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(写真:JMPA)

「昨年は、このチームで(僅差でCSを逸し)負けて不完全燃焼に終わってしまったが、今年はたとえ優勝できへんでも、やりきったチームにしようや。そしてみんなで、『お疲れさん』と言えるチームにしようやないか!」

 

シーズン直前、黒田博樹(41)は真剣な表情で語気を強め、若いチームを鼓舞した。それを聞いた多くのナインは、「黒田さんは、今年限りの引退を覚悟しているんだ。全力を出し切って、燃え尽きて、野球人生の有終の美を飾ろうとしてるんだ」と、涙した。

 

そしてそれは、黒田を「優勝という花道で送り出そう」との共通認識になった瞬間でもあり、快進撃の原点だった。

 

「耐雪梅花麗」

 

梅の花は、寒い冬を耐え忍ぶことで、初春になればいちばん麗しく咲くという意味で、「苦しまずして栄光なし」という意味。

 

黒田は上宮高時代、西郷隆盛が詠んだ漢詩の一節を座右の銘とし、挫折続きの野球人生から這い上がってきた。梅の花のたとえは、メジャーでも浸透した。

 

ヤンキース時代、ジーターは「いいときも悪いときも、汗を流しつづけることは大切」と、心を打たれたという。

 

ジラルディ監督は梅の花の写真を探し、パソコンの壁紙にするなど、今もヤ軍のチーム精神を支える言葉となっている。

 

今年2月初旬のキャンプ。ミーティングで、各選手が好きな言葉を日替わりで披露する機会があったとき、黒田はこの言葉をナインに贈った。米国でも受け入れられたこの言葉が、彼を師として仰ぐナインたちに響かないわけがない。

 

以来、「耐えて勝つ」が合言葉となり、黒田の200勝めの記念Tシャツには、この言葉が綴られた。

 

黒田自身、今シーズンも満身創痍。朝起きればまずは体の状態を確認する。登板日には過去に痛めた首、肩などに入念に塩をすり込む。そして、「ゆきに たえて ばいか うるわし」を念じてマウンドへと向かう。

 

4連敗で巨人とのゲーム差が4.5に縮まった8月7日。ナインを前に、緒方監督が檄を飛ばした。

 

「今までやってきたことを信じて、ここまで頑張ってこれたのだから、いまさら変えることは何ひとつないぞ!」

 

そして、新井貴浩(39)がこう締めくくった。

 

「こういう経験ができるなんて嬉しいじゃないか! 最高だよ!」

 

その日、広島は劇的な逆転サヨナラを演じ、再び勢いを取り戻した。「耐雪梅花麗」――キーマンとなった三人三様、耐えに耐えて忍ぶものがあった。だからこそ、いちばん麗しい花が咲いたのだ。

(週刊FLASH 2016年9月27日、10月4日号)

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