現代に受け継がれる 幻の潜水艦「伊四○○型潜水艦」の魂

投稿日: 2014年01月22日 16:00 JST

昨年8月、ハワイ大学の研究チームはハワイ・オアフ島南西沖の深さ700メートルの海底で沈没した巨大な潜水艦を発見した。その後の調査で、この艦が日本海軍の潜水空母『伊四○○型潜水艦』の伊400だと確認した同チームは、昨年12月にこの事実を発表した。戦史・兵器研究家の大塚好古氏は次のように語る。

 

「伊四○○型は『米西岸及び米東岸において、通商破壊戦と潜水艦搭載機による要地爆撃を実施する艦』として計画された。この構想は開戦後に米本土に直接脅威を与えうるものとして山本五十六連合艦隊司令長官より強く実施が希望されて整備が決定したが、戦況の悪化もあり完成したのは3隻(艦名・伊400、伊401、伊402)にとどまった」

 

当時世界最大だったこの潜水艦の“凄さ”を大塚氏は解説する。

 

「潜航時排水量が6,560トンとドイツの長距離型のIXC型潜水艦の5倍以上、米の艦隊型潜水艦『ガトー』級の約2.7倍に達する大型艦でありながら、潜没秒時(50秒)がこれらの艦と大差ないかむしろ短いなど、当時の潜水艦として平均かそれ以上の性能と有力な攻撃力を持っていた。さらに大型の攻撃機・晴嵐3機を搭載可能な航空機運用能力と、米東岸での長期作戦実施可能な37,500カイリ(独艦は13,450カイリ、米艦は12,000カイリ+)という長大な航続力を持たせたのが最大の特徴です」

 

この伊四○○を「潜水艦に戦略性を与えた夢の兵器」と讃えるのは、自民党幹事長の石破茂氏だ。

 

「潜水空母を大戦中に造り、実際に運用してみせたというのは、すごいことですよね。航空母艦を実際に機動部隊として運用できたのは、今に至るまで日本海軍とアメリカ海軍だけですよね。もちろん、フランスもイギリスも空母は持っているけれども、機動部隊として運用したのは、アメリカと日本海軍だけです。また、地球を1周半できる、アメリカまでの距離を往復できる、そんな潜水艦があったんだという驚き。今で言う戦略原潜のルーツみたいなものです」

 

しかし、その性能を実戦で発揮する機会は得られなかった。当時、伊401の飛行長だった浅村敦さん(91)は、そのときのことを次のように振り返る。

 

「私は’44年12月に六三一空飛行隊長に任命されました。当時、横須賀航空基地で実験飛行を繰り返している機があり、『あれはなんですか』と聞くと、『M6(晴嵐)』だと。水冷発動機の『タッタッタッ』という爆音が格好よかった。晴嵐は極秘扱いで、同じく極秘扱いで建造中の大型潜水艦に晴嵐を搭載して、パナマ運河を攻撃し敵の交通を遮断するという計画でした。晴嵐は零戦10機分の値段だと聞きましたね」

 

浅村さんは、最終的に晴嵐3機を10数分で潜水艦から発艦させるまでに訓練したという。

 

「パナマ運河爆撃は、沖縄も陥落し本土決戦も近いという戦況のなかで中止され、アメリカの機動部隊が集まるウルシー(グアムとパナマの中間にある環礁)攻撃へと作戦が変更されました。伊400と私が乗る伊401は8月14日にウルシー南方で会合し、8月17日に攻撃の予定でした。攻撃についての最後の結論はフロート(着水用の浮き)を外して800キロ爆弾、もしくは魚雷を積むことになり、パイロットの生還を考えない特攻作戦という認識でした。私も『これは特攻だな』と死ぬ覚悟を決めていました」(浅村さん)

 

当初の計画されたパナマ運河攻撃作戦は、’45年6月に米機動部隊が終結するウルシー環礁攻撃の『嵐』作戦へと変更され、伊400と伊401は同年7月23日にウルシーへ向け、大湊を出航。しかし、作戦が終戦により中止となり、8月16日に『即時戦闘行動停止』『各艦は作戦行動を取りやめて呉に帰投せよ』の命令を受けて本土に回航。米駆逐艦2隻の監視下で横須賀に回航されて8月29日に入航した。

 

「9月15日に日本海軍の艦籍から除かれて米海軍の手に渡り、’46年1月にハワイに回航のうえで各種試験に従事。その後、6月4日にオアフ島沖で新型魚雷の標的艦として撃沈された。処分が急がれたのは、ソ連海軍に伊400型を資料として見学させたくない、という意向が働いたためもあった」(大塚氏)

 

だが、艦は沈んでも、その技術は生かされた。

 

「調査後『米海軍で参考になる点は取り入れるべき』とも提案がなされており、初期の米の巡航ミサイル潜水艦の設計の大きな参考とされている。戦後の『おやしお』に始まる自衛隊の潜水艦の設計・建造が当初より順調に進んだのは、戦時中に培われた潜水艦建造技術に立脚するものであり、本型の建造は有意義であったと言える」(大塚氏)

 

伊四○○型潜水艦の魂は、現代に受け継がれている。

 

(週刊FLASH 2月4日号)

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