自由の楽しさ”伝染”ーかんな農園の漢那宗貴さん

投稿日: 2017年02月07日 12:00 JST

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(写真・琉球新報社)

 

糸満市与座にある「かんな農園」で父や叔父と共にマンゴー、アテモヤ、ゴーヤーなどを栽培している漢那宗貴さん(33)。システムエンジニア(SE)から公務員、さらに農業へと転身した変わった経歴の持ち主だ。家族の幸せのためにと望んだはずの公務員時代、心身の不調に苦しみ、生き方を見詰め直した。農業の新たな可能性を発信する今は「毎日が楽しい」と、からりと笑う。

 

幼い頃から自他ともに認める明るい性格だ。カメラを向けられればわざと変な顔をしたり、おどけたポーズを取って見せたり。実をいうと、この記事を書いている記者は漢那さんと中学の同級生だ。同じクラスになったことはないが、人気者だった「ムーネー」の笑顔は印象に残っている。

 

漢那さんは大学を卒業後、県内企業でSEとして働いた。収入は十分で同僚にも恵まれていたが、結婚や子どもの誕生を機に将来を考えるようになった。残業は多いときに月180時間、出張で2週間に1回しか沖縄に帰れないこともあった。「僕にとって一番は家族」。家族との時間を増やすために公務員への転職を決意し、2013年に糸満市役所に採用された。

 

「自分はどこでもうまくやっていけると思っていた」。だが、役所に入って半年後、異変が現れた。昼休みを終えて職場へ戻ろうとすると、突然右耳が聞こえなくなった。ストレスから来る突発性難聴だった。

 

役所のIT全般を管理する部署に所属し、最上階の隅にある部屋で毎日仕事をこなした。男性職員だけの空間で自分だけ話が合わないと感じることもあった。他部署の人と交流がないわけではなく、パソコンの設定など役に立てば感謝もされる。それでも「どこか違う」「もっと直接人を喜ばせる仕事がしたい」と息苦しさが募っていた。

 

そして押し込めていたものは一気に決壊した。夜中は1時間おきに目が覚める。職場に向かっても駐車場に着いた途端引き返し、与座岳で読書をして過ごしたこともある。半年間の休職を経て復帰した後も、せきぜんそくに悩まされた。

 

休職中、父が定年後に始めたマンゴー畑を手伝ったことが転機となる。作物を育てる楽しさに触れ「なんてすがすがしいんだろう、なんて自由なんだろう」と心が解放されていくのが分かった。元公務員の父が実直に、まるで対話するように畑に向き合う姿にも突き動かされた。「父さんのマンゴーをもっと多くの人に食べてほしい」。14年10月、市役所を辞めた。幼い娘2人の将来を思えば迷いはなかった。「毎日ため息をつきながら家を出る。そんなお父さんの背中を見て、社会が面白いと思えるはずがない」

 

現在の名刺の肩書は「広報・営業など表向き代表」。結婚披露宴の余興映像を競う「にーびち映画祭inよみたん」で大賞を獲得した腕前を生かしてCM動画を制作したり、フェイスブックやブログ、インスタグラムを駆使したりして、ユーモラスに発信する。マーケティングを学んでネット販売に力を入れるほか、特別感を演出する贈答用の化粧箱や、近所の陶芸家と考案したマンゴー専用の皿など独自のブランド戦略でファンを増やしている。売り出し中のアテモヤでも専用の化粧箱を製作するため、ネットを通じたクラウドファンディングで資金を募る予定だ。「いつかカフェもやりたい」と夢は尽きない。

 

原動力は常に家族の存在だ。高校教諭をしている妻初美さん(32)と長女鈴(りん)ちゃん(6)、次女珠帆(たまほ)ちゃん(3)との生活がぶれない軸を支える。漢那さんは笑顔で、そして大真面目に繰り返す。「『楽しい! 嬉(うれ)しい! 幸せ!』。シンプルにこれを人生に求めている。そしてそれが自分と関わる人に“伝染”していけばうれしい」

 

かんな農園のキャラクター「マンゴ王」に添えられたせりふはこうだ。「おぬしはほんと甘いんじゃよ」。もちろん果実の甘さを指す言葉だが、こんなメッセージが続きそうだ。「でもそれでいいじゃないか、自分らしく生きて幸せなら」

 

文・大城周子
写真・大城直也

 

かんな・むねたか 1984年1月、糸満市出身。向陽高から琉球大学理学部数理科学科を経てシステムエンジニアに。2013年、糸満市役所へ転職したが心身の不調を機に14年10月退職。農家へ転身し、父と叔父と「かんな農園」で熱帯果樹や野菜を栽培している。

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