難病の長女5年で2万枚撮り続けた写真家語る“母の使命”

投稿日: 2017年04月23日 06:00 JST

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てんかんや知的障害などが現れる先天性の難病「結節性硬化症に伴うウエスト症候群」を患った長女・結希ちゃん(6)のスナップを5年間で2万枚撮り続けた和田芽衣さん(34)。そのうちの30枚を選んでまとめた作品「娘(病)とともに生きていく」が、ドキュメンタリー写真家の登竜門である「名取洋之助写真賞」の激励賞に輝いた。

 

診断が下された日の夜の、結希ちゃんのつぶらな瞳。まだ赤ちゃんの妹をそっと抱えている幼い寝顔。プレ幼稚園の駆けっこのゴール前で、手を差し出す先生に手を伸ばしている姿。ジャンプするとびきりの笑顔。孤独な夏空……。モノクロの柔らかなトーンの作品からは、シャッターを切ったときの母親の思いが静かに伝わってくる。審査員からは、「“命”に、見事に対峙している」と高く評価された。

 

芽衣さんは、’83年、横浜生まれ。大学で心理社会学を学び、大学院では医療心理学を学ぶ。’07年、埼玉医科大学国際医療センターの精神腫瘍科に、心理士として就職。’10年、芽衣さんの働く国際医療センターを研修医として訪れていた理さんと出会い、9月に入籍。’11年2月26日、結希ちゃんが生まれた。異変に気づいたのは、その年の11月。それまではずっと抱っこで暮らしていた結希ちゃんをベビーチェアに座らせたときだった。

 

「首がカクンと、おかしなふうに左に傾くんです。動画に撮って主人に見せると、『すぐに受診しなくては』と」(芽衣さん)

 

医師である理さんは、妻には黙っていたものの、生まれたばかりのわが子の体中に白斑があったことに、不安を覚えていた。動画を見た瞬間、結節性硬化症の典型的な発作症状だと気がついたという。翌日から、結希ちゃんの徹底的な検査が始まった。そして告知された病名は、不安が現実になったものだった。脳や内臓や皮膚、骨など全身に良性の腫瘍ができ、さまざまな疾患をもたらす病気である。発症率は6,000人に1人。根本的な治療法は確立されていない。

 

「いまある能力が、失われるかもしれない病気です。たとえば、いま笑っているのが笑えなくなるかもしれない。医師である私も、先が読めない不安感に襲われました」(理さん)

 

確定診断されたその夜、大きな瞳できょとんとしている愛娘を抱きながら、夫婦で泣いた。

 

「こんなかわいい子はいないのに、こんないい子はいないのにって。私が先に泣いて、夫が泣きはじめた。でも、夫の涙を見ているうちに、なんだか少し冷静になってきて、“がんばらなきゃ”スイッチが入りました」(芽衣さん)

 

闘病の不安の中で、彼女を救ってくれたのはカメラだった。写真は、芽衣さんの長年の趣味だった。中学、高校と写真部。その後もカメラはいつも身近にあった。

 

「抱えている不安や恐怖をあるがままに伝えようとシャッターを切りました。いまこの瞬間を撮って、考えるのはあとでいいや、と。ファインダーを通すことで、少し落ちついてわが子や、治療の様子を見られるようにもなりました」(芽衣さん)

 

’15年から、難病の子供たちとその家族の会「ニモカカクラブ」を主宰している芽衣さん。同年、写真を本格的に学ぶため、ドキュメンタリー写真家・佐藤秀明氏に師事。そして’16年12月、「名取洋之助写真賞」に応募した「娘(病)」とともに生きていく」で、激励賞を受賞する。

 

「感無量でした。私には写真という表現がある、という意味でも自信になりました」(芽衣さん)

 

今年1月から2月には、東京と大阪で受賞作品写真展が開催された。理さんは、何より写真を見ている人たちの表情が印象的だったと言う。

 

「うちとは違う厳しい疾患を持つお子さんのお母さんが、涙を流されていました。病室のカーテンの仕切りから光がもれているだけの写真の前で、たたずんでいる人もいらした。同じ体験をしたんだろうなと。結希の病気が大変とかではなく、誰かの心を動かす写真はすごいなと思いましたね」(理さん)

 

受賞を機に、芽衣さんの夢はさらに広がった。

 

「患者さんやその家族の日常に寄り添い、医療福祉で働く人たちの凛々しさも伝わるような写真を、プロとして撮っていきたいです」

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