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又吉直樹が芸人初の受賞で大いに沸いた’15年上半期の芥川賞。同時受賞した若き作家は聖飢魔IIのデーモン閣下風メークで受賞の報告を待っていた一風変わり者。ここでは受賞作『スクラップ・アンド・ビルド』に込めた思いを受賞者・羽田圭介さん(30)自らに解説してもらった。

 

〈1〉小説の原風景は、祖母のお見舞いで見た光景

12年前の小説家デビュー前後に、山形にいた父方の祖母のお見舞いに行く機会が何度かあった羽田さん。

 

「当時は、介護施設代わりに病院に長期入院することがまだ認められていたため、祖母のお見舞いに行ったら、酸素吸入器などをつけた高齢者たちがずらーっとベッドを並べて寝ていました。作中にも出てきますが、『もうころしてくれー!』と叫んでいる老人も実際に何人かいた。それが原風景として強烈に心に刻み付けられていたんです」

 

〈2〉日本人全員にとって切実なテーマである“介護”

介護は人によってケースがバラバラで共有できない難しさがあると羽田さん。

 

「何もできない人間に手を差し伸べ世話をするという意味では、育児と介護は一見同じ。子どもはいつか手が離れるという未来があるけれど、高齢者の場合は認知症になった人に対して、この先何年介護をしなきゃいけないのか、終わりは見えない。この見通しの差によって、かかる手間が同じでも携わる人の受け取り方が180度変わります。本当に大変なことですよ」

 

〈3〉若者も自分のこととして考えるべき老人問題

作中の登場人物は孫と祖父だが、男同士でなければいけない明確な理由が。

 

「孫も時間がたったら祖父のように老人になる、将来の自分の姿をつきつけられているという要素が大事だったんです。誰もが加齢から逃れられない。高齢者への文句は、ある意味天に向かって唾を吐くような行為です。高齢者を冷遇する社会に賛同すれば、数10年後には自分が冷遇されます。だからこそ自分のこととして高齢者問題を考えないといけないですよね」