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(写真・Getty Images)

もはや“生きる伝説”である。日本時間16日、イチロー(42)が日米通算安打を4257安打に伸ばし、ピート・ローズ(75)の持つメジャー通算最多安打を超えた。

 

日米合算のため、メジャーでは非公式記録となるが、今後、誰も到達できない域にまできている。米通算3000本安打も、あと20本である。

 

東京、大阪では3万部の号外が配られるなど、日本列島は祝福ムードに包まれた。こうなれば、「国民栄誉賞を贈るべき」との声が上がるのも必然か。

 

だがイチローは、かつて2度も同賞を辞退しているのだ。

 

一度めは、2001年のメジャー1年めに首位打者とリーグMVPを受賞したとき。当時の首相は、小泉純一郎氏(74)。大相撲五月場所の千秋楽の表彰式に出席し、怪我をおして優勝した横綱・貴乃花に対し、「痛みに耐えてよく頑張った。感動した!」と、名スピーチを披露。内閣支持率も約8割と、まさに絶頂期を迎えていた時期である。

 

2度めは2004年、262安打でメジャー最多安打を更新したとき。このときは、支持率が5割前後と、当初の勢いに陰りが見えはじめた小泉氏が、再度打診したが断わった。しかも、イチロー自ら首相官邸に電話してのことだった。

 

当時、首相秘書官で、現内閣官房参与の飯島勲氏(70)が、真相を明かす。

 

「本人から直接官邸に電話がありました。『鈴木さんからです』と取り次がれ、誰だかわからず電話を取ると、『鈴木一朗です』と名乗ったので、イチロー選手本人がかけてきたことがわかった。『大変名誉なお話ですが、現役の間は賞をいただくわけにはまいりません』と、きっぱり断わられました」

 

たしかに重みを持つ賞を受賞することで、縛られることは多い。イチローの「現役中は…」という気持ちもわかる。だが、長くイチローを取材しつづけるスポーツライターは、「断わる理由は別のところにある」と話す。

 

「大きく分けて3つ。まずは、自分を安売りしたくないということ。これまで22人、1団体が受賞しているため、常に一番を意識するイチローにとって、同じ賞に名を連ねたくない気持ちがある。

 

もうひとつは、日本球界への決別の意思表示。受賞すれば、帰国の理由づけにされるし、日本球界復帰をイヤがっている。マーリンズは終身契約をちらつかせているし、松井秀喜同様、引退後はメジャーの球団経営などを学びたいようだ。ましてや、松井より先に、帰国するのはプライドが許さない」

 

そして最後が、もっとも強く固辞する理由だという。

 

「それは、受賞が政治利用されるとわかっているから。同賞は首相によって表彰されるだけに、イチローが受賞となれば、大々的なセレモニーがおこなわれ、首相の好感度も当然アップする。

 

2013年5月、東京ドームの大観衆の前で審判役を務めた安倍晋三首相のもと、長嶋茂雄と松井がダブル受賞。その2カ月後の参院選で自公が圧勝し、悲願だったねじれ解消にひと役買う結果となった。イチローとしても、『それ見たことか』と思っているはず」

 

快挙達成後の会見で、「今回の記録に関しては冷めてるところがあった」と、コメントしたイチロー。孤高の天才打者は、時の権力者ですら「制御不能」の男なのだ。

(週刊FLASH 2016年7月5日号)

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