自ら採掘~販売まで…エメラルドに魅せられた日本人女性

投稿日: 2015年07月16日 06:00 JST

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今年5月5日から10日間にわたって伊勢丹新宿本店本館5階で開催された、川添微さん(43)の個展「honokaのエメラルド」。個展のうたい文句には「母なる地球から何億年の月日をかけて生まれてきたエメラルド原石には『魂の美』がある。エメラルド原石の叫びに耳を傾けながら、生まれたままのかたちで制作されたジュエリー。原石の力強さを感じてください」とある。

 

数々のジュエリーを彩るエメラルドはひとつとして同じ形、大きさはなく、緑色の濃淡もさまざま。原石を生かした斬新なデザインが特徴だ。作品には『満月に寄り添う』『トブヨウニサク』『永い眠りからの目覚め』『origin』など、個性的な名前が冠されている。

 

「トンネル(原石の採掘場の坑道)の中で出合った時点で、この形や色を生かして、こうしようとイメージが浮かび、同時に、タイトルも自然に決まるんです」(川添さん・以下同)

 

世界的に活躍するジュエリー・デザイナーの彼女は、“エメラルド・ハンター”の異名をとっている。なにしろ、エメラルドの最高の産地である南米コロンビアに自ら出向き、危険を顧みずに、銃を持った警備員が監視する採掘場に入って原石を採掘するところから始めるのである。現地での交渉と仕入れ、デザイン、加工、販売まで、すべて彼女が手がけている。

 

川添さんは’92年、東京・御徒町のエメラルド原石の輸入会社に就職。21歳の若さでバイヤーとなり、単身、コロンビアへと向かった。会社から大量のオーダーが届けば、少しでもよい石を安く手に入れたい。卸商からの仕入れでは間に合わず、自分で採掘場のトンネルに入ったのはこのときだ。岩盤にダイナマイトを仕掛けて爆破させ、砕けた岩の中からハンマーやライトで、緑色の鈍い輝きを見つけた。

 

「危険を感じなかったのは、それだけのめり込んでいたからでしょうね。トンネルは、長いと1時間近く奥へ入るけど、先に進むことしか考えてないので、ぜんぜん平気(笑)」

 

“エメラルド原石の究極の美しさ”に、どんどん魅せられていく川添さんだったが、一方で買取り交渉は、非常にタフなものだった。

 

「こっちは女だし、アジア人だし、若いし、不利な条件ばかりです。ナメられているのは明らかなので、ハッタリで机をバーンとひっくり返さんばかりに値段交渉したら、相手が突然、拳銃を突き出してきて。そうなると、あとはアジア人女性の武器の1つのほほ笑みで、その場をしのぐしかない。でも、交渉では引きさがりませんでした」

 

当時の川添さんは月に1度のペースでコロンビアを訪ね、「やり手」として名をはせ、突っ走っていた。しかし、25歳のときに肝炎が劇症化。半年間、身動きが取れなくなる。そんなとき、心にあたためてきたことを社長に相談した。エメラルド原石の形を生かしたジュエリーのデザインである。だが、答えは「1個1個、時間をかけて作っていたら採算が取れない」だった。

 

納得がいかなかった彼女は会社を辞め、ニューヨークに移り住んだのは、27歳のときだ。世界的な宝石の教育機関であるGIAニューヨーク校で2年間学び、自分の作品作りを続けながら、宝石鑑定士の免許を取得する。母のアドバイスで、初めての個展は30歳のときに、故郷の香川県高松市のギャラリーで。大成功をおさめた。川添さんは現在、家族で移住したインドネシア・バリ島の自宅工房でジュエリー制作をしている。

 

「エメラルド原石は少なくなっていて、50年後には、掘り尽くされるともいわれます。そうしたら未来の子供たちは原石を見られなくなるんです。だからいまこそ、その魅力を伝えたいし、知ってほしい。当時も今も、私がジュエリーを作り続けている原動力は、エメラルド原石の魅力を次世代に伝えることです」

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