(写真・神奈川新聞社)
2020年東京五輪で首都圏のホテル不足が課題となる中、川崎市は川崎港に係留した大型客船を宿泊施設として長期利用する「ホテルシップ」の誘致に乗り出す。船をホテルとして使い、宿泊需要に対応する。工業港として発展した川崎港にとって大型客船を呼び込む契機として捉え、新たな港の魅力創出につなげたい考えだ。
川崎港は専用の旅客用ターミナルがないものの、羽田空港や都心に近く立地優位性は高い。市は地の利を生かして、クルーズ船社や旅行代理店に働き掛ける。市では川崎区東扇島の在来バース(水深12メートル)を客船の停泊地に想定。岸壁を使う港運業者と調整した上で、五輪期間中の約1カ月間係留させる構想だ。水深としては乗客乗員3千人以上の船にも対応でき、接岸時の衝撃を和らげる防舷材の改修は船の大きさに応じて検討していく。
川崎港には外国人客に対応した税関・入国管理・検疫(CIQ)業務を行う専用設備はないため、羽田空港から訪れる外国人や日本人客の利用を想定。利用者は船内に泊まり五輪観戦や観光に出向くことになる。
市は、東扇島からのバス路線拡充や、市民交流施設「川崎マリエン」(東扇島)周辺の催しも用意して誘致に結び付けたい考えで、「ホテルシップ誘致を通じ需要が見込めれば、五輪後のクルーズ船誘致も考えていきたい」としている。
一方、国内屈指の客船寄港地の横浜市も19年のラグビーワールドカップ、20年東京五輪に向けてホテルシップ誘致を強化する。訪日観光客の受け入れ態勢を整えることで、市内観光や買い物などの新たな需要を掘り起こしたい考えだ。
過去の大型イベントでも同市中区の大さん橋に客船が係留された。1964年の東京五輪期間中には5隻が同時着岸。期間中に計約3,500人が宿泊し、約6万人が船の見物に訪れた。89年の横浜博覧会では英国船籍のクイーン・エリザベス2(QE2/7万トン)が3カ月間ホテルシップとして利用された。
政府も五輪開催時のクルーズ船のホテル活用を促すため、関係省庁会議の下に分科会を設置、6月29日に初会合を開く。旅行代理店やクルーズ船社のほか、オブザーバーで県内から横浜、川崎両市が参加する。