禊体験 私編
(写真:明治神宮の杜)
2007年1月20日土曜日。
日本の暦では一年で一番寒いという「大寒」の日。
私はこの日の早朝、明治神宮の森にいました。
二年ぶりに大寒禊をするために。
白袴と白衣に着替え、神前に正座し振魂をし丹田を感じていきます。
道彦さんが祓詞を奏上し、参加者をお祓いしていった後、道彦さんはこういった。
「ぜひ、行とは何なのかを感じながらやってほしい。何も考えずにやるのは、ただ苦しく寒いだけの苦行になってしまう」
禊を体験するにも、自分との繋がりを感じながらおこなうことが重要なのですね。
明治神宮の森の中、凍える寒さの中、50人ほどで円陣を作り、全員で一生懸命に鳥船行事の船をこぐ。
足の裏に大地の冷たさが伝わってくる。気をぬくと寒さで身体の震えがとまらなくなってきているのを感じます。
「イェーエイ」
「エイーホー」
集中して丹田から懸命に声を出していく。
すると寒さが遠のいていく気がします。
さらに円陣からは皆の蒸気が沸き立っていくよう!
禊場にうつり、気合を入れて、声を出し木の桶に水を汲み全身にあびせかけていく。
清められていきますように! と意図してただただ水を被っていく。
冷たい水で装束は濡れ、その水の重さや冷たさが肌にくっついていきます。
再び鳥船行事で船をこぐ。
古代、はるかな昔、海原で禊をした後、陸をめざして帰路についたように。
そして最後に全員で「おめでとう」と祝福したあと、着替えにもどる。
林の中、濡れた装束に木枯らしがふきつける。
着替えをしようとしても、寒さで凍えた手の指が震えて、装束を掴むのにもまごつくのです。
そして着替えた後は、全員で明治神宮の神前に参拝した。
不思議なことに境内を白衣と袴だけで歩いても寒さは感じない。
玉砂利を踏みしめながら歓びが全身に湧いてくる。
「直会(なおらい)」で頂いたあたたかい甘酒が、身体の芯に染みていく。みんな笑顔で輝いている。
その日、大学のクラスメイトの女の子が4人参加していました。
彼女たちが「楽しかったー」「楽しかったね」「禊ハイになるよね」「ランナーズハイみたい」と、降り始めた初雪に触れようと勢いよくジャンプしている。
無邪気で明るく、健気なエッセンスを輝かせている彼女たちが愛らしい。私自身にも、まるで母のような慈しみと喜びが身体中に満ち溢れていた気がします。
CALLING 召命
神道は「命の輝き」を謳いますが、もともと私がそうだったわけでは決してありません。
生きることに自信がなく、恐れも強く、不安を感じ、孤独も経験してきました。
だからこそ、この禊による「輝き」を味わった神聖なる感動は、あまりにも強烈なインパクトを私に与えてくれたのです。
今、思うと、“人生色々“あって学び始めた「神道」ですが、私は実は、ご先祖やご先祖がお祀りしていた神さまに呼ばれていたんだな~って感じています。
「CALLING 召命」だったんだなと。
その為に、これまでの経験があり、苦しみも悲しみも出会いも別れも、さまざまな経験をし、その経験から学びと人間の成長がもたらされました。
だからきっと、女性では中々なれない神職になれたのではないかと思います。
高知の神職になった後で、私は目にすることになりました。
家系図に「子孫代々、このお宮を守っていくこと。それを子孫に伝えるべし」と書いてあるのを。
・・・続く。
川村一代
「女性自身」記者として活動の傍ら代替療法と「癒し」をテーマに
ヒーリング特集を執筆。
2001年『myselfhelp 困ったときに読んでみて』(愛育社刊)を上梓。
2003年國學院大學神道文化学部入学。専攻は神道と宗教学とスピリチュアリティ。同年米国のヒーリング単科大学BBSH(Barbara Brennan School Of Healing)入学。
2007年3月國學院大學卒業。神職資格授与。6月BBSH卒業。
現在は記者活動と、高知県の権禰宜を務めている。