過激な残酷描写とアクション&ギャグをふんだんに取り入れた作品を撮り続ける井口昇監督。作品の性質もあって、女性誌の取材を受けることはほとんどないとか。しかし、最新作『ライヴ』は、女性にも楽しめる作品という自負があった。

いぐち・のぼる★

69年6月28日生まれ。東京都出身。これまでの監督作品に『片腕マシンガール』(07年)、『ロボゲイシャ』(09年)、『電人ザボー
ガー』(11年)、『デッド寿司』(13年)、『ヌイグルマーZ』(14年)などがある。国内・海外でカルト的な人気を博している。劇団『大人計画』に所
属し、俳優としても活動している。

映画『ライヴ』

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監督/井口昇
ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開中
(オフィシャルサイト)http://www.live-movie.jp/
©2014「ライヴ」製作委員会

――完成作をご覧になっての感想をお聞かせください。
「僕の作品は、アクションやホラー、スプラッターがあったりで、なかなか女性の方には観てもらえないタイプの作品が多かったのですが、今回は、山田悠介さんの作品が原作ということもあり、今まで僕が積み上げてきたバイオレンス描写がありながらも、一般の方に見やすい作風にしたいと思ったので、そこはうまくいったのではないかなと思います」

――爽やかな青春モノという一面もありますよね。
「僕の作品は、女性が主人公の作品が多かったんですけれども、今回は山田裕貴さんのような、フレッシュで若々しいイケメンの方を主人公にすることができたので〝僕もこういうのが撮れるんだな″という喜びや自信につながりました。僕らしくないと言われることもあるのですが、商業作品を撮って10年目になるので、青春モノを作りたいという気持ちもあり、作り手側としては『実はこういう青春映画モノが作れるんだぞ』ということを、今回の作品で証明できたとちょっと思っています」

――青春モノを作りたいという気持ちは、監督自身の願いであったんですね!?
「そうですね。もともと自分は映画ファンで、恋愛映画から芸術映画までいろいろと観るほうなので、やはり、ひとつのイメージでくくられていきたくないと思いますし、自分自身がいろんなジャンルのものに挑戦したいと思っているので、今回の作品が、広がりのきっかけになればいいなと思いました。僕も、青春モノがちゃんと撮れますよということ証明して、今後、そういうものにもつながっていけばいいかなと」

――もしかしたら、今後、爽やかな恋愛モノとかにも挑戦をされる可能性もあるかもしれないということでしょうか!?
「実は今まで、衛星放送の単発ドラマなどで青春モノのドラマを撮っているのですが、そういうものがあまり知られていなくて。映画のほうでも、必ず、恋愛モノの企画を出すんですよ。でも『またまたぁ~、監督がそういうのを撮れるわけがないでしょ』という感じで、必ずボツになったりして、アクションモノに決まったりするんですけど(笑)。僕自身は、リアルだけどファンタジックな恋愛モノをずっと撮りたいと思っていますし、あと、動物が好きなので、そういうものを撮りたいと思っているんですね。暇な時は、妻と植物園や動物園によく行っているほうなので」

――もしかしたら今後、かなり昔の作品を出して恐縮ですが『子猫物語』(86年)のような作品も作られるかもしれないですね。
「いいですね。本当にああいうのを撮りたいですね。血とかは飛び散らず、命の尊さだけを描きたいです(笑)」

――とはいえ、監督といったらやはりホラーやスプラッターを期待してしまうのですが。
「僕は、遊園地が好きで、エンターテインメントで人を楽しませたりびっくりさせたいといつも思っていて。血が出たり、ホラーを撮っているのは、エンターテインメントの手段でしかないというか。逆に、リアルな殺人ドキュメントや事故写真が苦手なんです。でも、僕がそういうものを好きだと思って、勧めてくれたり見せてくれたりする人がいるんですけど、僕自身はあまりにリアルすぎるものは引いちゃうほう。仲間の監督とも同じような意見で、けして殺人のシーンを撮りたいわけではないんですね」

――監督が10代や20代の頃は、どのような作品をご覧になっていたのでしょうか。
「映画少年だったので、いろんなジャンルを観ていました。多感な時期が、ちょうど、レンタルビデオブームで、外国のホラー映画やスプラッター映画が日本で観られるようになったので、すごく影響を受けました。ただ、20歳をすぎると、段々ませてきて、スプラッターとかよりも、ゴダールやジム・ジャームッシュを観ていましたね(笑)。当時はミニシアターブームだったので、やはり、『ミニシアター系の映画を観ないとモテない』ということで、フランス映画をやたらと観ました。作る作品は血がいっぱい出るやつですけど、自分が観る作品としては、オーソドックスな青春映画が好きなんです。『小さな恋のメロディ』や『いちご白書』とかが大好きなので。本当はそういうものが好きなんだけど、そういうものを撮ったら『井口らしくないな』バカにされそうだなって(笑)」

――今回の『ライヴ』にも、監督作品だからこそ味わえるシーンがたくさんありました。いわゆる残酷シーンです。
「僕は単にグロテスクなものを撮りたいのではなくて、やはり、どこかにファンタジーの要素がないとだめだと思っています。ファンタジーとグロテスクなものと薄皮一枚のところを映像として撮るのが好きで。それと、実は、外国の作品ではそういったシーンが定番なんですね。外国のホラーファンの人たちは残酷描写を見て笑うんです。ギャグとして捉える。外国ではああいうのはサービスカットなんですね。作り物という前提で見ていて、一種のエンターテインメントとして割り切っている。残酷描写にバカバカしさを見出している。日本とは違いますよね。日本ではそういったものが苦手な人も多いですから」

――現実世界で起きることが、想像を超えることがありますよね。
「そうですね。僕も娯楽が大前提であってほしいなと思っているんですけど、現実の事件のほうが映画よりも数奇なことが多くて、あまりにもあり得ないようなことが起きてしまっている。その動機や理由も、ナンセンスで、自己中心的なものが多いじゃないですか。そういうものが現実に起こってしまったときに、作り手としては、この現象に対して、どう感じればいいのだろうと思うんです。だからいつも思うのは、映画はエンターテインメントだけども、現実は人を傷つけたり殺したりしてはいけないと思っていて、ホラーやデスゲームも、加害者というより、被害者の視点を大切して、命の大切さや親子の絆の普遍的なものを伝えていきたいなと思いますね」

――ところで今回の『ライヴ』は、皆さんよく走っていましたね(笑)。
「キャストの皆さんが頑張ってくれました。『テストでも全速力で走ってください』と言ったので、『カット』と言うたびに、『あーっ』という声や『足つったー。体力の限界だ』という声が聴こえてきて、サディスティックな気分になりました。運動部の合宿のような感じで、そのうちみんなが筋肉痛になり、現場がエアーサロンパスくさくて(笑)」

――では、最後に作品のPRを監督からお願いします。
「わがままに育てられた少年がお母さんを助けるために、走るという、『現代版・走れメロス』という意見もありました。この作品を観たときに『もし家族が誘拐されたら自分はどうするんだろう』ということ、自分のお子さんは助けに来てくれるだろうかというのを含め、いろんなことを感じ取ってほしいなと思います。それと、マラソンのユニフォーム、短パン姿で皆さんが出てくるので、肉体美を楽しんでいただけたらなと思います。女性が観て、おおっと思ってもらえるよう、男性の着替えシーンも多めに撮っています(笑)」

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