「僕はドラマの中で、福子に缶詰を渡すシーンが多いんですよ。街中を歩いていると、すっかり子どもたちにも『缶詰や~』と話しかけられるほどに、“缶詰キャラ”が定着したようです」

 

こう語るのは、NHK連続テレビ小説『まんぷく』でヒロイン・福子(安藤サクラ)の同僚・野呂幸吉を演じている藤山扇治郎(31)。彼は、“昭和の喜劇王”と呼ばれた喜劇俳優・藤山寛美さんを祖父に持ち、伯母はかつて朝ドラのヒロインも務めた女優・藤山直美さん(59)という役者の家系に生まれた。

 

“初舞台”は小学1年生のとき。歌舞伎役者の18代目中村勘三郎さんとの共演だった。デビューから2年後、直美さんの舞台にも出演するようになる。

 

高校、大学は学業に専念。しかし、就職活動の時期に「やっぱり芝居がしたい」と思い立った扇治郎は、東京の劇団青年座研究所へ入所した。上京してどっぷりハマっていたのは、寛美さんが出演している松竹新喜劇のDVD。憧れるままに松竹新喜劇へ入団。

 

そして、松竹時代の彼に目をつけていたと話すNHKの真鍋斎さん(『まんぷく』の制作統括)によって、朝ドラに“初抜擢”された。

 

福子と同じホテルで働く料理人の野呂は、彼女に恋心を抱いていた。アプローチのつもりで、厨房の缶詰を3年間渡し続けたが、福子の夫となる立花萬平(長谷川博己)の登場により、失恋……。

 

しかし、福子に缶詰を渡すシーンが放送されると、ネットのトレンドワードに「野呂缶」と上がるほど、野呂は視聴者の心をつかんだ。

 

「情報番組『あさイチ』で博多大吉さんも指摘していましたが、野呂は缶詰を厨房から勝手に持ち出していると思うんです。だから、放送当初は、『“缶詰泥棒”みたいに言われたらどうしよう』と心配していました(笑)」(扇治郎)

 

伯母の直美さんは、’17年2月に初期の乳がんが見つかり治療に専念していたが、今年10月8日に幕を開けた『おもろい女』(~12月2日、全国ツアー公演)で舞台復帰した。公演中の忙しいさなか、甥っ子のためならと、“愛情いっぱい”の応援メッセージを本誌に寄せてくれた。

 

「扇治郎は器用に物事をこなすほうだと思いますが、共演のみなさまにご迷惑にならないように、しっかりと、お役をつとめてほしいと思っております。私が闘病中に扇治郎と会ったのは、京都で1度しゃぶしゃぶを食べたきりですね。もちろん、私がしっかり支払いました(笑)」(直美さん)

 

そして、これから俳優人生を歩んでいく扇治郎に対して、ハッパをかける。

 

「古典的な歌舞伎の演出には、長い期間にわたり幾多の俳優によって洗練された『型』と呼ぶものがあります。しかし喜劇は歌舞伎とは違い、『型』を伝承するのではなく、『役者一代かぎり』でやっていかなければならない。でも、喜劇を本当にやりたいのなら、(若いうちに)目が充血するぐらいしっかりと歌舞伎を見なさい!!」(直美さん)

 

ドラマでは、野呂は同僚の保科恵(橋本マナミ)に2度目の失恋。さらに、太平洋戦争に出兵したため、行方がわからない状況だ。しかし、制作統括の真鍋さんも、「野呂の出番は終わりではないかも」と再登場に含みを持たせる。

 

「当初は、少しホッとできるようなキャラクターでいればいいかな、と思っていたのですが、僕らの予想以上に反響がありました。だから野呂ファンの皆さんが『生きていてください』と願っていてもらえれば、きっと通じると思います。野呂がどんな男になってもどってくるのか、楽しみにしておいてください」

 

次の「野呂缶」を渡す相手は果たして……?