’67年から’82年にかけて、TBSラジオをキーステーションに、全国で放送されていた『パックインミュージック』は、ラジオ深夜放送の草分けとして大人気だった。その中で火曜日深夜、のちに水曜深夜を担当したのが、「キンキン」こと愛川欽也だ。

 番組の台本は、CMの時間だけがかいてあって、あとは白紙の進行表だけだったという。

「俺の場合、番組の名前に『ミュージック』ってついてるのに、音楽もかけない。『音楽を聴きたいやつは、(裏番組だった)糸居五郎さんのオールナイトニッポンを聴いてくれ』って言ってた(笑)」

 音楽をかけず、リスナーからのはがきや手紙でできあがっていたキンキンの『パック』には、伝説の『赤坂散歩事件』というのがある。キンキンが感度の高いリスナーたちと直接遭遇した、その事件とは?

「あるときの放送で『これから外に出て、青山通りを散歩する。近所で聴いてるヤツはついて来い!』って呼びかけた。当時、中継車で外から放送できるようになったこともあって、それを試そうって気持ちもあってね。でも、打ち合わせもしてなかったから、スタッフは大あわて」

 人気番組とはいえ、深夜放送の呼びかけにどれだけの人が来るのか……と思ったら、若者がぞろぞろと集まって、ついてきた。

「意外と、近所に住んでたんだね(笑)。そうしたら、交番から警官が飛んできて『これは無届けデモになるから、ダメ』と言うんだ。『こっちはラジオ番組中に、散歩してひとり言を言ってるだけだ』って説明しても、とにかくダメだと。そのやりとりも全部、生放送されてるんだよね。結局、自主解散ということにして、曲をかけている間にスタジオに戻って『ただいま〜』と続きを放送した。ディレクターは大変だったと思うよ」