母へ「元気で…」JR横浜線救命女性が遺した最後の手紙

投稿日: 2013年10月09日 07:00 JST

「記事していただくのはありがたいんですが……。事件が大きく取り上げられると、助けられた方のご家族がいたたまれなくなると思います。私は、それがいちばん嫌なんです」

 

娘を亡くしながらも、相手の家族を思う言葉を口にするのは、故・村田奈津恵さん(享年40)の母・春子さん(66)。10月1日、奈津恵さんは横浜市緑区のJR横浜線の踏切で74歳の無職の男性を助けようとしたため、電車にはねられ亡くなった。

 

彼女は仕事の帰りで、父・恵弘さん(67)が運転する乗用車の助手席に乗り、踏切が開くのを待っていた。そのとき、奈津恵さんは、線路でうつぶせに横たわる男性に気付き、父の「もう間に合わない!行くな!」の制止を振り切って飛び出し、男性の体を移動させた。そのため男性は助かり、しかし、奈津恵さんは帰らぬ人となってしまったーー。

 

「娘は、困っている人を見ると気になって、もう放っておけない性格なんです。でも、目立つことが嫌いなので、さっと、行動して、すぐに姿を消すんです……」(春子さん)

 

奈津恵さんは、現場近くで父の経営する不動産会社に勤めており、その不動産会社の上の階で両親と同居していた。奈津恵さんは3姉妹の次女で独身だった。交際していた男性はいなかったのだろうか。春子さんに聞いてみた。

 

「いえ、いませんでした。自分の考えがあるらしく、結婚はあんまり考えていなかったようです。うちは娘が3人います。1人くらいは独身でもいいんじゃないかと、私たちものんきに、自由にさせていました」

 

奈津恵さんは、家族の記念日などに、心のこもったプレゼントを贈っていたという。恵弘さんは、テレビの取材で、親孝行なメッセージが忘れられないと話している。

 

「誕生日プレゼントをもらったときには、メッセージも入っていましたね。『お酒を飲み過ぎないように頑張ってね』と……」

 

もちろん、母にも。春子さんは、声を詰まらせながら、本誌にこう告白した。

 

「私も、娘からメッセージをもらいました。『これからも元気で……』。そんな言葉がつづられていました……」

 

その後、言葉を続けられなかった沈黙に、親より先に逝った子を思う春子さんの悲しみがにじみ出ていた。それが、奈津恵さんの“最後の手紙”だった。

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