九州初の女性弁護士 新人時代は大黒柱・家事・育児をワンオペで

投稿日: 2018年04月23日 16:00 JST

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弁護士・湯川久子さん(90)は'57年、29歳のときに福岡市で開業。九州で第一号の女性弁護士だった。それから60年余り。離婚問題や相続問題を中心に、扱った事件は優に1万件以上。卒寿を迎えたいまも現役で仕事を続けている。

 

湯川さんは'27年、熊本県に生まれた。8人きょうだいの次女で、父はやり手の弁護士、母は専業主婦だった。両親にかわいがられ、無邪気に少女時代を過ごしてきた。ところが10歳になるころ、その天真爛漫な表情に影がさす。母が急逝したのだ。

 

「前年の末に妹を出産したのですが、産後の肥立ちが悪く、そのまま亡くなってしまった。私はまだ4年生でした」

 

家の中は、たちまち火が消えたようになった。時を同じくして、日本も暗い時代に突入する。同年、日中戦争が勃発したのだ。

 

「大人も子どもも皆、日本が絶対勝つと信じてましたよ」

 

湯川さんが女学校に進学して間もなく、一家は中国・上海に移住。大都会の上海は、戦争景気に沸いていた。しかし、日本の戦況悪化とともにバブル景気は衰退。日本は負け、湯川さんは家族とともに故郷・熊本に引き揚げた。

 

「戦争に負けたのはショックでしたが、アメリカさんのおかげで日本も男女共学が始まって。私は父に『東京の大学に行きたい』と宣言しました。父は『法学部に行って弁護士か裁判官になるなら大学に行ってよし』と」

 

湯川さんは中央大学法学部に進学。女子学生は、わずかに4人だった。大学を卒業した湯川さんを待っていたのは、鬼教官と化した父のもとでの、司法試験の猛勉強だった。

 

「司法試験合格が大学に行く条件でしたからね、1日10時間、机に向かわされました。さらに、福岡の大学の研究室でも勉強を続け'54年、やっと司法試験にパスしました」

 

この試験勉強の最中に、運命の出会いがあった。

 

「大学の先生の助手に、ひと目ぼれしちゃったんです」

 

相手は5歳年上の洋さん。彼もまた法曹界を目指し、司法試験に挑んでいた。湯川さんが司法試験をパスした翌年の夏、2人は結婚。湯川さんは27歳だった。

 

「でも夫はまだ試験に通っとらんかったから、結婚も『合格するまで待ってくれ』と言われたんやけど、私は『待てん』と答えて(笑)。でも結局、待たんでよかったです。夫はそれから10年受け続けたのに、通らんかった。私と違って頑固なんが、いかんかった(笑)」

 

やがて長男、長女と2人の子宝にも恵まれた。

 

「夫は司法試験を諦めてから、恩師の口利きで大学で法律を教えましたが、それまでの10年間は、私が大黒柱。きつかったですよ。新米の私の、弁護士報酬だけですからね」

 

夫は、イクメンやカジダンとは程遠い“ザ・九州男児”。たとえ収入がなくても家事や育児はしない。弁護士の仕事に加えて、家事育児の一切を湯川さんが担った。

 

「でも、休日にはドライブに連れて行ってくれたり、いい夫でしたよ。その車ももちろん私が買いましたけど(笑)。友人や親戚に愚痴をこぼすと『それはほれた弱み、しょうがないよ』って、逆に冷やかされました。なんといっても、いい男やけん(笑)」

 

'57年、弁護士として開業すると、湯川さんは地元のちょっとしたスターになった。“九州初の女性弁護士”には取材が殺到。地元紙ではコラムの連載も持った。その土地柄か、九州第二号の女性弁護士の登場まで、10年がかかった。湯川さんの30年後輩で、長年の仕事仲間である稲村鈴代弁護士が言う。

 

「女性弁護士が出始めてから、湯川先生は毎年、女性の新人に声をかけて一緒に仕事をしていました。私もそうやって経験を積ませてもらったんです。母に『湯川先生と一緒にやらせてもらえる』と伝えたら、大喜びでした。先生と同世代の九州女にとって、弁護士第一号の湯川先生は、憧れの存在だったんです」

 

稲村弁護士は湯川さんの「じっくり聞く」姿勢が、大いに勉強になったと話す。

 

「離婚の相談に来られる方は、混乱状態にあります。伴侶の浮気発覚の直後だったり、暴力を振るわれていたりで、パニックを起こしている人もいます」

 

概して、依頼者の最初の相談は、話が堂々巡りになる。

 

「そんなときでも、じっくりと聞くのが、湯川先生の素晴らしいところ。男性ベテラン弁護士のなかにはそうじゃない方もいるようですが……」

 

言いよどむ稲村弁護士の言葉を湯川さんが継いだ。

 

「男性弁護士に『“せからしかね、あんた、さっきから同じことばかり言いよろうが!”と怒られて……』と、泣きながら来た依頼者もおったね」

 

湯川さんは、同じ話が何度続いても、そのまま語らせる。

 

「男性は、理詰めの話は上手よ。でも、依頼者は説教を聞きたいわけじゃない。もともと、女の人の話というのは、話が出たり入ったり、いろいろありますでしょ。私はそういう話に慣れているから、ずっと聞いてられるのね。でも、男も女も、依頼者はそうやって、何度も同じ話をしながら、自分の気持ちに徐々に整理をつける。こちらは聞いているだけで、依頼者はおのずと結論にたどり着くとです」

 

離婚や相続といった“家事事件”では、結論を依頼者本人が出すことが重要と、湯川さんは考える。そして、依頼者の長い話に付き合ったのち、彼女はこう声をかける。「あなた、自分がどうしたいか、もうわかってるじゃない」。

 

「私たちが先回りして結論を示してしまえば、時間は短く済むかもしれません。だけど、本人が本心から受け入れていなければ、本当に幸せな解決にはならない。だから、まずはこちらが、相手を信用して話を聞く。それが依頼者のかたくなな心を解きほぐす、そう私は信じているんです」

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