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熊本県を震源とする地震が4月14日から立て続けに発生し、九州各地で甚大な被害が出ました。そうしたなか日本全国にとどまらず世界各地から支援の輪が。なかでも民泊仲介サイトの「Airbnb」が被災者向けに無償で部屋を貸し出す取り組みを始めたことについて、FacebookなどSNS上で話題を呼んでいます。その仕組みは簡単で、同社の緊急宿泊場所ページから被災者は「泊まる場所を探しています」を選択。ホストは「私の部屋を無料で提供できます」を選択すれば、マッチングが成立するというもの。まだ規模的には大きいとは言えませんが、避難先を探している人にとってはとても大切な情報になると思います。

同社のこうした取り組みは12年10月に起きたハリケーン・サンディの災害から始まったと言われています。当時、アメリカの東海岸沿岸部一帯が壊滅的な打撃を受け、何千人の人々が家を失ったことを見るに見かねたシェルという女性が、NY市内の自宅のロフトを被災者に無料で開放したのです。それが反響を呼び、NYだけで1400人が被災者に対して自宅を開放し、食事などを提供したようです。その後もサンディエゴの山火事やコロラドの大洪水、最近では昨年11月にフランスで起きたパリ同時多発テロ事件でも同様の取り組みが行われたとのことです。

以前このコラムでも取りあげたことがありますが、Airbnbはいわゆる「共有経済(シェアリング・エコノミー)」の典型的な形です。共有経済というのは、1つの商品を複数の人々が分け合って使う形態の経済を指します。必要なときに他の人のモノを借りて使ったり、自分が使っていないモノを一時的に貸し出したりすることで、そのモノが持つ価値が大きくなっていく仕組みです。これは伝統的な経済からすれば、以下の点で大きなパラダイムシフトにあたります。

第1に共有経済の台頭により、所有するだけでなく共有することの価値が生まれました。第2に資源を枯渇させるのではなく、資源を節約することの価値に気づきました。第3に利潤を追求することから、価値を追求するようになりました。第4に競争を通じて勝利を収めるより、信頼を通じて共存共栄を実現することに重きを置くようになりました。そして第5に過剰な消費から協力的消費を心がけることにより、地球環境への負担を小さくすることが重要視されるようになりました。

こうした共有経済的活動にはスマートフォンやSNSなどデジタル技術が使われ、愛と感謝の交換が行われやすくなっています。また宿泊の共有といった場所の共有だけでなく、モノの共有、車など交通便の共有、知識の共有、スキルの共有まで多岐にわたって展開されています。そしていまアメリカでは、こうした共有経済型サービスを通じて災難・災害による被害を減らす方策が積極的に議論されています。具体的には先ほど述べた宿泊の共有から災害情報の集約や提供、仕事が必要な人と労働者が必要な人をつなげるサービスや無線LANの開放などがテーマになっています。

これからの時代、スマートフォンやSNSの普及によって情報を簡単に共有できるようになり、人々がよりつながり合い、助け合えるようになっていくでしょう。今回のような災害が再び起きる可能性は十分あります。だからこそ中央政府と地方政府、産業界や学界、そしてNPOなどが協力しあい、共有経済の災害対応を形にする本格的議論が必要になってきていると思います。そうした情報やモノの共有が、最終的に被災地の人々の心や愛の共有を生みだしてくれるはずですから。

 

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