すでにお話ししたように、人類がダイアモンドを発見したのは紀元前10世紀から5世紀とされ、ダイアモンドと人類の関わりには大変古い歴史があります。ところが、今日のような素晴らしい輝きを持つダイアモンドが誕生したのは、ダイアモンドのカッティングという高度な技術が確立されてからのこと。初歩的なカッティングは17世紀には行われていましたが、光学的に完成度の高いカッティングが確立されたのは今からわずか100年ほど前です。では、カットの技術が未熟だった頃の、あまり美しいとは言えないダイアモンドが、いったいどうして、人々の心を惹きつけたのでしょうか?

それはまず「硬い」ということです。大昔の人々は、今日のモース硬度のように鉱物の硬さを数値で表す尺度もなければ、この石が地球上のすべての物質の中で最も硬いという知識さえなかったはずですよね。でも、ダイアモンドが「ともかく硬い」ということだけは分かっていたのです。このことはダイアモンドの語源に遡るとより明快になります。

古代ローマ時代には「鉄」をはじめとした硬いものを「アダマス(adamas)」と呼んでいました。「adamas」の「a」は「~でない」という否定辞で、「damas」は「征服する」という意味。つまり「アマダス」とは「征服しがたいほど硬い」ということです。おもしろいことに、これが次第にダイアモンドを指す言葉となったというのです。その言葉の変遷は「adamas」の「a」が消え、語尾が変化し、「アダマス」は「ダイアマス」を経て「ダイアモンド」に至ったとされています。

つまり、見た目にはそれほど魅力のない石であったダイアモンドですが、その際だった硬さが人々の心を惹きつけ、最高の魔力を感じさせました。実際、中世ヨーロッパでは、強力な護符として位の高い人々の間で尊ばれ、身につけられていたのです。戦いの勝利、富と権力の実現、厄払い、精神の安定、夫婦の絆といった願いが託されていたようです。

一方、今日的なパワーストーンとしてのダイアモンドには、困難を跳ね返し勝利する不屈の精神を養ってくれる。揺るぎない愛を育んで、永遠の信頼を与えてくれる。潜在能力を引き出し才能を開花させてくれるといったパワーがあるとされています。前回ご紹介した「4C」に象徴されるように、今日のダイアモンドは、見た目の美しさが競われる「宝石」としての側面ばかりが強調されがちです。でも実は、長い歴史のほとんどの期間は、護符としての効力が優先されていたということに気をとめておく必要があるのではないでしょうか。

ここでもうひとつ、とっておきのお話しをいたしましょう。

Stone_080324ダイアモンドの原石の中には二つのピラミッドの底と底を合わせたような「ソーヤブル」と呼ばれる正八面体のダイアモンドがあることをご存知でしょうか? ほとんどのダイアモンド原石は前回写真でご紹介したようなジャガイモのような形をしていますが、この正八面体の原石は研磨もしていないのに透明度が高く、角度によってキラッと輝きます。正八面体のダイアモンドが採掘される量は、宝石品質の原石の10~15%と言われていますから、極めて少ないと言えますね。

でも、このダイア原石にはパワーストーンとしてのパワーが満ちていると私は確信しています。現に、中世ヨーロッパでは、戦う男たちのお守りとして、女性たちは自分の夫や恋人に持たせたという言い伝えがあります。また、正八面体という立体には「プラトンの立体」にも暗示されるように、強力な生命力と行動力を与える力があると同時に、どんな困難にもめげずに生き抜き、成功をつかむパワーを与えてくれる力があります。

したがって、最近、悪いことが重なって、壁に突き当たっている方や、恋を含めて人間関係で悩んでいる方。具体的な目標に向かって力強く歩んでいくパワーが欲しい方には、うってつけのパワーストーンと言えますね。

(写真は正八面体ダイア原石がセットされたモイラジュエリー)

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