第3回 ファンへの告白
それは未来への希望
そうして迎えた戸田の初日公演。都は松葉杖をつき、なにかあったときのことを考え医師を伴って会場入りした。ステージ上の都はいつもと違い、椅子に座ってキーボードを弾いている。そんな都の姿にファンの視線が集中する。「術後だから立って演奏したり激しく動くことはできなくて。俺、ファンに嘘ついてステージ上がってるみたいやなぁって 。でも検査の結果はまだ出てないから、はっきり病気のことはいえへんし」
そんなもどかしさがありながらも、ステージから見たファンの笑顔は最高だった。
「本当にありがとうって。すっごいエネルギーもらいましたから。出てよかった」
初日公演を終えた数日後、生検の結果が知らされた。
「ろ胞性悪性リンパ腫で、ステージ3~4だと。その後、骨髄の検査CT、PETをやって、2月27、
28日の愛知のライヴが終わったあとにステージ4だと分かりました」
ろ胞性だと分かって、都は「ラッキー」だとまず思った。
「ろ胞性は
年単位でゆっくりと進行していくので、先生に相談したらいますぐに入院しようがツアーが終わってからだろうがあまり影響はないといわれたので“よし、これ
でツアーは最後までまわれると」
都はその気持ちをSOPHIAのメンバー、家族に伝えた。もちろん妻は反対する。
「しかし、病名が分かってからこの病気のことを毎日調べたり、主治医の先生方とお話するなかで、体調がこの先変化するようなことがあった
ら即入院ということを約束して、ツアーを続けることを許しました。ライヴや音楽の仕事をすることで本人の免疫力を上げ、たくさんご飯も食べて、十分に“体力”と“心”のエネルギーを貯めてから治療に入ることを決めたんです」
こうして、都のツアー続行が決定。病名を発表した後、ライヴ会場にはファンからたくさんの千羽鶴や寄せ書きや手紙が届くようになった。
「僕はいってよかったなと思ってます。SOPHIAを知らない人からも応援メッセージや“私も同じ病気で闘ってます”というようなメールを頂いたりして。逆に励まさ
れてありがたいなと思いました」
久宝のほうにもたくさんのメッセージが届いた。
「ファンのみなさん、友だちから多くの励ましの言葉をい
ただいて。みなさんの力強い気持ちを一緒に抱えて、とにかく妻として、母として気丈に明るく前向きにいきたいと思いました。未来は明るいと信じて」
そして4月10日、中野サンプラザで行なわれる追加公演で
SOPHIAのツアーは終了する。その後、都はRCHOP療法という抗がん剤治療を受けることになる。
「まだ未知の闘いなんですが、このガンは
100%再発するので、 主治医とはすでに再発の治療の話をしています。これだけおおっぴらに
言ったからには絶対またSOPHIAのステージで復活します。僕、高校のときに“将来は絶対ミュージシャンになる”っていろんな人に言いまくってたんです。今回もいいまくって自分にいい意味でのプレッシャーをかけた。ミュージシャンになることも、ステージ復活することも諦めたら可能性は0%。でも、諦めなければ0,001%でも可能性はある。それで僕は実際、ミュージシャンになりましたからね。今回も絶対諦めません。ステージに絶対に戻る。この約束は、
かならず守ります」
第1回「衝撃の告白までの奇跡」はこちら
第2回「妻の涙…それは家族の絆」はこちら
Rayflower『裏切りのない
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都啓一を中心に結成されたロックバンド。5月26日『裏切りのない世界まで』/cw『蒼い光』(TVアニメ『裏切りは僕の名前を知っている』
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Rayflower オフィシャルサイト http://www.rayflower.jp/