(撮影:松蔭浩之)
「東京はすでに超高齢化社会に入っています。つまり、つえや車いすを必要とする方が増えていくんですね。ですから、2020年東京オリンピック・パラリンピックではパラリンピックのほうにも力を注ぎたい」
そう話すのは、鮮やかな“ゴールド・ジャケット”で颯爽と現れた小池百合子都知事(64)。東京都議会議員選挙を控え、分刻みのスケジュールを空けてまで都知事が「どうしても会いたかった」相手は、レスリングでオリンピック3連覇を果たし、世界選手権13連覇中で“霊長類最強女子”とも呼ばれる吉田沙保里選手(34)。ともに数々の“女性初”の偉業を成し遂げてきた2人が、「東京五輪をどのように盛り上げていくか」について語ってくれました。
吉田「私たち現役アスリートは、とにかく結果を残すことが第一ですが、そのうえでやっぱり必要なのは、周りの方々がどれだけ盛り上げてくれるかという、サポーターの力です。これまでのオリンピックはすべて『アウェー』でしたが、今度は『ホーム』。もちろんいい面が多いですが、プレッシャーが余計にかかると思うんです。いろんな日本語が直接耳に入ってしまうので、それが本番で心理的にどう作用するのか……」
小池「選手ならではの興味深い視点ですね。私たちからすると『ホームだから有利だろう』と考えていましたが、逆にマイナスの面もあるということですね」
吉田「ええ、個人差や競技の違いもあると思いますが、その雰囲気をモロに受けてしまう選手がいるかもしれないし、逆に『パワーになる』という選手もいると思います」
小池「テニスの伊達公子選手がかつて、日本での試合中に日本人選手が劣勢に立たされると、会場にため息が漏れることについて言及していました。観客も一体となるというのは、劣勢時は会場全体をネガティブな空気が支配してしまうということなんですね」
吉田「そこをどう切り替えて勝利できるかというのも、シミュレーションが必要なのかなあと」
小池「なるほど。私としては、これから東京大会への“気運”を醸成していきたいと思っています。たとえばボランティアが着るユニホームを、もっと『着たい!』と思ってもらえるクールなデザインに変えたり、さまざまな文化的なプログラムも考えています」
吉田「私はいろんな国でオリンピックに出場しましたが、本当に多くのボランティアに助けられて初めて、オリ・パラは成功するんです。国民の方が一人でも多く参加していただきたいと思います。みなさんが『チーム・ジャパン』の一員として協力していただくことで、外国の方も『日本に来てよかった!』と思ってもらえる東京オリ・パラになるんじゃないかと」
小池「そして、なにより吉田選手にはメダルを取ってもらわなきゃ。今日の私のジャケットのように『いちばんいい色のメダル』をね!」
吉田「はい、本当に。リオの雪辱を……」
小池「だって、『銀メダル目指します』っていう人いないでしょ?」
吉田「いないですね。やっぱり、『金メダル』ですよね!」
小池「その意気よ!レスリングは、吉田選手のようなスーパースターがいるから、そこに向かって素晴らしい選手が競い合って努力している。もう日本の“国技”といっても過言ではないほどです。ほかの競技でも女性がどんどん参加することで、多様性が高まるから、吉田選手はそのモデルとして先頭に立って走り続けてほしいですね」
吉田「そうですね。レスリングは後輩たちも“強い日本”の伝統を守ってくれています。ほかの競技もいっしょに、オールジャパンで力を合わせて頑張りたいですね」