「日本と日本人が元気をなくして久しいといわれているなかで、どうしても伝えたいことがあったんです。同じ団塊の世代の仲間や美容を志す若い人たち、そして今、いろいろな困難に直面して足踏みしている人たちに」

初めての自伝的小説『東京シャンプーボーイ』執筆のきっかけを話し始めたのはトニータナカさん(63)。トニータナカさんといえば、日本のメイクアップアーティストの先駆けであり、テレビで公開メイクをして女性たちの集めた元祖。また、現在では多くの美容学校生を指導する立場でもある。トニーさんは、美容に目覚めたときのことをこう話す。

「5歳のとき、立川の米軍基地で初めてアメリカンスタイルの美容室と遭遇したときの、体内が打ち震えるほどの興奮は、半世紀以上が過ぎた今も忘れません」

トニーさんは9歳にして地元の美容室で働き始める。ピチピチのズボン姿の小学生がタオルを巻いたりする姿に、同級生らは『シスターボーイ』と陰口をたたくが、本人はまったく気にしなかった。それは夢を持つ者の強さだろう。

大人たちに内緒で、自宅の風呂で自らを実験台にして腕を磨いていたトニーさん。シャンプーボーイの誕生だった。そのころ、すでにセレブの指名客も付いていたというから驚きだ。トニーさん、10歳のときだった。

「僕をここまで成長させてくれたのは、夢の力です。だから、いちばん言いたかったのは『あきらめないで!』ということ。それは、去年3月の東日本大震災以降、いろいろと大変な思いをしている人たちにも伝えたいことです」

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