4月16日朝に発生した、韓国のフェリー・セウォル号の沈没事故。19日夜現在、死者・行方不明者併せて302人の大惨事となった。乗客の7割、325人が済州島へ修学旅行に向かう檀園高校の2年生だった。
本誌記者が珍島に着いたのは、事故から丸2日経った18日早朝だった。だが、取材を始めた記者を待っていたのは、行方不明者の家族たちの罵声だった。
「ウソばかり書きやがって! 誰がお前たちの取材になど答えるものか!」
「マスコミは政府とグルなんだろう!」
いっこうに進まぬ韓国政府の救助活動を憤る家族たち。今回の事故では、事故直後から“船内からのSOS”と称するメッセージが、不明者の家族のもとに届き、韓国警察庁が、これらをすべて“偽メッセージ”と断定する騒ぎになっている。 だが、娘が行方不明だと話す母親は、本誌記者にこう訴えた。
「出発当日、娘から『(霧で)まだ出発しない。行かなくていいかも』と携帯にカカオトークでメッセージが届いたんです。16日の朝9時には、『船が傾いてきた。すごく怖い。ウソじゃない』というメッセージが来て……。
そして、事故からまる1日経った17日の朝10時ごろ、またもや娘からメッセージが来たんです。『すごく怖い。寒い。吐き気がする。ママ、助けて! いま、(船内の)ゲームコーナーにいる』と。友達と先生の名前も挙げて、一緒にいると伝えてきました。あれは絶対に本物です。事故前からずっとメッセージが来ているのに、イタズラのはずがないでしょう? 最後、すぐに電話をかけたら、呼び出し音も鳴ったのです。でもその後、圏外に……。娘は絶対に生きています。なのに、政府はすでに生存者がいないことにしたいんですよ!」
周りで話を聞いていた多くの家族がうなずいた。わが子は絶対に、船の中で生きている。なぜ政府はこの“わが子の叫び”を無視するのか――。これこそが、家族たちを覆う“不信感”の正体だった。
息子が行方不明という50代の男性は、「せめて息子の遺体と会いたい。遺体が潮に流されないように、船の周りに網を張ってほしい」と担当者に気丈に訴えていた――。