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コロナ禍によって劇場は客数を制限され、超大作は軒並み公開となり、映画業界にとってかつてない試練の年となった2020年。我々の映画との向き合い方も、また大きな転換点を迎えようとしている。

 

昨今、サブスクリプションビデオオンデマンド(以下SVOD)と呼ばれる定額制動画配信サービスで配信されるまでのスパンが短くなっているのだ。

 

たとえば7月3日に公開された長澤まさみ(33)の主演映画『マザー』は11月3日に、8月21日に公開された洋画『ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー』は12月21日にNetflixで独占配信を開始。ともにDVDやBlu-rayといったフィジカルメディア(物理的なメディア)での発売はおろか、配信サイトでの単品レンタルも行われていない。そんな状況下での“サブスク解禁”には、多くの映像ファンが驚きを隠せずにいた。

 

単純な比較にはならないが、今年1月24日に公開された蒼井優(35)と高橋一生(40)の出演映画『ロマンスドール』のNetflix配信日が7月24日だったことを考えると、この1年でスパンが短くなっていることがうかがえる。

 

着実に早まる“サブスク解禁”について、『ネットフリックスの時代』(講談社刊)といった著作も持つITジャーナリストの西田宗千佳氏に話を聞いた。まず、昨年9月からわずか1年で200万人もの新規会員(日本)を獲得し、計500万人もの会員数を誇るNetflixの躍進について、西田氏は「コロナ禍は前提」としつつ次のように語る。

 

「日本で伸びた要因としてはコンテンツが揃ってきたことと、認知が揃ったという両方があります。サービス開始当初の15年は洋ドラや映画ファンにしか知られてなかったが、昨年『全裸監督』が配信されたあたりから、日本中の人々がNetflixのことを知るようになった。そのタイミングで、コロナ禍が今年きて多くの人が見るものを探していた時に、コストと内容的にも見合っていたのがNetflixに代表されるSVOD。なんとなく知っていたところで、『愛の不時着』や『鬼滅の刃』といった興味をひく配信作品があったということなんだと思います」

 

Netflixが背中を追いかけるのが日本での会員数が500万~800万(正式な数は非公表)といわれるAmazon Prime。こちらは日本に特化したサービス展開で、会員数を伸ばしているようだ。

 

「Amazon Primeは通販サービスも含むので、どのくらいの人がPrime Video(Amazon Prime内の動画配信サービス)を使用しているかは判断がわかれるところ。しかし、映画会社やアニメの制作会社に話を聞くと、収入を見れば1位はAmazon Primeで2位がNetflixということになるそうです。

 

Netflixは日本だけでなく、全世界で受けるコンテンツを強化している。しかしAmazon Primeは『ドキュメンタル』などのように、日本に向けたオリジナルコンテンツを作っている。それは日本で成功するためには日本のバラエティなどが重要だから、という判断なんです。さらにいえば、映画やアニメの調達も基本的には日本に合わせてやっています。日本に最初から特化しているので、日本で伸びるのは当たり前なんですね」

 

NetflixとAmazon Primeといった当たり前になってきた日本。そんななか起きた劇場公開作品の早期“サブスク解禁”には、コロナ禍による“弊害”が影響していると西田氏はいう。

 

「2014年ごろからアップルストアや様々な場所でDVD、Blu-ray販売に先駆けて映像配信されるようになってきています。それは、端的にそうしないと魅力を感じてくれないから。ただ、最近ではSVODでの配信に比重が傾いていて、劇場公開がサブになっているという状態だと思います。

 

映画の興行という観点からみると、重要なのは映画館が開いているかだけでなく、マーベル作品や『ワイルドスピード』シリーズといった明らかに興行収入が見込める大作があるかどうか。そうした作品は、かなり前から公開時期が決まっていて、そこに合わせる形でサテライト的に細かい作品の公開時期も決められているんです。

 

ただ、コロナ禍によって大作の公開時期がどんどん後ろ倒しに。そうなると、細かい作品は、公開時期を決められなくなります。本当に劇場公開できるのか、公開してもお客さんが入るのかという状態が続いたわけです。また、公開を遅らせて来年にしても、後ろ倒しとなった大作がばんばん控えている。そうすると、細かい作品は割を食うことになります。仮に細かい作品が11月に劇場公開できるとなっても、公開期間や前後の大作の公開状況も見えず、儲かるかどうかもわからない。

 

であるならば、これまでみたいに劇場公開から半年空けるといったことはせず、公開されて記憶が新しいうちに配信して見てもらえるようにせざるを得ないわけです。従来のプロモーションができない状態となったことで、SVODでの解禁が早くなったのだと思います」

 

映画・映像エンタテイメント関連のマーケティングを行うGEM Partnersによると、昨年SVODの利用率がDVDやBlu-rayのレンタル、販売を上回るという調査結果が。この流れは今後も加速していくと、西田氏は分析する。

 

「日本の場合、収益面ではまだDVDやBlu-rayのフィジカルがSVODより多いですが、勢いはSVODのほうが強い。作品によってはすでに抜いている。日本はレンタルビデオ店がそれなりにありますが、アニメなんかはレンタル店にほとんど置いてないわけです。すると、フィジカルの購入もしくはSVODかということになりますが、見逃し配信やまとめ見の比率もあがっているので、SVODが配信を凌駕し始めているといえるでしょう。最近では劇場公開されなかった映画が、単品で配信販売されることも増えてきました。映画やドラマはSVOD中心になっていくと思います」

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