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悩める息子12歳の相談を受けました。1月の誕生日会に友人3名、ウイリアム、アレクサンドル、ロマンを招きたいのですが、この3人、仲が悪いのです。「ウイリアムはロマンが嫌いで、アレクサンドルはウイリアムが嫌いで、ロマンはアレクサンドルが嫌いなんだよ。どうしてぼくはこんな連中にしか好かれないのだろう? ぼくの誕生日なのにぼくが一番悩むなんておかしくない?」。呼びたくない人は呼ばなければいいじゃない、と提案しました。すると、「でも、みんなぼくを誕生日に招いてくれたんだよ。ぼくが呼ばないと失礼じゃない? それにぼくが呼ばないと誰が彼らを招くの? かわいそうでしょ? ぼくはダメな子たちの救世主なんだけど、ぼくだって誰かに救ってほしいよ。だって、彼らは本当にわがままで自分勝手で王様体質なんだから」ですって。

 

どうやら息子はちょっとマゾヒズムの気があるようで、この子たちが遊びにくると言われるままに相手をしているのです。これでは疲れてしまいます。嫌だったら、逆らえばいいじゃない。やだって言わないとだめだよ、と教えてあげるのですが、「わかってるけど、彼らにはぼくしかいないんだよ。あの連中とちゃんと向き合えるのは。ぼくが彼らを切り捨てたらどうなる? あの3人、人生に絶望しかねないよ」というので、笑いました。

 

結局、この3人のことが大好きなんです。アレクサンドルは呼ばない、と言ったその次の瞬間には、「ロマンを呼ぶのをやめよう」と言い、その次の瞬間には「ウイリアムだけはやめとく」と独り言を言っておりますが、私の勘では結局、3人を全員招くことになる気がしております。人間は悩みながら学んでいく生き物です。どんな勉強よりも友人関係の苦悩こそが一番の学習かもしれませんね。見守りたいと思います(笑)。

 

さて、今日は辻家の朝食、スクランブルエッグ丼をご紹介いたしましょう。フランスのスクランブルエッグ、「ウフ・ブルイエ」を卵丼のようなものにアレンジしたところ、卵嫌いの息子がこれだけは食べるようになったという一品です。

 

材料:だいたい2人分。マッシュルーム7個、玉ねぎ半個、バター10g、卵4個、生クリーム中さじ1、だし醤油小さじ1、シブレット(万能ねぎ)適量、塩・こしょう、ご飯。

 

マッシュルームは厚めにスライス、玉ねぎは薄くスライスして、バターで炒めておきます。ねぎは小口切りにしておきましょう。さて、大きめのフライパンを使いますが、もしあれば鍋とフライパンの中間のような深さがあると便利です。一度沸騰させ、7割くらいの火力に弱めます。沸騰の手前くらいの温度を維持してください。アルミのボウルに卵3個を割り、泡だて器でよく混ぜたら、フライパンの中に底をつけ、湯煎しながら泡だて器で卵を混ぜ続けます。生クリームとだし醤油を入れます。ゴムベラでもいいのですが、ぼくは泡だて器で生クリームを作るみたいに攪拌します。底の方から少しずつ固まっていきますよ。温度が高いと底がだまになるので、その場合はボウルをフライパンから外してください。湯煎したり外したりしながら5~6分混ぜていると、とろとろの、ビロード状態の極上スクランブルエッグが出来ます。これがフランス式のスクランブルエッグです。そしたら火を止め、ここで塩・こしょうをしっかりします。残した1個の卵の卵黄だけ入れて、余熱で絡めます。こうすることでビロードのような濃厚な食感が出ます。同時にここでシブレットの小口切りも投入。器にご飯を盛り、スクランブルエッグと先のマッシュルームバター炒めを添えたら、スクランブルエッグ丼の完成です。お子さんたちの大好物になること請け合いですぞ。大人はパンでどうぞ。

 

ボナペティ!

 

エッセイで紹介されたレシピは、
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