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フィレンツェもここに来てすっかり秋模様です。特に、夜は風が涼しく過ごしやすい日々です。

さて本日取り上げたいニュースは映画「ハリー・ポッター」シリーズのハーマイオニー役で知られる女優のエマ・ワトソン氏が、9月20日に国連本部で行った性差別の撤廃を訴えた演説です。この演説はフェミニズムの新境地を切り開いたとも言われ、世界各地で大きな反響を呼んでいます。

まずワトソン氏は、フェミニズムを「男女は性別に関係なく、同等の権利や機会を与えられるべきという信念であり、それは性別に関する政治的、経済的、社会的な平等を実現しようとする考え方である」と定義してします。

次に彼女は「このフェミニズムに関する議論自体は長年行われてきたものの、現実社会での実質的な改善は不十分である。それには、既存のフェミニズム運動にも原因の一端がある」と鋭く指摘しています。現状ではフェミニズムという言葉に対する根強いアレルギーがみられ、それは既存の「フェミニズム運動」が過激で対立的で男性に嫌悪感を抱いているというネガティブな印象を与えてきたという反省点があると述べています。

そこでワトソン氏は、男女不平等的な現状を是正していくためには女性だけではなく、男性を含む社会構成員全員の参加が不可欠であると訴えました。それは一言でいえば「開かれた融和的なフェミニズム」ともいえるもので、性差別問題を女性問題に限定せず人権問題として捉え直し、男女が歩調を合わせながら、女性の地位向上に取り組む必要性を提唱したものともいえます。

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ではこの性差別問題、日本ではどういう状況なのでしょうか。世界経済フォーラムが毎年公表している「男女平等(ジェンダー・ギャップ)指数順位2013年版」によると、日本の男女格差指数の順位は136カ国中105位。世界的な基準からしてかなり深刻な状況であることが一目でわかります。中でも「教育」(91位)、「経済活動への参加と機会」(104位)、「政治への関与」(118位)の順位が極めて低い。先般の東京都議会での女性蔑視ヤジ問題に象徴されるように、数字には表れない男尊女卑の文化が依然として根強く残っているというのも否定できない実情であります。

一方、そうしたなかで、明るい兆しがみられ始めているのも事実です。たとえば安倍政権は「女性の輝く社会の実現」を中心政策の一つと掲げ、「女性の地位向上」や「女性の活用」に向けての様々な政策を積極的に打ち出しています。今年9月の内閣改造でも、閣僚に5人の女性が起用されたことが話題を呼び、女性の内閣支持率が上昇したという、新聞の世論調査もありました。

実際、安倍政権にとって女性の労働環境改善の成否は死活問題です。日本では人口減少や少子高齢化に進むなか、労働力人口が急激に減少しています。そこで安倍政権は経済成長を支える切り札として、人口の約半分を占める女性の就業率を高めることに注目しているわけです。

女性が幸せになれない国は、真の先進国とはいえません。性差別問題は「男性対女性」という短絡的な対立構図ではなく「偏見を持つ者に対する持たない者の闘い」であり、よってそれは「女性だけの問題」ではなく「みんなの問題」として捉え直すべき時期に来ているといえます。

たとえば妻に対する夫の態度、娘に対する父の態度、母に対する息子の態度など、男性が身近なところから心掛けや行動を起こしていくことで、この問題は改善に向けて前進するはずです。そうした大切なことを気付かせてくれたワトソン氏の演説は称賛に値するのではないでしょうか。

 


ジョン・キム 吉本ばなな 「ジョンとばななの幸せって何ですか」(光文社刊・本体1,000円+税)

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吉本ばなな

1964年東京生まれ。’87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。’88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、’89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、’95年『アムリタ』で紫式部文学賞、’00年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞をそれぞれ受賞。海外でも多くの賞を受賞し、作品は30カ国以上で翻訳・出版されている。近著に『鳥たち』(集英社刊)、『ふなふな船橋』(朝日新聞出版社刊)など。