「君住む街へ」 歌手活動46年の小田和正(番外編)

投稿日: 2016年07月12日 13:00 JST

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(写真・神奈川新聞社)

「6.30」は、横浜出身のシンガー・ソングライター小田和正(68)にとって特別な意味を持つ数字だ。

1982年6月30日。東京・北の丸にある日本武道館で、10日間にわたって行われたオフコースのコンサートが終幕を迎えた。「さよなら」などのヒットで全国区になった5人。その姿を一目見ようと、事前に往復はがきで受け付けた希望総数は52万通。当選した10万人がプラチナチケットを手にした。

小田とともに、グループを立ち上げた鈴木康博(68)の脱退はこの時は非公表だったが、「言葉にできない」の冒頭、「ラララ」と歌う小田が声を詰まらせ、左の頬に涙が光った。曲の終盤には、イタリア人女優ソフィア・ローレンが主演した映画「ひまわり」で流れた、ヒマワリ畑の映像がスクリーンに揺れた。浮かび上がった「We are」(私たちは)「over」(終わり)の文字。5人のオフコースは伝説になった-

オフコース時代から、ソロまで46年の歌手活動をまとめた3枚組みベスト盤「あの日 あの時」を4月に発売した小田はいま、「君住む街へ」と題したツアーで全国を巡っている。

公演は3分の1を終え、6月30日には東京体育館(東京都渋谷区)でコンサートを開いた。ソロはもちろん、オフコースの曲も歌う。34年前と同じ日。ファンの脳裏には、小田の涙がちらついていた。

“あの日”-。千葉県出身の佐波真理さん(48)は中学時代の同級生と武道館に向かった。「小田さんの歌詞が好きで、ノートに書き出していた」と懐かしそう。福岡県生まれの花田忠幸さん(59)は、当時恋人だった妻と二人で武道館にいた。自分が好きなグループを見せたかった。「ヒマワリの映像を忘れられない」。その日から5人ではなくなったオフコースを封印した。

梅雨の晴れ間が見えた、東京体育館。開演前のスクリーンには、会場近くにある神宮外苑のイチョウ並木のイラストが投影されていた。聖徳記念絵画館へと向かう空は、小田が最も好きな季節、夏の青空だ。

スクリーンに虹をかけた「wonderful life」で幕を開けたライブは、高揚感に満ちていた。9,500人が埋め尽くした会場。笑顔の客席に目を向けた小田は、「6月30日は5人のオフコースが最後の武道館を行った最終日に当たるということでびっくりしています。その10日間、どれか1日でも行ったよという方」と呼びかけると、「行ったよ」とあちこちから声と手が上がった。

「え、そんなに?!」と驚いたが、「みんな…、若かったよね」とチクリ。「あれから何と34年も時がたっております。いま、どれだけみなさんの期待に応えられるか分かりませんけれど、ジジイなりに頑張っていきます」と冗談で笑わせた。

ピアノの音に乗せた「さよなら」の歌唱後、花道を歩き始めた小田は「さっき楽屋でちょっと考えていたんですけど、最近は好きだ嫌いだって曲は書いていないなって。また書くときがあるんでしょうか」と自問自答。中盤には34年前と同じ9曲目に「心はなれて」、そして「言葉にできない」と続けた。

背景に34年前のヒマワリの映像、「over」の文字が映された。こみ上げるものがあったのか、「嬉しくて 嬉しくて 言葉にできない」と歌うラストは声にならなかった。拍手で励ます観客の温かさに、右手を上げて応えた。

「『言葉にできない』で、まさかあんなふうになるなんて。予期していなくて。なんだ、34年前と一緒かよって。この年になりましたから、次は一体いくつになっているのか、想像もできませんが、オフコースの歌ばかりじゃなくて、新しい歌を作って…」と再会を願った。拍手を送り続ける会場に、「みんな来てくれて、ありがとうございました」と手を振り、ほほえんだ。

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