「大嘗宮の儀」の前半にあたる『悠紀殿供饌の儀』(大嘗宮・幄舎脇/写真提供:宮内庁) 画像を見る

天皇陛下の即位に伴う皇室行事「大嘗祭」の中心的儀式「大嘗宮の儀」は、11月14日の午後6時半ごろに始まった。気温は10度以下まで冷え込み、篝火の薪が燃えるパチパチという音だけが響いていた。張りつめた空気のなかで、儀式は粛々と執り行われた。

 

「まるで大都会の真ん中に時代を超えた異空間が現れたような感覚にとらわれました。篝火の明かりに神殿に居並ぶ衣冠束帯の人たちの姿が浮かび上がり、きわめて美しい幽玄な世界でした」(参列者)

 

滞りなく儀式は進み、翌15日の午前3時15分ごろに終了した。雅子さまが皇居正門から車でお出になられたのは午前4時15分ごろだったが、沿道に集まった人々や報道陣にホッとしたような笑顔をお見せになって、お住まいの赤坂御所に戻られた。宮内庁関係者が明かす。

 

「非常に重要な祭祀を終えられた両陛下は、まず周囲に労いの言葉をかけられていました」

 

大嘗宮の儀は、新たに即位した天皇が国と国民の安寧と五穀豊穣を祈る一世一代の儀式。大小30以上の建物からなる大嘗宮の中心をなす東の神殿「悠紀殿(ゆきでん)」と西の神殿「主基殿(すきでん)」で執り行われる。

 

皇族方だけではなく、安倍晋三首相ら三権の長や各都道府県の知事、著名人など510人が参列した。

 

「実は、雅子さまのご両親、小和田恒さんと優美子さんも参列していました。前半にあたる『悠紀殿供饌(きょうせん)の儀』のみの出席でしたが、3時間にわたる長い儀式は、80代の小和田夫妻にはかなり負担が大きかったはずです。それでも、皇后となられた雅子さまの力になりたいという思いで参列したのでしょう」(前出・皇室担当記者)

 

大嘗祭の内容は明かされていない部分も多いため“秘儀”ともいわれる。はたしてどのような儀式が行われたのだろうか。皇室に詳しい京都産業大学准教授の久禮旦雄さんに解説してもらった。

 

「両陛下をはじめとする皇族方は、まず『廻立殿(かいりゅうでん)』で身を清められます。天皇陛下は最も神聖といわれる純白の『御祭服(ごさいふく)』をお召しになり、悠紀殿に入られます。神殿に入るのは、陛下のほかには陪膳采女(ばいぜんのうめね)と後取采女(しんどりのうめね)と呼ばれる女性2人だけです」

 

そこから3時間にも及ぶ儀式が始まるのだという。

 

「皇后陛下は『帳殿』と呼ばれる建物に入られ、天皇陛下がいらっしゃる悠紀殿のほうを向いて拝礼されます。その後、廻立殿へと戻られます。そして天皇陛下は『悠紀殿供饌の儀』に移られます。自ら、米や粟、海産物や果物などのお供え物『神饌(しんせん)』を、一つひとつ柏の葉でできたお皿に盛り付けをされます。神饌は32皿あって、すべてを盛り付けるために500以上の所作が決められていますので、非常に長い時間が必要なのです。盛り付けが終わると陛下は天下安寧を祈る『御告文』を読まれ、その後、『直会(なおらい)』としてご自身も神饌をお召し上がりになります」

 

東日本を示す悠紀殿での儀式が終わると、午前0時半から西日本を示す主基殿で同じ所作による儀式が繰り返される。人の目が届かない神殿の中とはいえ、一世一代の儀式で手順を間違えるわけにはいかない。500以上もある所作を覚えるだけでもたいへんな準備が必要であることがわかる。おそばにいらした雅子さまも儀式が終わるまで気を張りつめていらしたことだろう。

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