700円の日替わり定食と、300円のかけうどん、かけそばだけ。それでもオープンから約2カ月、おふくろの味を求める客で、1日40食ほどを売り上げる日がほとんどだ。

 

「初日の定食は、みんなが大好きな豚のしょうが焼きで勝負しました。最初は経費節減でセルフサービスも考えましたが、それだったら温かみがないと思って。だから、注文や料理を運ぶとき、時間があるだけ世間話をする。それが、田舎の食堂のやりかたなんですね」

 

この、店内をゆったり流れる時間や温かみこそが最高のごちそう。もちろん、初日に用意した60食は、閉店時間を待たずに売り切れた。4人のおばちゃんたちは「こんな忙しさが続いたら倒れちゃうよ」と明るい愚痴を言いながら、小さいけれど、ここが小高の新しい生活拠点になるとの手応えを感じた。

 

ただし、放射性物質の除染を筆頭に、住宅、学校、就職など多くの難題が残っているのは誰より地元で暮らす4人のおばちゃんたちが承知している。“来年4月の完全帰還なんて絵に描いた餅”などという声もあちこちで聞いた。

 

「もう戻れないと諦めている人、帰ろうか悩んでいる人も多い。戻ると決めた人にも不安はあります。だからこそ、小高にこんな場所ができて、『戻りたい』と思う人も増えるかな、って。なにもかも震災前のようにはいかないかもしれない。でも戻ってきた人たちで楽しく生きていきたい。住み慣れた土地で、人情深い生活が送れればと思うんです」

 

その思いを胸に、4人のおばちゃんたちは、今日も合言葉「みんな、帰ってくんべ!楽しくやっていくべよ!」をつぶやきながら店内を忙しく行き来する。凍えた体だけでなく、疲れた心も解きほぐす、おふくろの味。その一皿には4人のおばちゃんだけでなく、多くの地域の人たちの復興への思いが込められている。

【関連記事】

吉田調書が語る現実「サラリーマンでは原発から住民守れない」

原発事故自殺で夫を亡くしたフィリピン人妻「月収は10万円……」
周辺住民脅える…浜岡原発再稼働が招く恐怖のシナリオ

この記事が気に入ったら
いいね!/ フォロ− しよう

WEB女性自身の最新の情報をお届けします。

あなたにオススメ

【注目アイテム】
「メスを使わない美容整形」コルギのパワーを自宅で!!
ジェニファー・ロペス、カイリー・ミノーグが「約20歳年下彼氏」を手に入れたワケ!
45歳、奇跡の美乳・原志保さんのボディを作るヒミツのグッズ公開!!
着るだけで、エステの効果がインナーに!!
可愛い47歳! 元CA佐藤亮子さんの大人気トラベルブランド

コラム・連載

もっと見る

女性自身チャンネル

もっと見る

スヒョン入隊前の心境を吐露!U-KISSみんなで乗り越える新曲2017.10.17

U-KISSが14枚目のシングル『FLY』をリリース! 4月にケビンが卒業して以降、5人体制で挑むはじめてのシングルは苦しいことを乗り越えて前に進もうというメッセージが込められている。楽曲、そしてリ...


ランキング