image
(写真・AFLO)

ジャイアントキリングという言葉が陳腐に思えるほど、とてつもない偉業だ。これまでも、格下が格上を倒した試合はあった。だが、そのほとんどが1試合での結果だ。レスターは、世界一過酷と呼ばれる英・プレミアリーグで、10カ月にも及ぶ長丁場を制しての優勝。価値がまったく違う。

 

戦前、レスターは降格候補に挙げられ、英ブックメーカーの優勝オッズはなんと5001倍。幻の怪獣「ネッシー」発見が501倍、宇宙人発見が1001倍だったから、その高倍率さがわかる。英国民の誰も予想だにしなかった、創設133年めの初優勝。超大穴の優勝に、ブックメーカー業界は23億円超の払戻金を準備しているという。

 

「レスターに優勝してほしい!」

 

シーズン終盤、敗戦後の監督たちはこうエールを贈った。やや情けなくも映るが、じつは大部分が本音だ。というのも、プレミアリーグでは「優勝トロフィは金で買え」という格言がある。潤沢な資金で各国のエースを買い漁り、優勝に漕ぎつけるわけだ。

 

事実、“ビッグ4”のマンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、チェルシー、アーセナルのオーナーらは、揃って世界有数の大富豪だ。1992年に名称を変えてからの23季で、このビッグ4が優勝を繰り返し、他チームは、1994〜1995年のブラックバーンのみ。

 

選手総年俸にしても、1位はマンUの約196億円。対してレスターは約49億円。今回の優勝は、「トロフィは金で買えない」ことの証明となった。

 

ラニエリ監督の手腕も見逃せない。現代サッカーは、バルセロナのように、つねにボールを保持するポゼッションサッカーが主流だが、レスターは違う。

 

ボールを奪うや手数をかけず、FWジェイミー・バーディー(29歳)、MFリヤド・マフレズ(25歳)に縦パスを通す。それがスイッチであるかのように、中盤の選手も一気にゴール前まで駆け上がる。ボールが奪われれば、今度は前線の選手が奪いにいき、中盤の選手は全速力で戻る。

 

この泥くさい堅守速攻を90分間つづけるわけだが、ここで重要となるのが、岡崎慎司(30歳)である。

 

「試合開始から走り回り、ボールを追いつづける。FWとしては優勝時までの5得点は物足りない数字だが、彼の献身性は数字には表れないほど重要だった。だからこそ監督は使いつづけ、サポーターも必要な選手と認めた。ともに今季からの“新戦力”、岡崎とラニエリ監督がレスターを変えたといっても過言ではない」(現地記者)

 

プレミアリーグ制覇で、来季チャンピオンズリーグに出場する“格安軍団”。8日の対エバートンのホーム最終戦では、番狂わせの立役者、岡崎をサポーターはひと際大きい拍手で迎えた。

 

(週刊FLASH 2016年5月24日号)

関連タグ: