人気の隔週連載《中山秀征の語り合いたい人》。今回は、’11年に発覚した不倫・三角関係問題で一躍時の人となったジャーナリストの山路徹さん(53)が登場。ここでは、ジャーナリストとしての思いを語ってくれた。

中山秀征「戦場取材は特殊な仕事ですよね。戦場は何度も行きたくなる依存性があるという話をよく聞きますが、いかがですか」

山路徹「世界中で起きている戦争・紛争に1度関わると、何かが起きるたびにやはり気になるんです。そこに自分が関わっていないことがストレスになる。戦場は人間の醜さから素晴らしさまで両極端な部分が濃縮されています。ミサイル攻撃で体がバラバラになった罪もない子どもたちを見て『なんてひどいことをするんだろう』と思う一方で、命がけで瀕死の人を助けようとする人もいる。生と死が隣り合わせの究極の現場だからこそドラマチックなことが起き、自分の感情がかき混ぜられて感動するんです」

中山「戦場も日本で起きたスキャンダルも、山路さんの周りで起きていることすべてがキレイゴトではないんですね。人間の本質をリアルに感じられていますよね」

山路「人間はすごくキレイなものとすごく汚いものが混然一体となって同居しているんです。だからこそ人間はすごいなとも思いますしね」

中山「仕事へのモチベーションは?」

山路「画面を通して伝わる戦争の情報は、リアリティがない。でも、実際には僕らと同じ人間が生きていて、生活の営みがあり、何の理由もなく殺されていく人が大勢いる。だから僕はフレームの外にいる人々の様子を伝えたいんです。戦争の悲惨さを身近に感じる人が多くなれば、よくも悪くも平和な今の日本の戦争抑止力にもなります。戦争に対して鈍感になると『日本も戦争に自衛隊を派遣したほうがいい』という意見に反対する理由もなくなる。戦争賛同者がどんどん拡大・蔓延していってしまう。だから僕らの仕事は非常に重要な役割を担っていると自覚しています」

中山「戦争の実態が見えなくなっているからこそ、志願兵を募集しているイスラム国に参加しようとする若者も出てくるんですね」

山路「戦争の当事者たちもメディアを利用して、プロモーション活動をしています。カッコイイ兵士がたちが登場する映画のような呼び込み映像では、都合の悪いことはすべて排除されている。戦争では弾がかすれば血が噴き出し痛みを感じ、ミサイルが命中すれば当然死にます。戦争にリアリティを感じないまま、自分探しの一環で、イスラム国に行こうとした若者が実際にいた。それが日本の今の姿なんです」

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