「少年院を日本一の学校にする」 武藤杜夫(1)

投稿日: 2016年08月30日 11:00 JST

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(写真・琉球新報社)

武藤杜夫、38歳。無駄のない細身の長身にスタイリッシュな風貌。私服姿は素足に革靴―。一歩間違えれば“チャラ男”にも見えるこの男の職業は、硬派も硬派の法務教官。沖縄少年院で日々、筋金入りの「非行少年」たちと向き合っている。自らも「落ちこぼれの烙印を押されていた」と語る彼の教育スタイル、そして生きざまに迫る。

 

■荒くれの中学時代、成績はオール1

―まずは「法務教官」って何でしょうか? どんな仕事をしているのか教えてください。

「『(教師+心理カウンセラー+警察官)÷3』と説明すると、近いイメージになるのではと思います。少年院は、非行を犯した未成年者に改善更生のための教育が必要だと判断された場合に、家庭裁判所の決定に基づいて強制的に収容する国立の教育機関。そこに勤務するのが、僕たち法務教官です」

 

「少年院の教育は、あいさつをする、そうじをする、時間を守るなど、社会生活に必要な習慣を身に付けさせる『生活指導』、社会人としての心構えを学ばせ、就労に必要な技術・資格を習得させる『職業指導』、読み書き・計算などの基礎的な学力を身に付けさせる『教科指導』、夜遊び、酒、タバコ、ドラッグなどで衰えた体を昼の世界で通用する身体に鍛え直させる『体育指導』などに分けられます」

 

「たくさんのカリキュラムがありますが、その根底にあって少年院の教育に命を吹き込んでいるのは、法務教官と子どもたちの『魂の交流』だと僕は考えています」

 

―法務教官と言えば国家公務員です。「落ちこぼれだった」と言われても想像できません。東京・池袋近辺のご出身ですが、どんな少年だったんですか?

「ぶっちゃけで言うと、中学時代は教室にほとんど入らず、髪を染めて、違反制服を着て、ポケットにナイフを忍ばせて、先生に猛反発していました。成績は3年間オール1。悪いことはたいがいやりました。今でも、口の悪い幼なじみに会うと『少年院にぶちこまれても不思議じゃなかった武藤が、少年院の先生やってるのが不思議でしょうがない』と驚かれます。僕も、その通りだと思います」

 

―学校がきらいになったきっかけは?

「小学校は6年間皆勤賞でした。やんちゃで人気者だったと思う。何がきっかけだったのかは未だにはっきりしませんが、中学に上がったとたん、規則でがんじがらめの狭い世界に閉じ込められたように感じて、息苦しくてしょうがなかった。『世の中そういうもんだ』って受け入れてる同級生が全員ばかに見えて、誰にも心が開けなくなった。父は医師、母は専業主婦。弟が2人いたけど、僕とは何もかも似ていない。一人だけ異質だと思って、孤独を感じていました。どこにも居場所がなかった。家も学校も地域も、刑務所みたいに感じていました」

 

―中学に行かずに、何をしていたんですか?

「ボクシングにひかれ、ジムに通っていました。湧き上がるエネルギーを抑えられなくて、けど、どうしたらいいのか分からなかった。殴ったり殴られたりすることで生きているリアリティーを感じていました」

 

「親にはとにかく叱られた。『学校に行きなさい』と。友達に迎えに来させたり、カウンセリングに行かされたり。でも、中2になるころには、あきらめて何も言わなくなった。教科書は使わないのでピカピカのままだったけど、社会科地図帳一冊だけはボロボロになっていました。自転車のかごに入れて家出ばかりしていたからです。家出するたびに、世界はこんなに広いんだとワクワクしたのを覚えています」

 

―高校時代は?

「学校はこりごりだったので高校には行かないと決めていたけど、面白そうな学校があることを知り、一浪して埼玉県の山奥にある『自由の森学園』に行った。珊瑚舎スコーレ(那覇市)代表の星野人史さんが当時、そこの校長でした。校則はなかったし、制服もなかった。中学校に比べたら楽しかったけど、やっぱり狭い教室での授業にはなじめず、学校近くの川で釣りをしたり、裏山でタヌキを追いかけたりして過ごしていました」

 

「家出もエスカレートし、ヒッチハイクで車を100台以上乗り継ぎ、福島、宮城、岩手、青森、山形、秋田、北海道まで行ったことも。駅や橋の下で寝ていると、知らない人に声を掛けられて、ご飯を食べさせてもらったり、家に泊めてもらったり、世の中のいろいろなことを教えてもらったり…。旅で出会うもの全てが僕の先生でした」

 

(聞き手・佐藤ひろこ)

 

【プロフィール】
武藤杜夫(むとう・もりお) 法務省沖縄少年院法務教官。1977年9月6日、東京都生まれ。中学生時代から非行が始まり、問題行動が深刻化。ボクシングジムに入り浸り、学校をボイコットしていたため、成績は3年間オール1。「落ちこぼれ」の烙印を押される。その後は、ヒッチハイクで全国を放浪するなど放浪児同然の生活を送っていたが、教育者としての使命に目覚めると、一転、独学による猛勉強を開始。一発合格で法務省に採用される。現在は、非行少年の矯正施設である少年院に、法務教官として勤務。元落ちこぼれの個性派教官として絶大な人気を誇り、独自の教育スタイルで多くの少年を更生に導いている。また、公務のかたわら、講演活動、執筆活動などにも精力的に取り組んでおり、その活躍の場は行政の枠を超えて広がっている。

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