鉱物の硬さを表す基準が「モース硬度」と呼ばれる数値であることは、今まで時々お話ししていますので、もう皆様もご存知でしょう。「モース硬度」は1から10までの数値が設定されていて、ダイアモンドが最も硬く、そのモース硬度は10というわけです。でも、この硬さというのは、鉱物の中で一番硬いというばかりではなく、地球上にあるすべてのものの中でも、これ以上硬いものというのは存在しないのです。ですから、鋼鉄を切断するソーの刃にもダイアモンドが利用されていますし、もっと身近では街のガラス屋さんのガラス切りにもダイアモンドが使われています。ただし、ここで誤解しないようにしたいのは、モース硬度の硬さというのは、他のものと摺り合わした場合に他に勝る硬さであるという意味です。ハンマーなどで叩く衝撃に対しては、ダイアモンドは強くありませんから、「あらゆるものより硬い」と思いこんで乱暴な扱いをすると大変なことになる場合があるのですよね。

Stone_080304 もうひとつ、ダイアモンドには鉱物としてのユニークな特徴があります。それは純粋な単一の元素からできているということです。アルファベットと数字で表す鉱物の化学式を見れば一目瞭然。大多数の鉱物が化合物であるのに対し、ダイアモンドはまさに単純に「C」のみで表される鉱物なのです。「C」は「炭素」です。そうです、ダイアモンドというのは炭素だけからできている単純明快な鉱物なのです。専門的には、このような鉱物は「元素鉱物」といわれ、鉱物全体の中では少数派です。

繰り返しますが、ダイアモンドの正体は「炭素」です。ところが、ダイヤモンドとは似ても似つかない「石墨(せきぼく)」という鉱物の正体がやはり「炭素」なのです。しかも、モース硬度はダイアモンドの「10」と対極をなす「1」という軟らかさです。同じ「炭素」からできている元素鉱物がどうしてこうも違った鉱物になったのでしょう。それは両鉱物の生成プロセスの違いにあります。

「石墨」は、例えば石灰岩などの堆積岩が地中で変成作用を受けたり、熱水と反応したときに生成されるといわれています。でも、ダイアモンドの場合はそれとはまったく異なった環境下での生成プロセスなのです。ダイアモンドが生成される場所は、地表から150km~250km下の地球深部で、そこは1,100~1,500℃という高温、しかも45万気圧という過酷な環境です。ちょうど真っ赤に燃える陶磁器を焼く窯の中で、なんと、9.4cm四方の小さな面に約4,000トンの重力がかかっている状態と同じだと言われています。

それが、ある日突然、秒速340メートルという音速に近いスピードで地表に吹き上げられたのです。この吹き上げられたスピードというのが重要で、もし、じわじわとゆっくり地表に押し上げられてきたとすると、ダイアモンドは変成し、単なる「石墨」に変わってしまったというのです。このように同じ「炭素」のみでできているのに、「ダイアモンド」と「石墨」という違いが生じるのは、炭素原子の結合状態が違うためです。「石墨」の場合は、炭素が環の状態で結合し、それが層をなしています。環の結合は強くても、層状の場合は層と層の間の結合がゆるいため、硬度が低くなってしまいます。一方、ダイアモンドの場合は、全体が三次元的にしっかり結合しているので、理想的とも言える堅固な硬度になるのです。

こうしてダイアモンドを見ていきますと、「灯台もと暗し」で、知っているようで知らなかった世界がどんどん出現してくるのですよね。次回にまた、鉱物としてのダイアモンドのお話しをもう少しいたしましょう。

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