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「今思えば、早く始めてよかったと思います。“終活”は早いのがおすすめです(笑)。片付けには体力も必要だし、どちらかの体が弱ってから終活を始めようとなると、ただ暗いだけの作業になってしまいます。でも、まだまだ元気で、やりたいことができる状態のときに始めることで、これから快適に生きていくための準備として終活に臨むことができるんです」

 

そう話すのは、女優の池波志乃さん(64)。夫で、13歳年上の中尾彬さん(77)とは結婚42年。おしどり夫婦としておなじみの2人だが、最近は人生の終わりに向けた活動、いわゆる“終活”をやっていることでも注目されている。一昨年には夫婦で『終活夫婦』(講談社)という著書も出した。そんな志乃さんに、日々を豊かにする“終活”の極意を聞いた。

 

夫婦で物を処分するとなると、意見が食い違うことも多いはず。その場合はどうすればいいのか。

 

「けっして相手の持ち物のことは言っちゃダメ。捨てるかどうかを決めるのは自分のものだけです。収集癖は男性のほうがあって、女性には絶対にいらないけど旦那にとっては大切なものってあるんです。『自分のものは自分で考える』とすればもめることもありません」

 

捨てるかどうか迷った場合は?

 

「『ん〜どうしよう?』というモノが出てきたら、とりあえず保留にして、リビングなど目に見える場所に置いておきます。けっして、クローゼットの奥などにしまわないこと。そうすると、またしばらく、そのままになります。置いておくとチラッと目に入るじゃないですか。そうするうちに『これって2〜3年使ってないし、いらないんじゃない?』って思うようになる。それでも、どちらかが『でもさ〜』ってなったらまだ置いておく。そうすると1〜2週間で邪魔になってくるの(笑)。最後は、最初に残したいと言ったほうが決断します。そうするとけんかにならないんですよ」

 

中尾さんのトレードマークである通称“ねじねじ”も処分の対象に……。400本あったのを200本処分した。

 

「いただきものも多かったんですよ。“ねじねじ用に”とくださったストールが、いざねじると短くなって長さが足りないとか。後は厚手で生地がよすぎて、しめ縄みたいに太くなっちゃったり(笑)。自分で買ったものでも『絶対に使わないよね』っていうのもある。欲しい人にあげたりしていったん整理しました。そしたらスペースができたので中尾さんがまたニコニコして買ってきて(笑)。でも、捨てることが目的ではないからいいんです。終活は『楽しみをなくさない』が鉄則ですから」

 

人に物をあげるときも気をつけなければいけない点がある。

 

「もらって困るものってあるじゃないですか。立場的に『いらない』って言えない人にそれがいく可能性が多いんですよ。だから本当に欲しいのか、ちゃんと聞いて断れる余地を相手に与える。『いらないんだったらまだほかに心当たりはあるから、断ってもらってかまわないよ』という形に持っていくことが大事です」

 

意外なもので喜んでもらえたのは、千葉のアトリエにあった巨大な置き型の暖炉。

 

「秋田の方でスペイン料理店をやっている友達がいて、『いる』っていうから『じゃあ、暖炉を取りに来てくれたらあげる』って言ったの。そしたら本当にトラックを借りて何人かで持って帰りました。今もお店にありますから行ってみてください(笑)」

 

“終活”のおかげで、よく考えて物を買うようになるという。

 

「人に『そんなの捨ててもったいない』っていわれるんですけど、自分がいちばんもったいないと思っているんですよ。それを買うために頑張って働いたわけですから。やっぱり欲しくて買ったはずなのに、どこかで衝動買いをしているんですね。だから『ちゃんと考えて吟味して買おう』というふうに考えるようになりました」

 

美術品や骨とう品の収集が好きな中尾さんにも、「2晩寝て、それでも欲しかったら買う」というルールができた。最初のうちは失敗もあったそう。

 

「1つ捨てはじめると結構平気になって『あれもこれもいらないよね』って捨てちゃうんですよね。それで『あ〜さっぱりした』と思ったんですけど……。あるとき、パウンドケーキを作ろうと思って粉を混ぜて、『さぁ次……、あれ? 生地を入れる型がない。あ! 捨てちゃったんだ!』って気づいて。それで慌てて買いました(笑)。だから捨てるときに『私はもう二度と本当にパウンドケーキを作らない?』みたいに、よく考えるようになりました」

 

多くのものを手放したが、迷わず残したものもある。

 

「家を整理していると、父(金原亭馬生)が、私の成人式のときに巻紙に書いてくれた“贈る言葉”が出てきました。これは捨てられませんよね」

 

〈何か面白くないことがあったら人のいないところで空に向かってどなりなさい お父さんのバカーと〉。落語家らしいユーモアと父の優しさが詰まった優しいメッセージ。中尾さんが額装の手配をしてくれて、大切に取ってある。

 

「父の落語関係の本なども、資料なので残してあります。妹の子ども(金原亭小駒)が噺家を継いだので、その子に渡りますから。行き先がわかるものは大丈夫なんです」

 

“終活”を始めて、身軽になった夫婦はむしろ活動的になった。

 

「最近は月に1度旅行に行っています。片付けを始めると、いろいろな思い出がよみがえってくるんです。この土産物を買った旅館にもう一度行きたいな、と……。いまはプライベートの予定を入れて、それからお仕事を入れているんですよ」

 

「女性自身」2020年3月17日号 掲載

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